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専門家「風景」をつくるガーデニング術

県立奈良高校・創立100周年記念事業・中庭プロジェクト、その6(工事編:スタンドベンチ・コンクリート打設~型枠脱型)

居場英則

僕の母校である、県立奈良高等学校の創立100周年記念事業でつくる中庭プロジェクト。

徐々に出来上がっていく中庭の様子を、ランドスケープアーキテクトの視点でご紹介していく企画、

工事編の続きです。

前回、この中庭の大きな特徴のひとつ、楕円形のスタンド・ベンチ(観覧席)の基礎工事~コンクリート型枠

設置工事までの様子をご紹介いたしましたが、今回は、そのスタンド・ベンチにコンクリート打設、

そしてコンクリート型枠を外す(脱型)の工事の様子をご紹介してみようと思います。

なかなか、公園やガーデンといった土木工事の施工段階の様子を細かく見れる機会もないと思いますので、

是非ご覧いただければと思います。

【 2023年11月2日(木)】

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この日(2023年11月2日)は、県立奈良高等学校の創立100周年記念(創立記念日は11月1日)の公式行事で

卒業生(先輩)で、俳優をされている加藤雅也さんが記念講演をされる日で、私も中庭の設計者として、

ご招待いただきました。

式典に先立って、中庭現場にて、状況の確認、もろもろの打ち合わせを行いました。

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本日の工事は、中庭の北側半分のスタンド・ベンチ(観客席)の型枠に、コンクリートを流し込む(打設)作業が

行われることになっています。

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先日現場を見に来た時は、オレンジ色の型枠パネルを、職人さんたちが組み立てておられましたが、

その作業はすっかり終わり、その中にコンクリートを打設するための準備が終わっていました。

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コンクリートを型枠の中に流し込んだ際に、その勢いで型枠が変形しないように、短い鉄骨が組まれ、

とても厳つい雰囲気になっていました。

これも楕円形という特徴的なフォルムをしていることが、多分に影響していると思います。

普段の建築の現場では、なかなかお目にかかることが出来ない、非常に珍しい型枠です。

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今回の創立100周年記念の中庭整備プロジェクトは、卒業生や関係者、その他、奈良高校を応援して下さる

方々からの寄付金でつくられますが、工事費が昨今の建設費高騰の中、当初予算に納まらなかったこともあり、

一部実現できなくなってしまった工事内容があります。

それが夜間の照明計画です。

照明については、将来的に余裕ができれば設置できるよう、先行配管のみ実施することになっています。

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スタンド・ベンチにも、夜間の足元灯などを設置できるよう、照明器具を後付けできるよう、照明BOXを

予めコンクリートの中に埋め込むように設計しています。

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ベンチは、石やタイルなどの仕上げはせず、撥水系の白い塗装をして仕上げることになっています。

そのため、ところどころにコンクリートの伸縮目地や、角部分にテーパーと呼ばれる隅切りのようなものを

つくるべく、型枠の段階から、桟木が設置されています。

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こちらは、かつてこの中庭にあった時計塔を復活させる際の基礎になります。

先日、設置位置は決めているので、その場所に基礎をつくっていただいています。

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いよいよスタンド・ベンチにコンクリートを打設する作業が始まりました。

前々回の土留め擁壁のコンクリートを打設する際には、コンクリートミキサー車は中庭に入れず、

校舎の外側からパイプを使って、コンクリートを圧送していましたが、今回は中庭のコンクリートミキサー車を

入れて、小分けしながら、スタンド・ベンチのコンクリートを打設することになったそうです。

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コンクリートをバスケットに入れて、それをユンボで吊り上げて、型枠の近くまで運んでいきます。

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型枠の上に来たところで、下の口を開けて、コンクリートを型枠の中に流し込みます。

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型枠にコンクリートを流し込むと同時に、バイブレーターという機械をコンクリートの中に突っ込んで、

