2026.10.27 / 僕のオススメ
今年7月に、九州・福岡へ出張した際に訪れたガーデンや建築事例の紹介記事の続編です。
今回は、博多・中洲近くに現存する伝説のデザイナーズホテル「ホテル・イル・パラッツオ」を紹介します。
「HOTEL IL PALAZZO(イル・パラッツオ)」は、バブル経済崩壊直前の1989年、
福岡市の中洲近くのラブホテル等が建ち並ぶ歓楽街に開業した、日本のデザイナーズホテルの先駆け的なホテル。
世界的なイタリア人建築家、アルド・ロッシ氏と、日本を代表するインテリアデザイナーの内田繫氏が中心となり、
他にも、エットーレ・ソットサス、ガエターノ・ペッシェ、倉俣史朗、三橋いく代、田中一光など、
建築・インテリアにとどまらず、家具、グラフィック界の世界的なクリエイターが参画して作られた、
まさに伝説のデザイナーズホテルなのです。
写真は、那珂川の対岸から見る、ホテル・イル・パラッツオ。
混然とした街に異彩を放つ外観は、40年近くを経た現在でも、全く色褪せていないように思います。
このあと、ホテルに近寄って撮影した写真を見ていただきますが、前面道路が狭くて、なかなか全景を捉えることが
難しく、建物全景を撮影するには、このように川の対岸からの遠景になってしまいます。
イタリア人建築家、アルド・ロッシがデザインした外観(メインファサード)は、
イラン産のレッド・トラバーチンという赤い大理石が使われていて、同じレッド・トラバーチンで円柱も作られ
装飾的に配置されて、水平に走る緑色の銅板の小庇とのコントラストが、とても印象的なデザインです。
実は、このホテル・イル・パラッツォが完成して間もない頃(まだ社会人になったばかりの頃)に、一度、
ここを訪れたことがありましす(もちろん外から見ただけですが。)
歓楽街で、スクラップ&ビルドも激しそうなエリアに位置していることから、竣工当時からホテルの周辺も
かなり変わっていると思いますが、メインの通りから少し入った場所にある
このホテル・イル・パラッツオの異彩は、その当時とあまり変わらないような気がします。
前面道路の細い道から、少しセットバックするように建てられているホテル・イル・パラッツオの
特徴的なメインファサードが見えてきました。
広角レンズを使っても、なかなかメインファサードの全景を捉えることができません。
ホテル棟はさらにセットバックしたあたりに、どっしり建っていますが、
その手前には、3つの基壇部のような塊と、その両側に切妻屋根の建物を隠した、別棟の建物が建っています。
ホテル棟の基壇部(写真左側)と別棟の建物(右翼部分)の間に、パサージュ的な通路空間が作られています。
そのパサージュ(通路)の床や、外構の通路(歩道)には、茶色いピンコロ石が、青海波模様のようなアーチ形状で
敷き詰められています。
まさにイタリアの街のようです。
ようやく、建物全景が見える位置に来ました。
下から見上げるように超広角レンズで撮影してみましたが、それでも全景を捉えることができず、
しかも水平垂直も出ていないアングルになってしまいます。
今度はズームレンズで、ホテル棟のメインファサードにクローズアップしてみます。
最上階には、大きく突き出した緑の庇が掛かり、各階層ごとに、レッド・トラバーチンの円柱と緑色の小庇が
リズミカルに重層しているのが分かります。
改めて、全面道路側から、ホテルを見ると、1階の基壇部、3つある箱の中央の箱は店舗への出入口となっています。
訪れたのは、朝早い時間でしたが、屈強な外国人のドアマンが立っておられました。
少し前面道路を歩いて、アングルを変えて、振り返るようなアングルで撮影してみました。
朝日を浴びて、メインファサードのレッド・トラバーチンの美しい壁面が、より際立って見えました。
ズームレンズでそのメインファサードをクローズアップ!
荒々しい表面のレッド・トラバーチンの壁面が、威容を誇っています。
ホテル・イル・パラッツオの基壇部。
3つの四角い塊が、前面道路側に突き出し、その間に挟まれた2つの階段が、人工地盤となる2階へ誘います。
ホテルのメインエントランスは、2階に設けられています。
ホテル棟の両側に設けられた別棟の、向かって左ウィング棟。
建物自体は、切妻屋根で出来ていますが、両妻側に四角い壁面を建てることで、
ホテル棟、基壇部とのデザインの調和が図られています。
基壇部を構成する3つの塊の間の階段を登って、2階のホテルエントランスへアプローチしてみます。
この屋外階段も、イタリアではよく使われている大理石のトラバーチンでつくられています。
階段の真ん中に設けられたステンレス製の手すりの影が階段に落ちて、それ自体がアートのようです。
2階に登ってみると、ますますこのホテルの異様さを感じます。
周囲の日本的な建物とは、一線を画した存在感があります。
2階に上がると、ホテル棟のエントランス前に、このようなオープンスペース(屋外広場)があります。
前面道路から1層分高い場所にあるため、通りを歩く人との目線が断ち切られて、妙にプライバシーに配慮されて
いるような錯覚さへ覚える、不思議な空間です。
屋上広場の反対側から見たアングルです。
レッド・トラバーチンで出来た列柱の中央辺りに、ホテルのロビーへとつながるエントランスが設けられています。
そのホテルエントランス前から、建物を見上げたアングルです。
シンメトリックで威風堂々としたファサードに圧倒されます。
ホテルの名称「イル・パラッツオ(il Palazzo)」は、イタリア語で、「宮殿」という意味になりますが、
まさに「宮殿」というか、ギリシャの「神殿」のような荘厳さです。
ホテルのエントランスドア付近を正面から見たところ。
列柱の間に、隠されたように、エントランスドアが配置されています。
この列柱は、昨年の大阪・関西万博で見たサウジアラビア・パビリオンで見た列柱空間のような印象とも通じます。
列柱は、まさに「大樹」をデザイン化した空間要素に思えてきます。
「ホテル・イル・パラッツオ」の外構には、一切の植栽スペースがない、
ストイックな空間ですが、その潔い割り切りに普遍性を見出すとともに、
メインファサードを彩る、積層化された列柱が、どことなく「森」を感じさせます。
この「ホテル・イル・パラッツオ」の外構を、「ランドスケープ」と呼んでいいのか、
「建築」と考えるのか、異論があるかもしれませんが、
僕の中では、頭のイメージの中に「森」が浮かんでくる、
不思議なランドスケープ空間の好例であると思います。
「ホテル・イル・パラッツオ」は、前述のとおり、バブル経済真っ盛りの頃に
計画され(当時のディベロッパーは、ジャスマック社)、1989年に開業したあと、
2009年よりリニューアル工事のため、一旦全館休業したのち再オープンしたようですが、
その後、所有者が変わり、2023年に、開業当初の理念を継承した新たな空間として
「Re-Design」されました。
既に他界されたクリエイターも含め、素晴らしいクリエイションで創造された珠玉の空間が、
40年近くの歳月を経た現在に継承されていることに、大変感銘を受けました。
まさに、伝説のデザイナーズホテルだと思います。
福岡へ行かれることがあれば、是非一度訪れていただきたい
(できれば宿泊していただきたい)ホテルです。
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