江戸の花火と隅田川

日本の夏の風物詩といえば花火です。７月に入ると、全国各地で花火大会が開催されますが、花火が日本人に身近なものとなったのは江戸時代に入ってからでした。江戸の繁栄を象徴するかのように、夏になると、隅田川では花火が連日打ち上げられていました。

今回は、江戸そして東京の花火の名所である隅田川界隈を訪ねましょう。

まずは、花火の歴史を振り返ってみます。

日本人が花火を作るのに必要な火薬の整合を学んだのは、戦国時代に入り鉄砲が伝来してからのことです。江戸時代に入って戦争のない時代になると、軍事目的ではなく観賞用としての花火が登場しました。

４代将軍徳川家綱の治世にあたる寛文10年（1670年）に、火事になることを恐れた幕府は江戸の町に対して町内での打ち上げ花火を禁止しました。ですが、隅田川沿いや江戸湾岸での打ち上げ花火は禁じませんでした。

隅田川では、江戸時代前期から花火が打ち上げられていましたが、盛大に行われるようになったのは享保18年（1733年）からです。
それは、その前年に西日本を襲った飢饉が関係しています。飢饉と同時に疫病も流行したため、餓死だけでなく、病で命を落とした者も多かったと伝えられています。幕府は、その霊を慰めるため、悪疫退散を祈る水神祭りを隅田川沿いの両国で執り行いました。それは両国の川開きの日にあたる５月28日のことでした。このとき、悪霊を払うとして花火が盛大に打ち上げられたことが、両国の花火の始まりとされており、今も続く隅田川花火大会への歩みの始まりです。 日本の夏の風物詩といえば花火です。７月に入ると、全国各地で花火大会が開催されますが、花火が日本人に身近なものとなったのは江戸時代に入ってからでした。江戸の繁栄を象徴するかのように、夏になると、隅田川では花火が連日打ち上げられていました。

今回は、江戸そして東京の花火の名所である隅田川界隈を訪ねましょう。

まずは、花火の歴史を振り返ってみます。

日本人が花火を作るのに必要な火薬の整合を学んだのは、戦国時代に入り鉄砲が伝来してからのことです。江戸時代に入って戦争のない時代になると、軍事目的ではなく観賞用としての花火が登場しました。

４代将軍徳川家綱の治世にあたる寛文10年（1670年）に、火事になることを恐れた幕府は江戸の町に対して町内での打ち上げ花火を禁止しました。ですが、隅田川沿いや江戸湾岸での打ち上げ花火は禁じませんでした。

隅田川では、江戸時代前期から花火が打ち上げられていましたが、盛大に行われるようになったのは享保18年（1733年）からです。
それは、その前年に西日本を襲った飢饉が関係しています。飢饉と同時に疫病も流行したため、餓死だけでなく、病で命を落とした者も多かったと伝えられています。幕府は、その霊を慰めるため、悪疫退散を祈る水神祭りを隅田川沿いの両国で執り行いました。それは両国の川開きの日にあたる５月28日のことでした。このとき、悪霊を払うとして花火が盛大に打ち上げられたことが、両国の花火の始まりとされており、今も続く隅田川花火大会への歩みの始まりです。

そんな由緒を受けて、両国には花火資料館が置かれています。花火の仕組みやその現物が展示され、隅田川花火大会の歴史も学べるようになっています。７月と８月は毎日開館しています。 そんな由緒を受けて、両国には花火資料館が置かれています。花火の仕組みやその現物が展示され、隅田川花火大会の歴史も学べるようになっています。７月と８月は毎日開館しています。

柳橋からの屋形船

両国の花火を描いた浮世絵では、隅田川に架かる両国橋に花火見物の人々や納涼船が群集している様子が描かれているのが定番です。江戸の夏の賑わいを今に伝える光景です。

こうした納涼船が隅田川に繰り出す時期は、両国が川開きとなる５月28日から、川仕舞いとなる８月28日までの３カ月間です。この時期には両国橋の上流に花火師の玉屋、下流には同じく鍵屋が陣取り、隅田川沿いに店を構える料亭や納涼船の遊客からの注文に応じて花火を打ち上げるのが恒例となっていました。 両国の花火を描いた浮世絵では、隅田川に架かる両国橋に花火見物の人々や納涼船が群集している様子が描かれているのが定番です。江戸の夏の賑わいを今に伝える光景です。

こうした納涼船が隅田川に繰り出す時期は、両国が川開きとなる５月28日から、川仕舞いとなる８月28日までの３カ月間です。この時期には両国橋の上流に花火師の玉屋、下流には同じく鍵屋が陣取り、隅田川沿いに店を構える料亭や納涼船の遊客からの注文に応じて花火を打ち上げるのが恒例となっていました。

