1632年にオランダのデルフトで生まれたフェルメールは、生涯をこの地で過ごす。
歴史画、物語画に取り組んだ初期の作品を経て、次第に室内やそこで過ごす人々の様子を描く風俗画家へと転身。
穏やかに部屋を照らす光、青や黄色を巧みにもちいる美しい色づかい、考え抜かれた構図。
光と静謐な空間を描いた偉大な画家と称えられるフェルメールの作品は、わずか30数点のみが現在確認されている。世界中の人に愛されているオランダを代表する画家である。
本作品は1670〜72に描かれた油彩をジクレーにて復刻したもの。
似た主題の『ヴァージナルの前に座る女』とともに晩年の作品と見なされている。
左方の窓から光の入る室内という設定はおなじみのものだが、この作品では、室内全体が明るく照らされていることと、女性が光に背を向けて立っている点が他の作品と異なっている。
背景の画中画はトランプの「1」のカードを持つキューピッド像で、女性の愛がただ一人の人にのみ向けられるべきものであることを意味している。同じ画中画は『中断された音楽の稽古』にも見られる。
室内の壁の一番下、床との境目の部分には白地に青の模様の入ったデルフト焼きのタイルが貼られている。これは壁のこの部分が掃除の時などに傷むのを防ぐためのものである。
この作品の印刷技術ジークレー(ジクレー)とは、フランス語で「吹き付けて色を付ける」という意味でリトグラフやシルクスクリーン版画と違い、版を用いずに刷り上げるのが特徴です。
デジタルデータを上質な版画用紙等に高精細で広色域に印刷します。また保存性も高く、今日多くのアート作品に用いられています。