2026.8.20 / 緑化建築物
ひとつ前の記事で、今年7月に九州・福岡に出張した際に、視察してきたランドスケープの事例のひとつとして
博多の中心街・天神にある「アクロス福岡」のステップガーデンをご紹介しました。
今回は、その続編で、同じ博多の中心街、「中洲」の近くにある商業施設、「キャナルシティ博多」の
ランドスケープデザインについて、ご紹介します。
「キャナルシティ博多」は、有名な商業施設なので、行かれた方も多いのではないでしょうか?
1996年に竣工・開業しているので、もうすでに30年が経っています。
商業施設、劇場・シネマコンプレックス、ホテル、オフィスなどが入居する複合商業施設ですが、
最大の特徴は、地下1階に設けられた「キャナル」と呼ばれる「運河」で、その運河沿いに様々な商業施設が
グランドキャニオンのような「渓谷」に、立体的に配置されていることです。
この建築のデザインを担当したのは、アメリカ人建築家のジョン・ジャーディ氏で、
日本では「キャナルシティ博多」の他にも、東京の「六本木ヒルズ」、大阪の「なんばパークス」などの
商業施設のデザインを手掛けています。
ジャーディ氏のデザインした商業施設は、どの施設も「キャニオン(渓谷)」を想起させる空間構成が素晴らしく、
都市の中にオアシスを作り出すような建築デザイン、ランドスケープデザインが秀逸です。
僕も、この「キャナルシティ博多」が竣工したばかりの頃(30年近く前)に訪れたことがあるのですが、
今回久しぶりに、再訪問しましたが、年月が経ってもその空間の魅力は衰えず、その美しい空間に癒されました。
今回、博多の街を南北に流れる那珂川沿い、「キャナルシティ博多」の南西方向(どちらかというと裏側)から
施設の中に入ってみました。
訪れたのがこの後の予定の都合上、朝イチで、また商業施設のお店も開店する前で、照明も付いておらず、
人で賑わう前の時間帯だったので、少し寂しい感じがしますが、どうかご容赦ください。
早速、外部に開けた入口から階段を下りて、「キャナル(運河)」のある、地下1階へ降りていきます。

「キャナルシティ博多」を地図で見ると、すぐ横(西側)に、博多を南から北へ流れる那珂川に面していて、
ちょうどキャナルシティ博多付近で、那珂川が2つに分かれ、歓楽街の中洲へとつながっていきます。
「キャナルシティ博多」は、この那珂川の川の流れを敷地内に引き込んで「運河」をつくったような
ランドスケープデザインとなっています。
運河に面した建物は、緩やかに弧を描き、うねる渓谷のような建築が「キャナル(運河)」の両側に建っています。
「キャナル(運河)」を挟む両側の建物は、「渓谷」をつくり、
その「渓谷」の幅は一定ではなく、広がったり、
先が見通せないくらいに狭まったりと、複雑な風景を作り出しているのが、
ジャーディ氏のデザインの特徴です。
縦位置の写真でももう一枚。
「キャナル(運河)」を囲む商業施設棟は低層で、
クレバスのような裂け目から、自然光が地下1階の「キャナル(運河)」まで
差し込むので、照明が付いていなくても十分明るいです。
上から(1階レベル)から見下ろす、地下1階の「キャナル(運河)」です。
人工的につくられた運河の底もブルーに塗装され、流れる水もとても美しく感じられます。
地下1階の「キャナル(運河)」のレベルに降りてみました。
運河とその横の歩道(商業施設側)の植栽の作り込みなども、とても自然で美しいです。
また、運河を流れる水流も、結構動きがあって、リアルな感じがしました。
ところどころに、シンボルツリー的な大きな樹も植栽されています。
その大きな樹を、反対側から回り込んでみたアングルです。
自然を表現する樹々や足元の低木、宿根草群と、
その奥に見える極彩色の近代的な建築物との対比が
非日常感を演出しているように思います。
「キャナル(運河)」と遊歩道の境目。
特に、転落防止柵などは設けられておらず、それがこの美しい景観を
作り出していると思います。
日本では、安全対策として、無粋な手すりや壁が設けられることが多いと
思いますが、それがなくても十分成立している好例と思います。
こちらは、「キャナル(運河)」に架けられた太鼓橋。
ここにはステンレス製の手すりが架けられていますが、視線の透過性を考慮されたデザインかと思います。
