Interview
#53

304050・・・・変化する悩み
人生、近道も裏道もない
歩み続ける2人の姿に学ぶ

ジェーン・スーさん

作詞家 コラムニスト ラジオパーソナリティ
堀井 美香さん
フリーアナウンサー JANE SU, MIKA HORII

<ジェーン・スーさん>1973年生まれ、東京都出身。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 (幻冬舎)、 『私がオバさんになったよ』 (幻冬舎)、『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『女のお悩み動物園』(小学館)など、著書多数。新著に『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)。
<堀井美香さん>1972年生まれ、秋田県出身。フリーアナウンサー。ナレーション、朗読の名手として知られ、名作小説の朗読会シリーズ「yomibasho」ほか、映画予告、コマーシャルを手がける。『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社。50歳からの独立日記』(大和書房)。

結婚・出産などのライフイベントを含めたキャリア形成、あるいは体力の衰えや健康問題等、年齢を重ねて増えていくさまざまな悩み。ジェーン・スーさんと堀井美香さんのポッドキャスト番組『OVER THE SUN』は、2020年10月の放送開始以降、"中高年の悩み"に寄り添う軽妙なトークが共感を呼び、瞬く間に人気となりました。「おばさん」という一人称を明るく用い、加齢へのネガティブなイメージを塗り替えるパワーを持つお二人から、「くらし、たのしく。」のヒントを探ります。

「歳を取ればもっと
楽になるものかと・・・・

お二人の出会いは今から約10年前のラジオ番組。そこから年月を経て、人気ポッドキャスト番組のパーソナリティとして活躍する現在、お互いについて改めて発見したことはあるのでしょうか。

「お互い、どんどん忙しくなっているのがびっくりだよね」そう語るのはスーさん。「歳を取れば取るほどもっと楽になるものかと思ってたら、二人とも息も絶え絶えで毎回この番組の収録にたどり着く・・・・という」

「わかります、何でもかんでも詰め込みたくなってしまう!」と堀井さんも相槌を打ちます。「スーさんも私も、『やります!』『まだいける!』というタイプ」「でも私たち、50歳にさしかかって集中力も体力も気力も落ちてるのに、欲張るから大変なんですよね。いつだって雑技団みたいに皿回しをしてる気分」「自転車に乗って曲芸してね!」「自分では100枚くらい回してるつもりでも、実は2枚くらいしか回ってなかったりする」「そうそうそう(笑)!」
冒頭から勢いのある掛け合いが止まりません。互いを信頼し合う様子が伺えるこの関係性もまた、二人が支持される大きな理由のうちの一つ。

ジェーンさん・堀井さんイメージ

年齢に応じて
人への眼差しも変わる

今や〝スー美香〟という愛称もお馴染みですが、「出会ったのが20代だったら、多分仲良くなってない」と、スーさんから興味深い言葉が。

20代の頃って、まずは自分と似てるってことが相手と仲良くなる唯一の方法だと思っていたから。共通の趣味があるとか、好きなものが一緒とか。でも、自分とは全く違う価値観の人にも人生があり、他人と自分の価値観の間に優劣はなく、尊重し合うもの。それは40代になってから分かるようになりました」

堀井さんも頷きます。「そうですね。かといって、お互いに若い頃から今まで、人間としての〝芯〟 は変わってない。わたしとスーさんは、物事には必ず筋を通したい、というような〝芯〟の部分は似ていると思います。でも価値観も畑も違うので、見てて面白いですよ」

「そんなのこっちのセリフだよ(笑)! あと、女性はただでさえ、結婚するか、子どもを産むか、働き続けるか、というライフステージの選択次第で疎遠になりやすいですからね。でも、またシャケみたいに同じ川に戻ってくるから。いつか再会した時に気まずくならないように、疎遠な間は適度に関係を曖昧にしておくのがオススメです」

