1632年にオランダのデルフトで生まれたフェルメールは、生涯をこの地で過ごす。
歴史画、物語画に取り組んだ初期の作品を経て、次第に室内やそこで過ごす人々の様子を描く風俗画家へと転身。
穏やかに部屋を照らす光、青や黄色を巧みにもちいる美しい色づかい、考え抜かれた構図。
光と静謐な空間を描いた偉大な画家と称えられるフェルメールの作品は、わずか30数点のみが現在確認されている。世界中の人に愛されているオランダを代表する画家である。
本作品は1669〜70年頃に描かれた油彩をジクレーにて復刻したもの。
『赤い帽子の女』『フルートを持つ女』とともにサイズの小さい作品の1つであり、(板でなく)カンヴァスに描かれた作品の中では最も小さい。
手紙のやりとり、楽器の演奏、飲酒といったテーマから離れ、生産的活動に努める女性を単独で表している点で、他のフェルメール作品とは異なっている。
絵の各所に見える焦点のぼけたような描写(特に女性の手前の赤い糸に顕著に見られる)は、さらなる完璧な遠近表現をめざして、カメラ・オブスクーラというカメラの原型となる装置を用いて作画したことの影響と見なされている。
この作品の印刷技術ジークレー(ジクレー)とは、フランス語で「吹き付けて色を付ける」という意味でリトグラフやシルクスクリーン版画と違い、版を用いずに刷り上げるのが特徴です。
デジタルデータを上質な版画用紙等に高精細で広色域に印刷します。また保存性も高く、今日多くのアート作品に用いられています。