店内のテーブルは大きなダイニングのみ

地元の人々が集うカフェって、いいですよね。味がよくて、お店の人の対応がいいという証だと思います。しかもそのカフェがちょっと隠れ家的雰囲気だとしたら、数倍うれしくなりませんか？

ベルリンのプレンツラウアー・ベルク地区にあるカフェレストランThe Hiddenは、まさにそんな場所。hidden（見つけにくい、隠れた）という店名からして、期待がふくらみます。

飲み物だけほしいとき、本を読みたいときに最適の気持ちよさそうなソファ

オーナーのダニエルさんは、もともとは趣味の料理をプライベートにふるまっていたところ評判になり、正式に店を構えて料理の道に進んだ人です。

ですからこのThe Hiddenもプライベート感覚でいっぱい。何しろお店の営業は、毎週月曜と金曜の12時30分から14時30分の2時間に提供されるランチのみ。それ以外は料理レッスンが開かれたり、レンタルスペースとしても使われています。

表通りから1本入った通りにあるThe Hidden

限定された営業時間ですから、お店は知る人ぞ知る存在。常連さんがランチを食べに来ることが多いのですが、一見さんが行っても溶け込める工夫もあります。

常連客で賑わいながらも、一見さんも気軽に行ける雰囲気を作り出すのは難しそうですが、ここではうまくいっています。なぜそれができるのか、実際にランチをいただきながら考えてみました。秘訣がわかれば、知らない人同士を招待するホームパーティーでも参考になりそうですよね。

まずはインテリアの工夫です。店内には大きなテーブルがひとつ。ベルリンのレストランでは、大きなテーブルに知らないお客さん同士が座る形式はあまり一般的ではありませんでした。でもここは、いわばダニエルさんの家のような場所。プライベート的空間を感じられることが、魅力のひとつです。

椅子はデザイン違いを揃えるのが素敵

大きなテーブルには、椅子が10脚並んでいます。椅子同士の間隔は近すぎず離れすぎず、会話にほどよい距離です。

特徴的なのは、テーブルの真中を横切るように配置されたグラスや、キャンドルホルダーなどのオブジェ。真ん中に一列に並べることで、ゆるいパーテーションの役割が生まれますが、並んでいるものの高さが低いため、前の人と会話したいときにも邪魔になりません。

ワイルドなむき出しの壁にクラシックな花柄のプレートを飾るバランスがベルリンらしい

カード類とともにディスプレイされたミニカクタス

さまざまな形と質感の植物をミックスして飾る

ドイツの改まったディナーパーティーでは、テーブルの真中にフラワーデコレーションが施されます。ここではお花の代わりに、お客さんが実際に使うグラスなど、カジュアルで実用的なものが置かれているわけですが、このアイディアは着席型のホームパーティーにも応用できそうです。

リビングに洋酒キャビネットがあるとゴージャスな雰囲気に

ダニエルさんの著書も並ぶ本棚。鏡にメモを書くのもカフェっぽい演出

そしてテーブルの周囲には、本や雑誌が置かれています。一人の時間を楽しみたいお客さんは手にとって読むこともできますし、他の人へ話題を投げかける材料にもなります。

絵や植物などの、心地よいインテリアに不可欠なアイテムを飾ることも忘れません。

お店はイギリスの家具メーカーと提携していることもあり、家具はほどよくモダンなテイストです。そこに塗装を剥がしたむき出しの壁やアンティークのカーペットなどを加えることで、落ち着いた空間に。ベルリンのカフェに行くと、このあたりのバランス感覚がとても勉強になります。

食感の組み合わせがよく、ヘルシーで色合いも美しい、ベジタブルボウルランチ

常連さん同士がおしゃべりをしていたりもしますが、私がいたときは一人で来店したツーリストもいました。

お客さんは好きな椅子に座って、数種類あるその日のランチメニューの中から選ぶ仕組みですが、「今日は何があるの？」という、ちょっとの会話がダニエルさんとほかのお客さんとの距離感を縮めてくれるのです。

レストランのような、自宅のような......そんな居心地のよさを感じました。カフェ気分の自宅インテリアやホームパーティーを考えるときに、ヒントにしてみてください。

今回紹介したカフェ「The Hidden」
http://thehidden-berlin.com/

この記事を書いたのは、久保田由希さん

東京都出身。日本女子大学卒業。出版社勤務の後、フリーライターとなる。ただ単に住んでみたいという気持ちから、2002年にベルリンへ渡りそのまま在住。著書や雑誌への寄稿を通して、ベルリン・ドイツのライフスタイルを中心とした情報を発信している。新刊『きらめくドイツ クリスマスマーケットの旅』（マイナビ出版）。
http://osanpoberlin.blog.fc2.com/