Interview
#59

華麗なるダンススポーツ
世界一を目指す兄と妹の絆
そして夢への思い

大西 大晶さん

競技ダンサー
大西 咲菜さん
競技ダンサー、大学4年生 HIROAKI, SAKINA ONISHI

大晶さんは1998年生まれ、咲菜さんは2001年生まれ、共に富山県出身。競技ダンスの元全日本チャンピオンの両親のもと、兄妹のペアとして幼少期よりダンスの英才教育を受ける。「三笠宮杯全日本ダンススポーツ選手権」では、2020年にラテン部門、2021年にスタンダード部門にて初優勝。2023年はスタンダード部門優勝・ラテン部門で準優勝を飾った。CMへの出演他、バラエティ番組の社交ダンス企画で指導者を担うなど、多方面に活躍中。
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優雅なステップや表現力で魅せる社交ダンスの世界。大西大晶さん・咲菜さんの兄妹ペアは、日本最高峰の大会「三笠宮杯全日本ダンススポーツ選手権」優勝の常連です。10種類のダンスを踊りこなす「10(テン)ダンサー」として現在世界ランク2位。圧倒的な存在感を放っています。子どもの頃からの長年のパートナーであり、ライバルであり、何より「兄と妹」という二人。競技者としての姿の裏側には、どんなくらしや、未来の夢があるのでしょうか?

10ダンサー」として
競技ダンスの頂点を極める

社交ダンスのカテゴリは大きくスタンダード、ラテンの二つに分かれます。さらに、それぞれ5つの種目があり、計10種類全てを踊りこなすのが「10ダンサー」と呼ばれる競技ダンスの選手たちです。

幼い頃からダンスの英才教育を受けてきた大西兄妹にとって、10ダンサーとして世界ランキング1位になることは一つの大きな夢。どちらかというとラテンの方が好き、と語る咲菜さんが意気込みを教えてくれました。

「ラテンだけ、スタンダードだけ、と絞って競技に出るペアが多い中、私たちは全てを網羅する10ダンスにこだわっています。ラテン、スタンダードに加えて『10ダンス』のカテゴリの大会にも出るので、練習量は通常に比べるとほぼ3倍ですね。今は世界ランク2位なので、1位を獲得することが当面の目標です」

さらに驚くのは、年間の大会の多さ。国内は、仙台、静岡、冨山、京都、大分などなど、さらに海外も、ドイツ、ルーマニア、イタリア、ポルトガル・・・・と過酷なスケジュールが伺えます。ランクが反映される大会で順位によってポイントが割り振られ、世界ランクが決まるとのこと。

優雅で華やかな印象が強いダンスですが、5種目を連続で踊らなければならないというハードな競技でもあります。練習で躍動する二人の様子を間近で見ると、「サッカー選手と同じくらいの運動量と言われる」というのも納得です。

大西 大晶さん・咲菜さんイメージ

兄は、妹はどんな人?
それぞれに聞いてみると・・・・

二人がダンスを始めたのは、大晶さんが6歳、咲菜さんが3歳の時。二人の両親は10ダンサーとして学連の全日本チャンピオンに輝いたこともある実力者です。兄妹は、親の指導を「厳しかったよね・・・・」と笑いながら顔を見合わせます。

ロシア、イギリスなど海外の大会や練習に参加することでどんどん視野が広がり、幼い頃から「世界を目指したい」という情熱が育てられたそう。競技として世界を目指すなら「兄妹のペアだからこそ壁を乗り越えられる」という二人。それぞれ、お互いがどんな性格なのかを聞いてみました。まずは、大晶さんから見た咲菜さん。

「僕から見ると、けっこう天才肌なんですよ。そこはすごく尊敬してて、でも逆に普通の人の気持ちが分からないということも。説明がけっこう抽象的なので、指導者としては改善の余地ありだと思います(笑)」

そして咲菜さんから見た大晶さんは、自分とは「真逆」の存在なんだとか。

「お兄ちゃんは、知性派っていうんですかね。私がふわっと提案したことをしっかり言語化してくれて、包み込んでくれるような、すごく寛大な人です」

大西 大晶さん・咲菜さんイメージ

真逆の性格が影響し合う
絶妙なコンビネーション

兄と妹であり、競技者として長年のパートナーであり、今も都内で二人暮らしをしているそうですが、喧嘩はしないのでしょうか?

