小児科医・吉岡春菜の季節コラム Vol.08
春のコラム
「素直な子育て」
先日、松下幸之助氏が昭和36年に造られたお庭「真々庵」にお伺いする機会に恵まれました。京都、南禅寺の西側に位置し、東山を借景とするとても素敵なお庭です。
お庭を拝見して一番驚いたことは、一本一本の樹木はどれも普通の木々で特別なものではありませんでした。しかし庭として全体を見た時、一本一本の樹木の長所が活かされ、東山が一番美しく見えるように配置され、すべての樹木が素直に、そして他の樹木のことを考えて成長しているような気配すら感じました。これは世界一のお庭なのではないかと時間を忘れて見入ってしまいました。
そして同時に子育てもこうありたいなと思いました。
私自身、
「この子にはもっと〇〇ができるようになってほしい。」
「ここがもっとこうなればいいのにな。」
など、日々の中で子どもの足りない能力や改善点についつい着目してしまいます。
真々庵の美しさを通して、樹木と子どもの成長を重ね、素直にその成長を応援してもらえた子どもたちはきっと一人の人間として幸せな人生を送るのだろう、人々と幸せを共有することができる人生を送るのだろうと感じました。
春という節目の季節、新しい環境を迎える子どもたちも多いと思います。
彼らを見守る親世代である私たちも新しい環境を迎えながら、彼らの成長を心から素直に応援できればと思います。