
「センス」や「経験」を共有可能な知見に変えるMD塾の取り組み
<このストーリーを話したひとたち> 尾上 美羽 dinos 人事部 髙橋 康暢 dinos 人事部商品の企画・開発から販売までを一貫して担うdinosのMD(マーチャンダイザー)は、大きな裁量を持つ一方で、幅広い知識や経験が求められる仕事です。だからこそ、仕事の進め方は「センス」や「経験」に委ねられがちでした。そうした暗黙知を共有し、若手が成長する道筋をつくろうと2025年にスタートしたのが、社内勉強会「MD塾」です。ベテランMDの知見を言語化し、次世代へ受け継ぐこの取り組みについて、人事部の尾上美羽と髙橋康暢に話を聞きました。
「センス」という言葉の裏で、
暗中模索する若手たち
「MDはdinosのビジネスの根幹的存在。だからこそ育成は極めて重要と考え、これまでもさまざまなアプローチを続けてきました」。MD塾を立ち上げた背景をそう切り出した尾上は「しかし同時に、画一的なカリキュラムで育てるのが非常に難しい仕事でもある」と続けます。
「マーケティングの基礎知識などは研修で身につけられても、どうやってお客さまのニーズを掴み、アイデアを生み出し、商品として仕込むのかといった具体的な領域は、個々のMDの『センス』に委ねられてきました。それは多くの若手にとって、大きな悩みの種でもありました」
こうした課題意識の下、人事という立場で若手MDと面談を重ねる中で見えてきたのは「若手はそれぞれに悩んでいるものの、他のMDが普段どんな方法で仕事を進めているのかを、お互いに知らない」ということでした。であれば、お互いのやり方や経験を知り、共有できる場があるといい──。そう考えたことが、MD塾というアイデアにつながったといいます。
「構想段階では社内で『エースMD』と呼ばれる、経験も実績も豊富な3人に相談しました。すると、扱っている商品も媒体もまったく異なるのに、根底の考え方や物事の捉え方には、驚くほどの共通点があったんです」
つまり、これまで「センス」の一言で片付けられていたものの中には、実は言語化し、共有できる部分があるかもしれないことがわかってきました。
知識を得るだけでなく
縦横のつながりを生み出す場
こうして昨年9月にスタートしたのがMD塾です。
1回目は先述したベテランMD3人によるトークセッション、続く2、3回目は関係性の深い取引先を招き、「dinosらしいものづくり」をテーマに担当MDと対談してもらいました。これまでに4回開催していますが、毎回立ち見が出るほどの盛況ぶりで、中には「MDがどんなふうに考えているのか知りたい」と、MD以外の職種の社員が参加する姿もあります。
MD塾の面白いところは、実施してみて浮かび上がった新たな論点や参加者の声をもとに、次回に深掘りしていく形で進められている点です。取材日に開催された4回目では、キャリア採用で入社し活躍中のMDを講師に立てて、商品企画に特化した講義を実施。これも「より具体的なフローを知りたい」「他社での経験を持つ人の視点も聞いてみたい」という反響があったためでした。
実は、毎回の内容を企画し、運営を担当している髙橋自身も、若い頃にMDとして暗中模索の日々を過ごした一人。「当時は何がわからないのかさえわからない状態で、先輩MDに対し、的を射た質問ができていませんでした。今はあの頃の自分が一番聞きたかったことを企画として形にできている感覚があります。それが同じように悩む若手の救いになってくれたらいいですよね」
対面での開催も強くこだわった部分だという髙橋。ただ知識を得るだけの場所ではなく、その場のライブ感を大切に、MD塾を横や縦のつながりを作るための場にしたいという意図がそこにはあります。
企画から販売までをやり切る、
花形の醍醐味をもう一度
尾上がMD塾に力を入れる背景には、もう一つ大きな理由がありました。それは「MDという職種がかつてほど花形でなくなってきている」という危機感です。
「店舗で何年も下積みを経てからでなければ商品企画に携われない企業が大半である中、dinosには若手のうちから裁量を持ってチャレンジできる環境があります。テレビショッピングの担当になれば、一人で数億円という売上を動かすこともできる。けれども今は、その大変さの方にフォーカスがいってしまっている印象です」
全部を自分でやらなければいけないというのは、裏を返せば、一人のプロデューサーとして自分の意志を反映できるということ。「MD塾をひとつのきっかけにしてその面白さに気づくことができれば、仕事の景色はガラリと変わるはず」と尾上。
「dinosのMDってやっぱり面白い」と感じてほしいというのが、この取り組みに込めた裏テーマ。だからこそ、髙橋も参加した若手から「自分も早くMDとして活躍したい」「改めてこの仕事が好きだと思った」という言葉が返ってきたときは、心底嬉しかったそうです。
尾上は「直近の目標はこのMD塾をしっかりと定着させることですが、ゆくゆくは若いMDたちが『いつか自分も登壇したい』と思える場所に、そして、登壇すること自体が『エースMD』として認められた証になる、そんな場所に育てていきたいですね」と、MDの活躍とMD塾の未来に期待を込めています。

