1632年にオランダのデルフトで生まれたフェルメールは、生涯をこの地で過ごす。
歴史画、物語画に取り組んだ初期の作品を経て、次第に室内やそこで過ごす人々の様子を描く風俗画家へと転身。
穏やかに部屋を照らす光、青や黄色を巧みにもちいる美しい色づかい、考え抜かれた構図。
光と静謐な空間を描いた偉大な画家と称えられるフェルメールの作品は、わずか30数点のみが現在確認されている。世界中の人に愛されているオランダを代表する画家である。
本作品は1658〜1660年頃に描かれた油彩をジクレーにて復刻したもの。
フェルメールの2点しか現存しない風景画のうちの1つ(もう1点は『デルフトの眺望』)。
濃厚な色彩で丹念に描かれている。
確証はないが、フェルメールの実家が営む宿屋、「メーヘレン」の裏手にあった旧養老院が描かれていると指摘されることが多い。
家庭の雑用に専念する女性たちや、ベンチの側で遊びに興じる子供たちは(12人前後の子供を持つ父親・フェルメールによって描かれた唯一の子供たちである)、建物を単なる「家」から「家庭」へと変える、都市景観画として描かれた本作の中では、なくてはならない存在である。
この作品の印刷技術ジークレー(ジクレー)とは、フランス語で「吹き付けて色を付ける」という意味でリトグラフやシルクスクリーン版画と違い、版を用いずに刷り上げるのが特徴です。
デジタルデータを上質な版画用紙等に高精細で広色域に印刷します。また保存性も高く、今日多くのアート作品に用いられています。