お盆休みも終わり、今年も暑い夏でしたが、朝晩は気温も少し和らいで、過ごしやすくなってきたように感じます。
さて、今回は、今年7月に仕事で出張した福岡県福岡市(博多)の街で、駆け足で視察したランドスケープの事例を
いくつかご紹介したいと思います。
まずは、福岡のランドスケープと言えば、この建物↓が真っ先に名前が挙がると思います。
「アクロス福岡」です。
このプロジェクトは、福岡県福岡市天神にあった旧県庁舎の跡地利用として、事業コンペが行われ、
福岡の新たなランドマーク、国際的な文化交流の拠点を目指して建設され、
1995年に完成した官民共同の複合施設です。
アクロス(ACROS)の由来は、「Asian Crossroads Over Sea」の頭文字をとって付けられたとのことです。
建物の南の広場(上の写真の手前の芝生エリア)は、地下駐車場が内包された「天神中央公園」となっています。
広場(公園)の北側に建てられた建物(アクロス福岡)は、自然との共生、心潤う空間づくりをテーマにしており、
南の天神中央公園に面した段状の「ステップガーデン」は、「山」をコンセプトとした大規模な屋上緑化空間で、
公園と一体となったランドスケープが、唯一無二の空間となっています。
建物の設計は、日本を代表する大手組織事務所の日本設計さん+竹中工務店さん。
ランドスケープの原案は、アルゼンチン出身で、アメリカ・ニューヨークとイタリア・ボローニャに事務所を置く
建築家のエミリオ・アンバース氏によって基本計画が作られました。
事業コンペ当選後、ランドスケープアーキテクトの田瀬理夫氏(プランタゴ主宰)が、
ステップガーデンの植栽設計に関わっておられます。
この建物が完成したのが、バブル崩壊後すぐの1995年で、それから約30年を経過しています。
この建物が完成して間もない頃、福岡出張に合わせて見たことがあるのですが、
その時は、まだ植栽された樹々も小さく、近代的な建物が威圧感を持って公園側に露出していた記憶があります。
今回、30年近く振りに現場を見に来て、その素晴らしい都市緑化空間に圧倒されました。
この「アクロス福岡」を、色々な角度から撮影してきましたので、ご紹介したいと思います。
こちらは、博多の中心街を流れる那珂川の対岸、中州の繁華街側から天神方向を見たアングルです。
那珂川にめんした建物群の向こうに、少し見えているのが分かりますでしょうか?
辛子明太子でおなじみの「福さ屋」さんの看板の右側です。
クローズアップしたのが、こちら。
手前の建物が低層なこともあって、その奥に何やら、「緑の山」のようなものが見えています。
建物のすぐ近くまで来ました。
建物の側面は、ガラス張りの近代的なファサードなのに、その屋根一面が「みどり」というか、
「森」に覆われています。
望遠レンズで寄ってみます。
建物1層分(1階分)の高さと比べてみても、この屋根を覆っている「みどり」(森)の樹々の大きさが分かります。
更によって、見上げるようなアングルで建物高層階をクローズアップします。
スペースに納まりきらず、はみ出すように樹々が茂っている様子がよく分かります。
少しアングルを変えて、もう一枚、引きのアングルで撮影してみました。
イメージとしては、「樹々が生い茂った山をスパッとナイフで切ると、中に近代的な建物が内包されてました」
的な、手前のガラスの外壁部分が、まるで山の断面のように見えてしまいます。
斜面(正確には屋根)の「みどり」(樹々)の中に、ガラスの塔屋のようなものが突き出ているのが印象的です。
そのガラスの塔屋的な部分を、望遠レンズでクローズアップしてみます。
展望台のような感じになっているのかなと、外から見ていると、そう思えました。
ちょっと建物(アクロス福岡)から離れて、南側の公園(天神中央公園)の南端の方へ行ってみました。
この手前の広大な芝生敷きのスペースの下に、地下駐車場が格納されているようです。
そのおかげで、地上部には、高密度な都市部にあって豊かなオープンスペースが広がっています。
少し近寄ってみます。
このアングルが最高ですね!