こちらは、上層階(1階)に架けられた、「キャナル(運河)」の両側の建物をつなぐブリッジ(橋)。
ここは、敢えて人工的な構造物としての力強い「橋」としてデザインされているように感じました。
「運河(キャナル)」の奥に、この商業施設の中核となる「イベントスペース」が見えてきました。
赤い金属パネルで覆われた空間です。
ちょうど、博多を訪れたのが、「博多祇園山笠」の期間中だったこともあり、
このイベントスペースには、立派な山笠が展示されていました。
お昼ごろには、イベントが行われ、見物客でごった返すと思いますが、まだお店の開店時間前だったので、
イベントスペースもひっそりとしていました。
そんな中、「キャナル(運河)」の端(写真の左端)に、気になる人影を見付けました。
こちらが、そのアップ写真。
最初は、「キャナル(運河)」に落ちた樹々の葉っぱを拾っているのかと思いましたが、
どうも、「キャナル(運河)」に面した施設のガラス窓を、外側(運河側)から拭いておられるようです。
複雑な形状をした建物と、「キャナル(運河)」があることで、ガラス拭きやその他のメンテナンスには
非常に手間が掛かるのだと思います。
おそらく、「キャナル(運河)」に落ちた葉っぱやゴミなども、同じように、人が水の中に入って拾い集めて
おられるのだろうと思います。
何でもそうですが、空間の魅力とメンテンナンス性は両立するとは限らず、それでも、この施設の魅力を
維持するために、様々な努力がなされていることに感銘を受けました。
こちらは、「キャナル(運河)」沿いに植栽された高木の続くエリアを、商業施設のある遊歩道側から見たアングル。
「キャナル(運河)」の「水」だけでなく、効果的に植栽された樹々の「緑」がとても効いていると思います。
高木植栽スペースのアップです。
遊歩道の床には、「渦巻き」型のペイブメントが施されています。
このあたりにも、「水」を感じつつも、商業施設ならではの「賑やかさ」を演出したデザインの秀逸さを感じます。
「キャナル(運河)」のかなり奥の方(北側)から、中央のイベントスペースを見たアングル。
赤い金属パネルで覆われた、球体を半分に割ったようなイベントスペースと、その奥に見えるグリーンの縞模様の
商業施設の廊下が湾曲しながら折り重なっているデザイン、そしてその奥には、ガラス張りの高層棟が見え、
この写真は、「キャナルシティ博多」を凝縮したような一枚です。
こちらは、望遠レンズで少しクローズアップしてみました。
まだ朝方で、太陽高度も低かったのですが、もう少し経つと、太陽光がこの地下1階の「キャナル(運河)」レベル
に光を差し込み、とても美しい光景が見られるのではないかと思います。
更に「キャナル(運河)」の奥から、中心方向を見てみます。
今度は手前に、赤と黒のストライプのデザインが印象的な、少しイスラム建築を想起するような空間が現れます。
その手前(運河側)には、高木や低木がまとまって植栽された休憩スペースが設けられています。
ベンチも置かれ、ここが人工的な商業施設の地下1階とは思えないような演出です。
緑の休憩スペースの緑量も大きく、多くの人を集客する商業空間の中で、癒されるスペースとなっています。
「キャナル(運河)」との境部分も、冒頭で見てきたエリアとは少し違う設えで、徐々に変化する「水景」を
体感できます。
このあたりが、「キャナル(運河)」の一番奥(北側)になります。
むしろ、こちら側からのアプローチが、正式なルートになるかと思いますが、本当に美しい空間です。
いかがでしたでしょうか?、「キャナルシティ博多」。
竣工・開業からすでに30年が経ち、色あせてしまっているかと思いきや、竣工当時に初めてこの施設を見た時の
ワクワク感を再び感じました。
多くの商業施設が、時間の経過とともにマンネリ化、陳腐化する中で、この「キャナルシティ博多」は
輝きを失わず、存在していることに、とても感銘を受けました。
博多を訪れることがありましたら、是非、商業施設としてだけでなく、
美しいランドスケープ、ウォータースケープ(水景)の好例として、是非、足を運んでいただきたいと思います。
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