「私はすごく我が強いのですが、お兄ちゃんが優しく聞いてくれるので、喧嘩にもなってないのかも(笑)。ちょっとした言い争いをしても、普通に笑いながら練習してますし・・・・いつ仲直りしたかも覚えてないので、あんまり気にならない気がします」

と、咲菜さんが語る通りお兄さんらしい包容力を発揮する大晶さんですが、最近は「やりたいようにやる」と心がけているのだとか。

「兄の『あるある』だと思うんですけど、しっかりしなきゃ、みたいな思いが今までどこかにあったんです。でも、自分がやりたい表現や、音のタイミングなどをもっと好きにやってみようかな、と思うようになって。好奇心に素直になれて、最近けっこう楽しいですね。咲菜がのびのび自由にやってる様子からも影響受けてると思うんですが、これからは僕が大人になるのをやめて、逆に咲菜に大人になってもらおうかな(笑)」

大西 大晶さん・咲菜さんイメージ

兄と妹それぞれの
「一番喜びを感じる瞬間」

ダンス漬けの毎日を送る中で、気分転換の方法にもそれぞれの性格が出ているようです。大晶さんはアニメや漫画が好きで、大会への移動中の飛行機の中でも楽しんでいるそう。咲菜さんはキックボクシングやプールなど、ダンスと違う運動で無心になることがリフレッシュになるのだとか。

咲菜さんにとって、一番の喜びはダンスのショーの瞬間。「皆さんの目が自分に向いているのが本当に好きで、普段も誰かに見られている練習のほうが力が入ります。TikTokでアップする動画にいただける皆さんの応援がすごく力になっていて、そのエネルギーをダンスで表現するというサイクルになっています。本当に、すべてがダンスでできているみたいな人生ですね」

将来は、「両親みたいなダンスの先生になりたい」という長年の夢もあります。それに、小さい頃からフィギュアスケートの浅田真央さんにも憧れています。「彼女のように人の心を動かし、魅了できるようなダンサーになって、『社交ダンスといえば大西咲菜』と呼ばれる表現者になりたいです」

大晶さんにも一番楽しいと思う瞬間について伺ってみると、「アイディアが降ってきた時」と、少し違った観点からの回答が。

「踊っている時に、こんなふうにステップを踏んでみたらいいのでは、と閃いたり、こんなことをしてみたらダンス業界がもっと良くなるはず、と思いついたりする瞬間が一番楽しいですね」

大西 大晶さん・咲菜さんイメージ

競技者としてだけでなく、
ダンスの魅力を伝えるために

大晶さんは現在もダンスの指導者をしていますが、加えて「日本ダンススポーツ連盟の専務理事になりたい」という目標があるそう。

「今も、未来創造事業部の部長をさせていただいているのですが、ダンス界の発展に貢献できるような存在になりたいです。大学の部活で社交ダンスを始める方が多いのですが、卒業したらやめてしまうことがほとんど。社会人になっても続けられるような環境づくりが必要だと思います」

技術を磨くだけでなく、ペアの中で切磋琢磨し、自分とは全く異なるバックグラウンドの人と出会うことができるのもダンスの魅力。二人は今、CMやテレビ番組出演などのタレント活動、YouTubeやTikTokの発信にも力を入れ、若い世代へのダンスの普及にも力を入れているところです。

2024年パリ大会からダンススポーツのブレイキンがオリンピック種目になったように、今後、社交ダンスもオリンピック種目となる日がくるかもしれません。「そうなれば日本代表として出場し、メダルを取りたい」という夢も。

間違いなくダンス界のキーパーソンである二人がこれからどんなふうに成長していくのか、目が離せません。

大西 大晶さん・咲菜さんイメージ
大西 大晶さん・咲菜さんイメージ
HIROAKI, SAKINA ONISHI Everything Has A Story