両国橋の近くには、江戸の代表的な高級料亭街だった柳橋がありました。現在は東京の高級料亭街というと、新橋や赤坂が思い浮かぶかもしれませんが、江戸の頃は柳橋だったのです。

柳橋は神田川が隅田川に合流する地点に架かっている橋で、現在の住居表示では台東区柳橋です。この神田川沿いの柳橋界隈は料亭をはじめとする歓楽街となっており、花火見物にも格好の場所でした。

隅田川にも近いという立地条件もあり、柳橋には船宿も軒を並べていました。遊客を納涼船つまり屋形船で隅田川へと案内し、花火を見物させていたのです。そうした屋形船には、「うろうろ船」と呼ばれた小型船が近づいてきます。周りをうろうろしながら、積み込んだ寿司・天ぷら・お酒などの飲食物を屋形船の遊客に売ったことがその名の由来でした。

今も柳橋には屋形船が繋留され、夏には隅田川へと繰り出していきます。 両国橋の近くには、江戸の代表的な高級料亭街だった柳橋がありました。現在は東京の高級料亭街というと、新橋や赤坂が思い浮かぶかもしれませんが、江戸の頃は柳橋だったのです。

柳橋は神田川が隅田川に合流する地点に架かっている橋で、現在の住居表示では台東区柳橋です。この神田川沿いの柳橋界隈は料亭をはじめとする歓楽街となっており、花火見物にも格好の場所でした。

隅田川にも近いという立地条件もあり、柳橋には船宿も軒を並べていました。遊客を納涼船つまり屋形船で隅田川へと案内し、花火を見物させていたのです。そうした屋形船には、「うろうろ船」と呼ばれた小型船が近づいてきます。周りをうろうろしながら、積み込んだ寿司・天ぷら・お酒などの飲食物を屋形船の遊客に売ったことがその名の由来でした。

今も柳橋には屋形船が繋留され、夏には隅田川へと繰り出していきます。

両国広小路の賑わい

夏の両国の賑わいは、屋形船という名の納涼船が繰り出した水上だけではありません。陸上も賑わいましたが、それは意外な場所でした。両国橋のたもとが賑わいの中心となっていたのです。 夏の両国の賑わいは、屋形船という名の納涼船が繰り出した水上だけではありません。陸上も賑わいましたが、それは意外な場所でした。両国橋のたもとが賑わいの中心となっていたのです。

現在の両国橋は、江戸のころに架けられていた場所よりも50mほど上流にあたります。創架時の橋の長さは94間（約171m）、幅は４間（約7.3m）でした。橋の東西のたもとには広小路という名の空き地が設けられ、近隣で火事が起きた際に火が燃え移らないようにする工夫が施されていました。

両国橋に限らず、橋のたもとに広小路が設けられるのは定番でした。架橋には莫大な費用を要したため、幕府としては橋が焼失して再建を余儀なくされる事態を何としても避けたかったのです。
当時、隅田川にはあまり橋が架かっていなかったこともあり、両国橋を通行する人はたいへん多かったようです。１日に２万人以上が往来したといいます。

となれば、それに目を付けた商売が生まれるのは世の習いです。日ならずして、両国橋の東西のたもとにある広小路には、水茶屋などの飲食店が立ち並んでいったのです。

ただし、広小路は空き地である以上、常設店舗は許されず、床店や露店という形で出店されていました。床店とは移動できる小型店舗のことで、屋台のようなものです。 現在の両国橋は、江戸のころに架けられていた場所よりも50mほど上流にあたります。創架時の橋の長さは94間（約171m）、幅は４間（約7.3m）でした。橋の東西のたもとには広小路という名の空き地が設けられ、近隣で火事が起きた際に火が燃え移らないようにする工夫が施されていました。

両国橋に限らず、橋のたもとに広小路が設けられるのは定番でした。架橋には莫大な費用を要したため、幕府としては橋が焼失して再建を余儀なくされる事態を何としても避けたかったのです。
当時、隅田川にはあまり橋が架かっていなかったこともあり、両国橋を通行する人はたいへん多かったようです。１日に２万人以上が往来したといいます。

となれば、それに目を付けた商売が生まれるのは世の習いです。日ならずして、両国橋の東西のたもとにある広小路には、水茶屋などの飲食店が立ち並んでいったのです。

ただし、広小路は空き地である以上、常設店舗は許されず、床店や露店という形で出店されていました。床店とは移動できる小型店舗のことで、屋台のようなものです。

こうして、両国橋周辺は広小路を中心に盛り場として賑わうようになります。花火見物にも格好の場所でもありました。その賑わいの様子は、両国駅近くに立つ江戸東京博物館の常設展示模型で復元されています。 こうして、両国橋周辺は広小路を中心に盛り場として賑わうようになります。花火見物にも格好の場所でもありました。その賑わいの様子は、両国駅近くに立つ江戸東京博物館の常設展示模型で復元されています。