地面の芝生がそのまま山の斜面につながって、森になっているかのように見えます。
30年前に見た時には、まさかこのような風景になるとは思いもしませんでした。
設計者の方々の想いが、まさに結実した、美しい風景だと思います。
訪れた日がまさに快晴で、それも、この風景をより美しく見せていると思います。
望遠レンズでクローズアップ!
森の中に、グレーの石積みの建物が埋もれていて、その上に半円形のガラスの塔屋が乗っかっている感じです。
更に望遠レンズでクローズアップ。
この緑が、建物の屋上庭園(ステップガーデン)で、階段を徐々に登りながら、屋上の展望台へ行けるとは
なかなか思いませんね。
1995年の完成当初の竣工写真(造園の雑誌で見ました。)では、このステップガーデンには、いくつも鉄骨階段が
架けられ、上へ上へと人を導く動線が見えていたのですが、今は樹々で隠れて見えなくなっています。
南側の公園(天神中央公園)側に面して、グレーの石張りの建物が張り出していて、
そこから建物の中へ入れるようになっています。
建物(アクロス福岡)へ入る前に、公園の中央付近から、周辺の建物を見まわして見ましょう。
こちらは、アクロス福岡と反対側(南側)に見える風景。
アクロス福岡の側面と同じようなガラスのカーテンウォールの外装で、建物の形状も緩やかに湾曲した
デザインされた建物ですが、手前の樹々とは縁が切れて、独立した景観となっています。
この建物との比較でも、如何に「アクロス福岡」が視覚的に公園と一体化して建物(風景)であるかが分かります。
こちらは、公園の西側。
白い建物は、公共の建物(福岡市役所)で、緑の芝生と青い空とのコントラストが美しい建物ですが、
やはり「アクロス福岡」のようなランドスケープ的な一体感は感じられません。
芝生の公園(天神中央公園)には、大きな樹も植えられていて、適度な木陰を作ってくれています。
こういうシーンを見ると、どこかニューヨークのセントラルパークやロンドンのハイドパークのような印象です。
建物(アクロス福岡)のすぐそばまで来ました。
ここからステップガーデンを見上げたアングルです。
建物(屋上緑化)とは思えない、まさに「山」ですね。
建物の1階部分(喫茶店などが入居)にも、2階からの樹々の緑(枝)が大きく張り出してきています。
店への入り口部分には、小さなカスケード(水景)も設けられ、涼やかです。
いよいよ、公園に面した、建物南側に正三角形に切り取られた出入口から建物の中に入ってみます。
この三角形の出入口も、とても印象的なデザインで、思わず入りたくなるデザインです。
大きな正三角形の出入口をくぐったところです。
さらに奥に、ガラスの壁があり、そこから中が建物内部になります。
この場所から、公園方向を見ると、こんな風に見えます。
正三角形に切り取られた風景がとても美しいです。
ガラスの壁(ゲート)をくぐって、建物の中に入りました。
そこから公園方向を見ると、こんな感じ。
とても印象的なアプローチで、洞窟の中に入ったような感じです。
建物(アクロス福岡)の内部は、こんな風になっていました。
大きな吹き抜け空間(アトリウム)があり、その向こう側には
福岡の中心部を東西に貫く明治通りに面したもう一方の出入り口があります。
こちらは、明治通り側の出入口付近から、南側の公園方向を見たアングル。
建物は、地下にもつながっています。
ここで注目すべきは、正面に見える階段状の屋根部分です。
この上が、例のステップガーデン(森/山)なのですが、
スリット状になっていて、内部のアトリウム空間へ光を採り入れているのです。
その屋上緑化部分(ステップガーデン)を内側から見ると、こんなにも軽やかな仕掛けになっているとは。
こんな薄い床(天井)で、外から見えるあの緑量を生み出しているとは、到底想像もつきませんでした。
写真の上の方には、外から見える「ガラスの塔屋部分」が見えています。
展望台かと思っていましたが、来訪者が近づける展望施設ではなく、アトリウムに光を取り込む「ライトウェル」
(光井戸)のような機能を持たせているように思います。
その「ライトウェル(光井戸)」を、真下から見上げたアングルです。
外からは軽やかに見えましたが、中から見ると、鉄骨が縦横に架けられた構造的な空間でした。