コンクリートを振動させます。

コンクリート中の空気を逃がし、密実なコンクリートを打つための作業手順です。

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職人さんが、打設したコンクリートの上面をコテできれいに均し、仕上げていきます。

また現場監督さんも助太刀されて、コンクリート型枠の側面を金づちで小さくたたきながら、

コンクリート内に小さな気泡が出来ないようにしておられました。

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長い楕円形のスタンド・ベンチですが、あっという間に、型枠の中にコンクリートが打ち込まれていきます。

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コテできれいに仕上げられた、スタンド・ベンチの上面です。

塗装仕上げになるため、このコンクリートの仕上がりが、仕上げに大きな影響を与えるため、

非常に重要な作業になります。

右側2段のベンチの間が空いているのは、ちょうどそこに階段がくることになっているからです。

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重いコンクリートが打ち込まれても、鉄骨で補強された型枠はびくともしませんでした!

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南棟側の4列のスタンド・ベンチは、一気にコンクリートで固められました。

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時計塔の基礎も、コンクリートが打ち込まれました。

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北棟(本館)から、南棟方向を見たアングル。

出来上がったベンチに座ると、こんな風に風景が広がるはずです。

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体育館での、創立100周年記念講演を聞いたあと、再度、現場を見に行きました。

この日の工事はすでに完了していて、すっきり片付いていました。

北側半分のスタンド・ベンチ(観客席)も、無事、コンクリート打設完了したようです。

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東端の側面が見える部分です。

コンクリートが打ち込まれて、何だか量感を感じるようになりました。

迫力が出たように思うのは、気のせいでしょうか?

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型枠補強の鉄骨が楕円形に並び、その型枠の中にコンクリートが密実に打ち込まれました。

さらにリアリティが増したように感じました。

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昇降口の向かって右側(サウス・ウィング)のスタンド・ベンチは、まだ基礎の状態です。

今回、コンクリートを打設した左側(ノース・ウィング)のスタンド・ベンチのコンクリートが硬化したのち、

型枠をばらし、その型枠を使って、サウス・ウィングのスタンド・ベンチの型枠を組むことになっています。

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次回、来た時には、このサウス・ウィングの方にもベンチが出来ていることでしょう。

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この日の作業終わりの様子。

スタンド・ベンチの半分が、コンクリート打設終了したところまでです。

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中庭の中央スペースには、U字側溝用のコンクリート二次製品が、すでに搬入されています。

スタンド・ベンチに続いて、楕円形にU字溝が設置される予定です。

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こちらは、中庭の西側出入口付近。

いつも写真を撮影している西棟2階の図書館へとアプローチできる(現在は使われていませんが。)屋外階段が

あります。

その手前の植栽スペース(ロックガーデン)エリアにも、大量の土が搬入されています。

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その屋外鉄骨階段から見た、中庭の全景。

スタンド・ベンチの形状がより明確になってきました。

中庭全体について、設計段階でイメージしていたスケール感より、ずっといい感じです。

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こちらが、中庭の完成予想図面。

だいぶ図面と実物の感じが照らし合わせても分かるようになってきました。

【 2023年11月3日(金)】

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この日は現場には行けなかったのですが、現場監督のTさんが、校舎の上層階からの撮影した写真を

送ってくれました。

こちらは、西棟から東棟(生徒の昇降口方向)を見たアングルです。

ベンチの非対称感がとてもよく分かりますね。

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こちらは、北西角からのアングル。

左側に多くのスタンド・ベンチが見えます。

この辺りは、冬でも日照が望める暖かいエリアです。

天気の良い日は、このスタンド・ベンチに座って、お弁当を食べる学生のイメージが湧いてきます。

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こちらは、南西角からのアングル。

手前側(写真右側)は、4階建ての南棟があるため、かなり日陰のゾーンになります。

こちらには、スタンド・ベンチは少な目に配置し、植栽帯(ロックガーデン)を広めにとっています。

日照条件などを考慮した非対称(アンシンメトリー)なデザインとしています。


【 2023年11月10日(金)】

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この日は、中庭の「羅針盤」(石板プレート)制作の学生ワークショップの第3回目を開催するために

