
「蔵」という言葉から、皆様はどんな建物を想像しますか?
私たちが日頃よく目にすることがある蔵といえば、農家の広い敷地内にある、物置や穀物の倉庫として使われている古い建物・・・といった感じでしょうか。あるいは、酒蔵のように特定の目的で利用される貯蔵庫のようなものでしょうか。
秋田県南部の横手市増田町には、そうした一般的にイメージされる蔵とは違う「内蔵(うちぐら)」と呼ばれる個性的な蔵が数多く残されています。
内蔵とは家の中、つまり屋内にある蔵です。秋田県の内陸に位置する横手市は日本有数の豪雪地帯。積雪量が数メートルに及ぶことを考えると、蔵を屋内に建てる発想も納得できる気がします。屋内に井戸も掘られていたりするくらいですので、冬の暮らしの厳しさが偲ばれます。
さらに増田町は、古くから養蚕の繭や葉たばこといった物資の集積地として栄えた商家の集まるエリアでした。内蔵の用途は、屋内の倉庫として、冠婚葬祭など特別な行事の時だけに使われる広間として、または床の間まである日常的な居間としてなど、各商家によって様々です。いずれにしても、屋内にあるため、長い間あまり家族以外の人の目に触れることがありませんでした。
内蔵の存在が知られ、増田町が蔵の町として注目され始めたのは、実は比較的最近のことなのです。私自身、10年ほど前に秋田県南部へ出かけた時に増田町を通ったことがあるのですが、古い商家が並ぶ歴史的な町の景観が記憶に残ったものの、「蔵の町」という認識はありませんでした。そもそも外からでは内蔵の存在はわからないうえに、その頃はまだ、外部に公開されていた内蔵も非常に少なかったそうなのです。
長い間ベールに包まれていた歴史的建造物、という点でも魅力的ですが、増田町の内蔵のもう1つの魅力は、蔵の建造物としてのデザインではないでしょうか。
内蔵は明治〜昭和前期に建てられたもので、単なる屋内の蔵ではなく、実に複雑なデザインで装飾されています。黒を基調とした蔵の外壁は歴史の重みを感じさせてくれ、装飾の複雑さにはその商家の個性が表れているといえるでしょう。
特に蔵の扉や窓枠などは、左官職人の腕の見せどころと言わんばかりに複雑な形状に仕上げられていて、時間を忘れて細部に渡って見入ってしまうほどです。いつのまにか、蔵であることを忘れ、絢爛豪華な建造物を彩る芸術作品に触れているような気持ちにさえなってきます。
商家によって内蔵の用途もデザインもかなり違いますので、比較をしてみるのも楽しいものです。ぜひ、増田町の町歩きをしながら内蔵巡りをお楽しみください!
※現在、見学可能な内蔵は19ありますが、有料、無料、予約要など各内蔵によって様々です。
写真を撮影する楽しさの1つとして、「自分の視点で視界の中を自由に切り取れる」ということが挙げられるでしょう。視界の全てを写すことはそもそも普通のレンズでは無理なわけですから、写真撮影自体が「視界の一部を切り取る行為」だと言えなくもないですよね。
今回ご紹介した増田町の内蔵のような被写体も、一部を切り取ることで装飾の面白さや特徴を自分なりに表現することが可能です。
【写真5】は、内蔵の壁面の装飾の一部と窓の扉の端だけを撮影したものです。特徴的だと思ったところだけを切り取ってみたり、色彩や直線、曲線の組み合わせなどに着目して、自分なりに写真という四角形の中だけで再構成してみたりすると、被写体の観察も撮影もさらに楽しくなると思います。
一部を撮影した写真では全体像がわからないということにはなりますが、写真は必ずしもいつも全体像を伝えるために撮影するわけではないはずです。全体を撮影したり、一部をアップで撮影したり、両方の視点を柔軟に持って被写体を観察している方が、様々な表現か可能になります。ぜひ、そんな試行錯誤のなかで、「自分だけの構図」を見つけてみてください!
1970年生まれ。福岡県出身。会社勤務の後、フリーランスの写真家・執筆家に転身。アジアやアメリカを主なフィールドとして自然風景、建築物、人々の生活や文化を、日本国内では、東北地方(特に鳥海山麓)などの自然を撮影。近年は地方自治体の地域活性化事業への参画など多方面で活動。
都内にて写真教室アルトフォーカス主宰。旅行会社にて海外国内撮影ツアー同行講師、写真講座講師。
JATA世界旅行博2008、JATA旅博2011(東京ビッグサイト)にて講演。2008年、ウズべキスタンの古都サマルカンドの文化歴史博物館にて個展開催。2012年、NHK BSプレミアム『極上美の饗宴』の「シリーズ平山郁夫の挑戦(1)執念のシルクロード」にゲストナビゲーターとして出演。2014年、タシケント国際フォトビエンナーレへ招待参加。
Jin Akino Photography http://www.jinakino.com
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■■■ 写真集概要 ■■■
★ 古都サマルカンド在住のデザイナーによるカバーデザイン(装丁)
★ テキスト部分は4カ国語(英語、ロシア語、ウズベク語、日本語)で制作
★ 被写体の建築物のガイドブック的情報(歴史・地図)、撮影エピソードは本書内のQRコードよりリンクしたウェブページにて詳細を掲載
2019年4月20日初版
ISBN:978-4-9910724-0-6
本体価格:2,500円(税別)
サイズ:横24.3cm × 縦21.6cm(ハードカバー)
ページ数:72ページ
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