1632年にオランダのデルフトで生まれたフェルメールは、生涯をこの地で過ごす。
歴史画、物語画に取り組んだ初期の作品を経て、次第に室内やそこで過ごす人々の様子を描く風俗画家へと転身。
穏やかに部屋を照らす光、青や黄色を巧みにもちいる美しい色づかい、考え抜かれた構図。
光と静謐な空間を描いた偉大な画家と称えられるフェルメールの作品は、わずか30数点のみが現在確認されている。世界中の人に愛されているオランダを代表する画家である。
本作品は1657年頃に描かれた油彩をジクレーにて復刻したもの。室内の女性を描いたもののうちもっとも初期の作品。
画中にあるライオンの頭部の飾りのついた椅子、東洋風の絨毯、白いワイン入れなどは、以後のフェルメールの作品にしばしば登場する。
テーブルの上の2つのワイングラス(1つは倒れている)は、女が酒に酔って眠り、家庭の主婦としての勤めをおろそかにしていることを暗示している。
テーブルの上の果物の鉢も性的な堕落を示唆するものである。
女の背後の壁に掛けられた絵は暗くてよく見えないが、キューピッドが仮面(虚偽の愛)を踏み付けている様子がわずかに見える。女の背後の開けっぱなしのドアの向こうには隣の部屋が見える。
X線写真によると、絵のこの部分には犬(やはり性的なものを示唆する)と、一人の男が描かれていたが、後に画家によって塗りつぶされたことが明らかになっている。
この作品の印刷技術ジークレー(ジクレー)とは、フランス語で「吹き付けて色を付ける」という意味でリトグラフやシルクスクリーン版画と違い、版を用いずに刷り上げるのが特徴です。
デジタルデータを上質な版画用紙等に高精細で広色域に印刷します。また保存性も高く、今日多くのアート作品に用いられています。