Interview
#50

音楽で自分を表現し人と繋がる
天才中学生が描く
未来の夢の姿とは

鈴木 美音さんMIO SUZUKI

作曲家を目指す中学1年生

2010年生まれ、愛知県出身。作曲家の父の影響で、幼少期よりピアノ、作曲を始める。自作曲「ハリネズミのベッド」がサントリーホール「こども定期演奏会2017」において演奏される。小学館からの依頼で絵本のイメージ曲を作曲したことも。2021年、日によって違うピアノのピッチを温度と湿度から分析した自由研究が文部科学大臣賞・小柴賞受賞。第22回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA(小学5・6年生部門)銀賞。作曲家を目指して勉強中。
https://s-p-orchestra.com/mio/

5歳でピアノを習い始め、6歳で作曲を始めたという鈴木美音さん。現在中学1年生ですが、すでに自身の作曲した曲がオーケストラで演奏されたり、国際的なピアノコンクールでは銀賞を獲得したりと華々しい実績を残しています。まさに音楽の"天才"と呼ぶにふさわしい美音さんですが、実は、彼女が音楽に熱中するのには意外な理由が。作曲家になりたい、と目を輝かせて語る大きな夢の背景には、どんなストーリーがあるのでしょうか?

小学2年生で作った曲が
オーケストラ演奏に

「父が作曲家なので、生まれた時からピアノをはじめたくさんの楽器がある環境でした。私もやってみたいと、5歳の頃からピアノを始めました。ずっとクラシックを勉強してきましたが、中学に入ってからは、ジャズやポップスの練習も始めています」

そして、6歳からは作曲の勉強を始めたという美音さん。頭の中に自然と浮かんでくるメロディーを次から次へと五線譜に書き留めていったそうです。小学2年生で作曲した「ハリネズミのベッド」は、日本初のこどものための定期演奏会として知られる「こども定期演奏会2017」で一流のオーケストラによって演奏されました。この曲では、まず初めにタイトルが思い浮かび、ハリネズミたちが登場する絵本を作ってストーリーを膨らませてから、メロディーを生み出したのだとか。幼いながらも遺憾無く発揮されてきた非凡な才能は、一体どのように培われてきたのでしょうか。

母のちよさんによると、美音さんは幼い頃から音に対する感受性は飛び抜けて豊かだったそうです。

「幼稚園から帰ってきて、『今日はどんなお歌を歌ったの?』と聞くと、歌詞は覚えていないんですけど、今日はこんな新しい歌を習ったよ、と、階名で歌ってくれるんです」

8歳で、山﨑優子さんの絵本『ぼくたちのうた』からインスピレーションを受けて作曲。その楽譜は絵本の巻末に掲載され、音楽会でも演奏されています。

鈴木 美音さんイメージ

成長の中で立ちはだかる壁、
どう越えるか

「小学6年生ごろから、頭の中にあるメロディーを書き写すだけではなくて、和声法という、作曲にあたって必要な理論を学んでいます」

父の直己さんは、作曲家として、現在の美音さんの成長の段階をこう分析していました。

「これまで彼女は、自分の中から湧き上がってくるメロディーを自由に書いていました。でも、プロの世界では、きちんと理論に裏打ちされたものか、ということが評価の基準にもなりますので、それだとだんだん通用しなくなっていきます。今は和声法を学ぶことで、逆に理論がインスピレーションの歯止めになることもあると思います。本人としては難しい時期かもしれないですね」

こうした状況の中で、美音さんは今、さまざまな曲を聴いては、スピーカーに耳をくっつけるほど熱中してひたすら音の探求を行なっているそう。

「昔は、メロディーが思い浮かんだらスッと曲を書けていたんですけど、今は時々止まってしまって、ここをどうしよう、と悩んでしまうことがあって。理論的に、こういう和音の進行だったら、次はこうなる、というパターンがたくさんあるので、それを覚えて、実際に曲を聴いて検証しています。色んな発見があるのが楽しいです」