ジェーンさん・堀井さんイメージ

「自分の顔」を
手にいれる生き方

第三者から揶揄に使われることが多く、ネガティブなイメージの強かった「おばさん」という言葉。それを二人は自分たちの一人称として明るく用い、加齢がもたらす悩みや、「あるある話」で共感の輪を広げています。

ポッドキャストのリスナーは二人の同年代だけでなく、2070代までかなり幅広いそう。二人のもとに寄せられるたくさんのエピソードは、まるで女性の人生の壮大な見本市のようで、長いスパンでキャリア、生き方について考えさせられます。スーさんは年を重ねることについて次のように考察。

10年ほど前の、私たちが出会った頃の写真を見たら、もちろん今よりも若いしシワもたるみもないんだけど、今の顔の方が『自分の顔』という感じがする。今の方がいいよね、って二人で話してたんです。若い頃に下っ端仕事をしていた時は、とにかく忙しくて、求められたことをこなすことで足腰が鍛えられていた。注文された蕎麦は全部出す、って感じ。『自分の顔』に至るためには、そうやって頑張るしかない。近道も裏道もないんだと思います」

ジェーンさん・堀井さんイメージ

オンとオフをうまく
切り替えるには?

忙しい日々を送っているお二人。自分らしいくらしを送るためにどんな習慣を取り入れているのでしょうか。

「膝掛けひとつとっても、どこからやってきた素材で、どこで作られたのか、という点を気にするようになりました」と堀井さん。身の回りのものを整理し、手元に置くものの生産背景に気を使うようになったそうです。

「そう思って、カシミアの良いものを選ぶと、雑にその辺にほったらかして扱うなんてしないですし、背筋も伸びるような感じがします」

フリーランスとなり、最近は子育てからも手が離れ、時間の使い方で色々と悩ましいこともあるそう。

「スーさんもそうだと思うんですけど、映画を観ても旅行に行っても読書をしていても、全部仕事につながりがち。何も考えない時間を作って落ち着くのが難しい」

「わかる」とスーさんも大きく同意。「私は自分らしくあるために、どんなに忙しくても必ず1人の時間を作るようにしてるんですけど、風呂に入って『あ〜気持ちいい』という時でも『この入浴剤で一本書けるな』と思っちゃう。最近ハマってるガンプロに行くのが、なんてったって一番! 異空間に行って非日常が目の前でどんどん繰り広げられると、バチンとオンとオフが入れ替わります」

ジェーンさん・堀井さんイメージ

健康 =「くらし」そのもの

スーさんも堀井さんも、目の前のことに全力投球で先のことなんて全然考えてない、と豪語しますが、とはいえこの先、やってみたいこと、夢はあるのでしょうか?

「本当に切実な問題なんですけど・・・・この先まずは、とにかく健康でいることが一番の夢です」と切り出したのは堀井さん。二人で「歯が大事!」と大盛り上がり!

「頑張って80歳の時に20本の歯を残そう。『8020運動』です!」とスーさん。「歯を残す、緑内障にならない。おばさんたちのハンムラビ法典だね。目には目を、歯には歯を!」
まずは健康であること。それこそ、「くらし」そのものではないでしょうか。

「本当にそうですよ。わたしも堀井さんも、80歳を超えた親を見ていれば、くらしがままならなくなっていくのがよくわかる。健康な体があればできることってたくさんあるよね。自分で作ったものを美味しく食べる。自分の家の掃除が自分でできる。そういう 〝基本的〟 なことを忘れないのがすごい大事だと思います。ほら、家具とかも、いろんなところでおしゃれなもの探すんですけど、結局ディノスが一番使い勝手が良かったりする」

堀井さんも「最終的には健康とディノスに戻ってくるってことなんですね(笑)」としみじみ。

夢を見るのも、未来を描くのも、その資本となるのは今ここでささやかな日常を編んでいる自分自身。お二人の言葉はまさに「くらし」の本質、スタート地点を教えてくれました。

ジェーンさん・堀井さん
ジェーンさん・堀井さんイメージ
JANE SU, MIKA HORII Everything Has A Story