学校に来ました。

珍しく小雨の降る一日で、工事もこの日は小休止のようでした。

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よく見ると、先日コンクリートを打設した、北側半分のスタンド・ベンチの型枠が外されて(脱型)いました。

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スタンド・ベンチに近寄ってみます。

型枠が外れたため、前より少し小さく見えますが、コンクリートの塊感はとてもよく出ています。

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反対側から見たところ、楕円形の美しいラインがちゃんと出ています。

現場が、かなりの精度で仕上げてくれていますので、とてもありがたいです。

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スタンド・ベンチとスタンド・ベンチの間です。

今は結構段差があるように見えますが、このあと、勾配に沿って土を入れ、植物も植えますので、

だいぶ印象は変わると思います。

コテで仕上げてもらった上面も、ことの他、きれいに仕上がっていると思います。

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スタンド・ベンチの一列目の足元には、コンクリート二次製品のU字側溝も、楕円形に並べられています。

スタンドベンチのある部分には、グレーチングが設置される予定です。

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ところどころ、ガムテープで目張りのようにしている部分が見えるかと思いますが、

そこは予め打ち込んだ照明ボックスが入る部分です。

今回の計画では、予算の関係上、照明計画の実施まではいきませんでしたが、いずれ照明器具を設置できるよう

準備しているのです。

この足元灯が点灯すれば、夜間でも中庭を活用しやすくなります。

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昇降口側のスタンド・ベンチが4列で並ぶところ。

重力式擁壁との関係を気にしていましたが、大丈夫そうです。

足元に向かって切れ込む、台形型のスタンド・ベンチの断面形状もとてもよく分かりますね。

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ノース・ウィング(北側半分)のスタンド・ベンチが完成したので、次は南半分、サウス・ウィングの

スタンド・ベンチの施工に取り掛かっています。

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昇降口から、中庭正面(プラトン・アリストテレス立像が置かれる場所)方向を見たところです。

両側のスタンドベンチも以外に視界を遮らず、むしろ、コロッセオに入って来た時のような高揚感を

演出してくれています。

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ノース・ウィングのスタンド・ベンチは、すでに型枠も設置され、コンクリートも打設済のようです。

北側のスタンド・ベンチをつくった際の型枠を再利用して施工してもらっています。

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サウス・ウィングの4列スタンド・ベンチの様子。

南北合わせて、結構な長さがあるので、そこそこ収容人数も確保できるのではないかと考えています。

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北棟(本館)から、南棟方向を見たところ。

この日はあいにくの小雨模様だったため、中庭の中央はまだ土のままでぬかるんでいます。

次の工程としては、この中央広場(ステージ)にタイルを貼っていくことになります。

タイルが貼り終われば、ドライな空間になって、多少の雨でも水浸しで使えないということはなくなります。

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中庭南西角の屋外階段からの眺めです。

この写真を見ていただくと、すり鉢状にスタンド・ベンチが、中庭中央広場を取り囲んでいる様子が

よく分かっていただけると思います。

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コンクリートのスタンド・ベンチ以外の土の部分は、植栽スペースやロックガーデンになります。

もうすぐしたら、待望の植栽工事へとステージが移っていきます。

ますますリアリティが増していく、県立奈良高等学校の創立100周年記念でつくる中庭プロジェクト、

乞うご期待ください!

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【 奈良高校・創立100周年記念事業について 】

今回の奈良高校・創立100周年記念の中庭プロジェクトは、50年前の創立50周年の時と同じく、

OBOG(卒業生)をはじめとした、様々な方々の寄付によって創られる事業になります。

「奈良高校 100周年記念特設サイト」も、2023年9月1日よりオープンしております。

  [ 奈良高校 100周年記念特設サイト] は、こちら ⇒ 奈良高校 創立100周年 (narahs100th.jp)

 
 創立100周年を機に、ますます発展する奈良高校へご支援いただけましたら幸いです。   

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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