鈴木 美音さんイメージ
鈴木 美音さんイメージ

表現だけじゃない、
美音さんにとっての音楽

実は、幼少期の美音さんはよく泣く子どもだったため、両親は大変苦労されたそうです。音に対する感受性が鋭すぎたのか、葉っぱが擦れる音にも敏感で、小学校に上がる頃になっても車の音が怖くて道路が歩けないほどだったとか。しかし、音楽を学び、自分の個性を活かすことで、だんだんと自信に繋がってきました。

「私は、人に自分の気持ちを伝えるのが苦手で、だけど音楽だと自分を自由に表現できるんです。だから、ずっと続けていきたいと思っています」
美音さんにとって音楽を学ぶことは、自分を表現する喜びを得るだけでなく、くらしの中でのコミュニケーションに必要なことでもあります。今、一番楽しみにしているのは、月に一度、ライブハウスでジャズのセッションをする時なんだそう。大人とのセッションにも、音楽を介せば物怖じせず飛び込んでいくことができます。

「たくさんの方たちが丁寧にいろんなことを教えてくださいます。私はピアノを弾くんですけど、その時セッションする人によって、毎回音は違いますし、もう二度と同じ演奏は生まれない、という感じが自由で、とてもわくわくします!」

鈴木 美音さんイメージ

多彩な経験を
作曲に活かしてほしい

普段は、学校に通う中学一年生の美音さん。一番好きな教科は音楽ではなく数学なんだとか。

「家で、自分で勉強するのは好きで、特に数学は自主的に先どり勉強もしています。音楽をやっていると、表現が自由なので、答えが一つじゃないんですけど、数学は答えが明確にわかるので、解けるとスッキリするので好きです」

はにかみながら「授業はそんなに好きじゃないかも......(笑)」と言いますが、定期テストでは学年総合一位になるほど成績優秀。また、夏休みには約70冊もの本を読む読書家という側面も。まとまった時間ができると、一気に10冊を読破するそうです。

こうして音楽以外のことにも熱心に取り組む背景には父の思いがありました。直己さんは、東京外国語大学を卒業後、百貨店での勤務経験もある、少し変わった経歴の作曲家です。

「音大を出れば自動的に作曲家になれるというわけではないので......。高校も、音楽専門ではなく普通科に進んで、色んな人がいるところで、色んなことを学んでほしいと思います。お客様に支持いただく音楽を作るためには、本当にたくさんの引き出しが必要ですから」

鈴木 美音さんイメージ

音楽で人の役に立てる
作曲家に

美音さんの現在の音楽活動は、年二回の行政が企画するコンサートに出演するほか、ライブハウスで人と触れ合い、お客様の反応を吸収する中で経験を積んでいます。

さらに2021年5月から今年3月まで、音楽家のさだまさしさんから曲作りの指導を受ける機会に恵まれ、大きな影響を受けたそう。小学校卒業時に書いた「12さいの旅立ち」は、さださんとのやり取りの中で完成した曲です。

「さださんがまず、『自分が表現したいことを、5・7・5で表現してみよう』とおっしゃって、私は『もう少し、小学生の、ままがいい』というふうに考えました。そこから膨らませた曲です。最近、さださんのコンサートにお邪魔したのですが、その時に、お客さんがみんな笑顔で帰っているのを見ました。それで、音楽って、こんなに人を元気にできるんだって、改めて強く思って、感動したんです」

たくさんの学びを経て、どんな曲が誕生するのでしょうか。これからの成長が楽しみです。

「バンドもやってみたいし、フルートやドラムやギターなど、ピアノ以外の楽器にも挑戦してみたいです。将来の目標は、朝ドラなどのテレビの音楽を作れるくらいの作曲家になることです。勉強を続けて、私もさださんのように、いつか音楽で人の役に立てるようになりたいと思っています」

鈴木 美音さんイメージ
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MIO SUZUKI Everything Has A Story