Interview
#55

歯科医師、モデル
クリエイティブディレクター
三つのキャリアで体現する世界

加藤 順子さんJUNKO KATO

歯科医師 モデル
クリエイティブディレクター

2015年、大学生時代にモデル業をスタート。現在はクリニック勤務の歯科医師でありつつ、クリエイティブディレクターとしても活躍。様々なブランドとのコラボレーションを手掛け、独自の感性が同世代の女性たちの共感を呼ぶ。自らのクリエイティブ活動をより発展させるため2020年に立ち上げた自身の会社の代表取締役も務め、現在はインテリア雑貨を中心に開発を行う。 https://www.instagram.com/_katojun_/

現在、クリニック勤務の歯科医として働き、それと同時にライフスタイル雑貨を中心に開発を行うクリエイティブディレクター、モデルとしても仕事をこなす加藤順子さん。SNSで発信される洗練されたインテリア、ライフスタイルは大きな注目を集めています。快適な住空間を生み出すセンスはどのように磨かれたのでしょうか? また、異なるキャリアを両立させるしなやかな働き方の背後にはどんな思いがあるのでしょうか?

「こういうものがあったら」
熱意だけでプレゼンに

「今、日本で私みたいな組み合わせのキャリアの人は他にいないと思います」と笑う加藤さん。

大学の歯学部で学んでいた時、SNSでスカウトされてモデル活動をスタートし、モデルと学生の二足のわらじを履いていました。昔から、自分の好奇心は一つの肩書きの中では満たし切れない、と感じていたそう。

クリエイティブディレクターとして初めて携わったのはランジェリーの開発。「こういうものがあったら」という思いをマネージャーに伝えたところ、プレゼンに行こうと背中を押されたそうです。

「エクセルもワードも使ったことがないくらいでしたが、iPadに入っていた文書制作のソフトで拙い企画書を書いて持って行きました(笑)」
常識に捉われない思考、チャレンジ精神から始まったクリエイティブディレクターという仕事。2021年に発表したアロマディフューザーは、公式サイトでたった2分で完売してしまったほどの人気だったそうで、今や多くのファンから支持を得ています。

加藤 順子さんイメージ

歯科医師としての
やりがい、楽しさ

普段、SNSで発信されている世界観からはなかなか伝わってこない、歯科医師としての仕事のお話もとても興味深いものでした。

「歯科医師の方は、最終的には開業をゴールに掲げている方が多くいます。でも、特に女性は、歯科衛生士さん、歯科技工士さん含め、出産をすると復帰した後の働き方の調整が難しく結局やめてしまうという方も多い。開業というゴールだけを目指すと限界があります。だから歯科医師を続けながらも、他のことに挑戦して、いろんな働き方ができると体現したいんです」

歯科医師としてのやり甲斐はどんなところにあるのでしょうか?

「この仕事はとても好きで、目が見える限り臨床には携わりたいと思っています。口を開けてるだけでいいんだ、という気持ちで歯医者さんに来る方、多いと思うんですが、実は二人三脚に近いのが歯科治療です。 例えば、歯磨きがちゃんとできている人ってかなり少なくて、口腔内が綺麗に保てていないと歯茎から出血しやすくなり、歯面への接着剤が血液に邪魔されて治療の成功率が下がってしまいます。だから、まず『私とあなたで一緒に直していくんですよ』という意思の確認は丁寧に行うようにしています」

加藤 順子さんイメージ
加藤 順子さんイメージ

賃貸でも楽しめる、
インテリアの極意

加藤さんのSNSから垣間見える素敵なお部屋の様子に憧れる人も多いはず。インテリアのセンスはどのように培われたのでしょうか?

「その椅子が、高校生の時私が一番最初に買ったデザイナーズ家具です」と指差すのは、イタリアのデザイン会社、カルテルの名作「ルイ・ゴースト」。

「この椅子に合わせる感じで、いろいろ買って、いろいろ試してきた感じです。いっぱい失敗しましたよ。一つのアイテムだけでなく、部屋全体の雰囲気と照らし合わせた時にどう見えるかは大事ですよね。形も色もすごく好きだけど、買わない、と判断することもよくあります」

賃貸の部屋だと制約もあり、思い描いた通りの住まいと出会うのはなかなか難しいもの。そんな環境下でも、居心地よい空間にするコツを聞いてみました。

「まずは床を変えることです。この部屋も、もともとは土間スペースが広かったんですが、タイルを敷いてるんですよ。退去時、現状復帰ができるギリギリのラインを攻めるのが得意です(笑)。まず床の色を決めると、そこに合う家具や小物の方向性も決めやすいですよ」

加藤 順子さんイメージ

二つの仕事の
意外な共通点とは?

お話を聞いていると、実は、歯科医師、クリエイティブディレクターという一見全く異なるように見える職種に意外な共通点があることがわかりました。

「歯科医師として、歯を削って、そこにフィットする構造物を作るという作業があるのですが、歯のための構造物って、生態的に必ずフィットする形、そのための美しい削り方が決まっているんですよね。頭の中に正解が浮かんでいる。クリエイティブディレクターという仕事も、頭の中で『絶対にこれがいい』というイメージを形に落とし込んでいくというプロセスがあるので、それが共通しているかも」

「絶対にこれがいい」という確信のもと誕生したものの中に、ディノスとのコラボ商品、曲木のケーブルボックスがあります。

「もともと、ケーブルを整理するためにディノスさんの曲木のボックスを使わせていただいてたんですけど、ずっと『ここに穴があいてればいいのに!』と思ってたんです。だから、自分で電動ノコギリを買ってきて申し訳ないけどあけちゃいました。真っ直ぐ切るのはすごく難しかったんですけど、とりあえず思い通りの穴ができてSNSにあげたら、かつてないくらいの反響があって」

その投稿を見つけたディノスの担当者からオファーがあり、コラボ商品につながることに。思い描いたものを形にする力が、二つの仕事それぞれに生きていました。

加藤 順子さんイメージ

唯一無二のキャリアの
先に描く未来

「家のあそこどうしよう、あの家具が欲しいな、って、いつも考えてました。実は、ファッションに興味が持てるようになったのはここ4、5年のことなんです。『家』の環境が整わないと、自分に目が向きづらかったのかもしれないですね。私は家の中の一部だと思っているので・・・・家が好きすぎて、放っといたら仕事でも休みでもずっと家にいてしまうので(笑)、意識して毎日20分、30分は散歩に出るようにしてます」

そんなくらしを送りながら、唯一無二のキャリアを築く加藤さんに、これからチャレンジしてみたいことを伺ってみました。

「先ほどもお伝えしたように、いろんな働き方があるのだということを体現し続けること。それから、今、歯科医師として接することができる患者さんの数が限られてしまうので、もっと、たくさんの人に向けて歯の磨き方など生活習慣から改善していくお手伝いがしたい、と考えているところです。歯科の世界ってやや閉鎖的なので、もっと一般の方にオーラルケアの知識が浸透するよう、新しいアプローチの方法を提案できないかな、と思っています」

いつかオーラルケアのブランドを作ってみたい、という夢もあるそう。そのクリエイティビティと発信によって、どんなアイテムが誕生するか楽しみです。また、複数の仕事を有機的に絡ませながら歩むその背中は、歯科業界以外にも多くの女性たちを勇気づけるはず。これからもその挑戦から目が離せません。

加藤 順子さんイメージ
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