それでも、この「ライトウェル(光井戸)」の際の部分にも、ステップガーデンの植栽が見えています。
再び、南側の公園側の出入口から、建物の外に出てみます。
ステップガーデンへ入ることができるゲートが、9時に開放されるので
そこから屋上の展望台へ向けて登ってみます。
まず、鉄骨階段が出迎えてくれます。
30年前にここに来た時は、時間がなくて、ステップガーデンを登らず、
公園側から外観だけを見て帰ったように思います。
こちらは、鉄骨階段の踏面。
玉砂利洗い出し仕上げのPC(プレキャストコンクリート)かなと思います。
この辺りにも設計者のこだわりを感じます。
ステップガーデンの斜面を、いくつもの鉄骨階段を往復しながら登っていきます。
途中、壁泉(へきせん)のある斜面がありました。
建物の段差を活かして、ところどころに、このようなギミックが仕掛けてあります。
このあたりも、自然の山の中に突然現れる滝のような感じに思いました。
行けども行けども、なかなか頂上にはたどり着きません。
竣工当時の写真(造園雑誌掲載)を見ると、当時植栽された木は、階段の手すり高くらいの低いものでした。
それが今では、大きく育って、まさに森/山の中を歩いているようです。
木漏れ日が美しく、夏の強い日射も遮ってくれます。
途中で、例のガラスの塔屋(おそらくライトウェル/光井戸)が、樹々の中に現れました。
このあたりは、最上階にほど近いエリアです。
頂上はあと少し。
こちらは、頂上直下の展望廊下?。
画面中央にみえている半円形の建物が、ガラスの塔屋(ライトウェル)の屋根です。
その向こうに、博多の街が広がっています。
結局、頂上まで、樹々が生い茂り、南側の芝生公園(天神中央公園)は見えませんでした。
そして、ようやくたどり着いた頂上の展望台。
南側の公園とは反対方向、北側の博多湾が見渡せると期待していたのですが、
屋上展望台への立ち入りは10時~とのことで、登った時にはまだ開いていませんでした(泣)。
次の予定もあったので、泣く泣く展望台からの眺望をあきらめて、降りることにしました。
帰り道は、域とは違う方向へ降りました。
途中、このような軒下(オーバーハングした屋上庭園)に、休憩用のベンチが設けられていました。
帰りのルートです。
階段の折れ曲がり部分からも、南側の公園は、樹々に阻まれて、全く眺望はありませんでした。
帰る途中、ガラスの塔屋(ライトウェル)の反対側(R側)が見えました。
ステップガーデンは、どこも樹々が旺盛に茂り、ここが屋上庭園であることを忘れさせます。
それほど、うまく樹々が生育しているのだと思います。
九州ですし、台風の影響も多いと思いますが、これだけの大きさと量の樹々が、無事に生育していることに
大変感銘を受けました。
ようやく、地上近くまで降りてきました。
南側の芝生敷きの公園(天神中央公園)が見えてきました。
結構、足がガクガクです。
建物の外部、内部、そして屋上庭園(ステップガーデン)を見せてもらい、次の目的地へ向かいます。
改めて、地上からこの「アクロス福岡」を眺めます。
ここから見る風景も、まさに山です。山としか言いようがない感じです。
先ほど、登って降りてきたステップガーデンです。
もはや、鉄骨階段は全く見えません。
唯一、ガラスの塔屋(ライトウェル)だけが、オブジェのように突き出ています。
南西の角から、見上げてみます。
ステップガーデンの各層に植えられた樹々は、軽く1層を越えています。(多分、5mくらいはありそう。)
なかなかこれほどの緑量と密度感を備えた緑化建物は他にないのではないでしょうか?
道路側から見ても、本当に美しい。
近代的なガラスのファサードと、緑の対比(コントラスト)が印象的です。
いかがでしたでしょうか?、「アクロス福岡」。
完成した当時、このような豊かな都市緑化空間になるとは想像もできませんでしたが、
その後、30年、関係者の皆様方のご尽力で、とても美しい緑が維持管理されています。
是非、福岡に行かれた際には、見に行っていただきたい、おススメのランドスケープです。
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