ヨーロッパ発、現地レポート


オルセー美術館の5階に展示
誰もが知っている作品の一つ。ルノワールが35歳の時に描いた「ムーラン・ド・ラ・ガレット」です。この絵画は、ルノワールにとって挑戦でした。かれは今までにこれほど大きな画面に、これほど多くの人物を描いたことはありませんでした。
では、絵を見てみましょう。

画面の中にはたくさんの人がいます。前景の人々は座って何かを飲みながら楽しそうに話をしています。画面中央では、カップルが踊っています。
ここはどこかというと、庶民的なダンスパーティーです。モンマルトルの風車があった場所で行われていて、毎週日曜日と祝日には皆が踊りに来ました。そこではみんながお菓子を食べたので、「お菓子の風車(ムーラン・ド・ラ・ガレット)」というあだ名がついたのです。
しかし画面の中には、風車は見えません。いまでもモンマルトルのルピック通りにいくと風車を見ることができますが、ルノワールが描いたのはその裏手に当たる場所でした。画面の奥には、緑の建物が見えます。あそこがダンスホールになっていました。しかし、陽気のいい季節には、テラスやオーケストラが外に設置されました。オーケストラの姿も絵の背景に見ることができます。

ここにいる人たちは、上等な服を着ていますが、集まっている人々は庶民、労働者階級です。週末の幸せなひと時を過ごすために、かれらは最も上等な上着とドレスでここにやってきたのかもしれません。特に女性たちの服装はさまざまな材質で、色とりどりです。中央左で踊る女性は、ピンクのドレスにつけた紺色のリボンをこれ見よがしに見せているようです。

前面中央の人物をよく見てみましょう。この二人の女性、とても似ています。実は、彼女たちは姉妹なのです。エステルとジャンヌの二人はルノワールのモデルをよく勤めました。

今度は、画面前面の左隅を見てください。左の少年の顔が半分切れてしまっています。さらに、画面右側の男性の体も切れてしまっています。
ルノワールはこのように、画面の構成を決めることで、画面に表現されているのは現実の一部だけであり、画面の外にも現実が広がっていることを示しています。

画面構成は、前面のグループのとても近くに設定されています。私たちの視線は、まずはこの前方のグループに引き付けられます。
彼らたちの表情は、しっかりと描かれています。

一方で、前面左側の金髪の少女の顔はかすんでいます。
これは、私たちの脳が視野の中心にいるものに対してはくっきりと見せるのに対して、その周辺のものに対してはかすんだようにしか見せないことを忠実に絵画の中でも再現しているのです。
この絵画は、まさにこのダンスパーティーの場所で描かれたといわれています。人々が踊りあい、ひしめき合う場所にルノワールはキャンパスを立てたのです。彼の目に見えたそのものを絵の中に落とし込んだのでしょう。
さて、画面前面左側の少女の髪は、緑や青になっています。これは、当時の鑑賞者を困惑させた表現の一つでした。ルノワールは緑や青を使い、太陽の木漏れ日が人々の上に影を落としている様を表現したのです。この緑と青色は、少女の髪の毛、地面、踊っている人々の服の上にみることができます。印象派画家は、影は完全な黒でも、灰色でもなく、かすかに色彩を帯びたものなのだと考えていました。

この絵画は汚い。汚れがいたるところについている。当時の人々はルノワールの陰の技法を理解できずに、こう言いました。労働者階級の人々の服装が、工場の油によって汚れているのを表現しようとしたのだ、と考えたのでした。革新的な技法は、いつの時代も理解されがたいものなのです。
ルノワールの絵には彼独自の柔らかさを通じ、愛にあふれたパリの生活を感じ取ることができます。
彼がここで描いた人々は、ルノワールの友人ばかりでした。ルノワールは、質素な家庭の出身で13歳のころから地元リモージュで絵付け職人見習いとして働き始めます。しかし、絵付け作業が産業革命とともに機械化することによって失業。その後本格的に画家をめざすことになり、パリでマネ、シスレー、バジールらと知り合うことになります。
同時代のブルジョワの良家出身の印象派画家たちが労働者たちが直面するパリの陰鬱な生々しい生活をえぐるように表現したのに対し、労働者階級である彼自身は、逆に、日常の幸せを楽しむ庶民の姿を描きました。
笑った人物たちや、楽しそうにおしゃべりしているグループ、そしてダンスからは、肩の力が抜けた雰囲気が伝わってきます。
年号/素材 1876 キャンパスに油彩
作者/ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841−1919)
オルセー美術館の5階に展示
解説があると、美術鑑賞はもっと面白いですね。
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