以前の事務所ではガラスのテーブルを使い、モダンな空間を演出していましたが、越してくる時に「こんどは仕事も含めて低い暮らしにしてみよう」と決意しました。
打ち合わせは、父が残した津軽塗りの座卓で。
サイドテーブルとして一人卓を置き、散らかりがちな資料などを載せます。
玄関からスリッパは追放しました。せっかく靴を脱いで足を解放したのに、あんな中途半端なものをまた履く必要はないと思ったので。ただ、台所やトイレでは使っています。
低い暮らしを始めてみると、いいところはいくつもありました。
まず、圧迫感がなく広々使えるところ。可変性があり、多目的に使えます。たとえば座卓をしまえば、庭を背景にちょっとした落語会もできます。
あまり家具がないので、掃除が楽。これは大きな魅力ですね。
小道具の楽しみもあります。
座布団だけでなくクッションも。基本は無地。紺、えんじ、ベージュ、茶など和の雰囲気になじむ色で、冬は温かみのある別珍素材が定番。
和のインテリアに合うのはこの素材、と一概にいうのは難しいのですが、例えば同じタイシルクでも、照りの強いつややかなものではなく、ざっくり織り味のある、落ち着いた風合いのもの、と言えばいいでしょうか。
ときには、派手なクッションをひとつ、遊びでぽんと置いてみたりもします。ポップな柄のものや、スウェーデン製の刺繍が面白いショッキングピンクのもの。
ベースは控えめに、シンプルにと心がけても、ひとり疲れて帰ってきた時には、どこか目の端に赤いもの、華やかなものが欲しい気がするのは、年齢のせいかもしれません。
少々おしりが痛くなるのをやせ我慢して、座布団がわりにペルシャの小さなラグをちらして楽しむのも好きでした。
実用性でも趣味性でも、いいところのたくさんある低い暮らし。
こんな調子で私なりの和風生活は、まだまだ試行錯誤中。正解がないから悩ましく、それが面白いところです。