2025.12.23 / 緑化建築物
2025年、今年も残すところあと1週間ほどになりました。
今年も、僕のこのガーデンブログをご覧いただき、ありがとうございます。
さて、この12月、珍しく、仕事で海外(台湾)に視察の旅に出掛けました。
台湾の首都・台北で開催された建材展の視察と、台湾のタイルメーカーの招待で、そのタイルのメーカー工場を
視察させていただく機会を得ました。
それ以外にも時間の許す限り、台湾(台北・台中の2つの都市)の新しい建築や、台湾の伝統的な庭も
見に行くことが出来ました。
今回は、そんな台湾視察で目にした、印象的な建築(および植栽風景)について、紹介したいと思います。
こちら↑が、その印象的な建築(建物)で、台北の金融街・信義区にあり、
台北のランドマークでもある超高層ビル「台北101」の近くに位置する
高級分譲マンション「陶朱隠園」(タオヂュインユェン)です。
実は、この建物、一般の方が見る「旅行ガイドブック」にも載っている建物で、
台北のランドマーク超高層ビル「台北101」(高さ約500m、地上101階)の近くに
あることもあって、その独特のフォルムから観光客の目に留まるんでしょうね。
僕も台湾へ行くことが決まってから、「台湾で見るべき建築」を調べている時に
ガイドブックに、この建物が紹介されていたのがきっかけで初めて知りました。
こちら↑の写真は、大通りから見える風景で、まるで富士山のような
独特のフォルムをしています。
これが、見る角度によって全く違う見え方をするんです。
少し近寄って、建物の下から見上げると、その異様さが際立ちます。
この建物は、高層芸術住宅「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」といい、
地上21階建て、地下4階、総戸数40戸の超高級分譲マンションらしいのです。
1住戸の居住部分の広さは、約600㎡もあり、1戸の分譲価格が、
販売当初80億円~140億円という、耳を疑うような高額な販売価格帯だった
ようです。
高層階を望遠レンズで撮ってみました。
バルコニーの軒裏まで金属製のパネルが張り巡らされ、とてもメカニカルな
外観をしています。
各フロアごとに少しづつずれていくバルコニーには緑化スペースが設けられ、
それが、垂直につながる森(バーティカル・フォレスト)を構成しているのが
分かります。
さらに、バルコニー部分に寄って撮影してみました。
ちょうど、バルコニーのガラス手すりに太陽の光が反射して、
まるでCGパースのように、現実か虚構か分からないような感じに見えました。
それほど現実離れした、細部まで、非常に美しい仕上がりです。
ネットで調べると、2018年に竣工しているらしいので、
それからもう7年も経過している割に、外部はとても美しく保たれています。
もちろん、販売価格に見合う品質で維持管理もされているようなので、
(管理費が月額70万円という話もネットで散見されます。)
竣工当時のような美しさがキープされているのもうなずけます。
この「陶朱隠園」の基本設計は、フランス・パリを拠点にするベルギーの建築家ヴィンセント・カレボー氏
(Vincent Callebaut)によるもので、「The tree of city(都市の木)」をコンセプトに、
人のDNAからヒントを得て、螺旋状に複雑に繋がる遺伝子をモチーフに設計されており、
各フロアが4.5度ずつ回転しながら、上の階の床が下の階にせり出すような独特のフォルムをしています。
もちろん住戸内部を見ることはできませんので、あくまでのネット情報ではありますが、
中央のガラスコアの両側に1戸づつ配置された各住戸の玄関扉を開くと、135度のワイドな眺望が広がっている
そうです。
また、40戸の建物に対して、7基のエレベーターが設けられ、全戸で、乗用車を玄関先まで横付けすることが
できるようになっているようです。
緊急時には、救急車も各戸まで乗り入れることができるとのことで、高級住宅の極みのような仕様です。
ちなみに、各住戸へEVで横付けできる専用駐車場のほか、地下の駐車場も含めて、
40戸に対して238台分の駐車場も設けられているとのことです。(1住戸につき約6台分の駐車場が完備!)
日本の高額タワーマンションでも、なかなかこれだけのハイスペックな設備はないのではないでしょうか?
どのアングルで見るかによって、これだけ表情(風景)が変わる建物も、なかなかないのではないでしょうか?
こちら↑は、ほぼ真下から住戸を見上げたアングルです。
各フロアが4.5°づつ回転しながら、下の住戸の上にせり出している様子が良く分かると思います。
少し専門的になりますが、構造的には、中央コア(円柱形のガラスシリンダー)の両サイドに、
「メガフラム」と呼ばれる螺旋状の鉄骨が巻き付くように配置されているようです。
施工も非常に高難度で、台北のランドマーク「台北101」を施工した、日本の総合建設会社(ゼネコン)の熊谷組と
現地のゼネコンのJV(ジョイントベンチャー)で行っているそうです。
少し角度を変えると、また印象が違って見えます。
バルコニーの軒裏全体が金属パネルで覆われ、建物全体がメカ(機械)のような、
未来的なデザインです。
縦位置でも写真を撮ってみました。
ねじれながら、空に向かって上昇していくようなイメージの外観です。
建物の足元にも多くの植栽が施され、メカニカルな外観の一部に
リズミカルに設けられた植栽スペースが、未来的でありながら、
自然との共生を想起させます。
この建物は、台北市の「エコシンボル」となることを目指しており、
都市部での自然との共生を図り、環境重視型の建築によりブランド力を高める
戦略をとっているとのことです。
建物自体が、プロモーションとなっているとも言えるようです。

ちなみに、僕は日本の大阪にある、大阪ガスさんが建設・運営・管理を
されている環境共生型の実験集合住宅「NEXT21」の居住実験30周年記念事業に
ご縁があって、少し関わらせていただきました。
※ こちらのディノスさんのブログでも、実験集合住宅「NEXT21」について
いくつか記事を書かせていただいていますので、ご興味のある方はそちらも
ご覧ください。

大阪ガス・実験集合住宅「NEXT21」は、スケルトン・インフィルという、躯体と内装を分離した建築システムで
住まい方の可変性を追求しながら、屋上緑化や壁面緑化などの建築緑化にも積極的に取り組み、
大阪ガスの社員が実際に居住しながら、様々な実験データを取っている、世界的にも珍しい建築物です。

共用廊下や屋上庭園などに様々な緑化がされ、都市の中の緑化の在り方を
提言した、一つの好例となっています。
今回、台湾・台北で見たこの「陶朱隠園」は、超高級分譲マンションで、
建築システムは、NEXT21のようなフレキシブルな可変性はなく、
むしろ特殊解のような建築ですが、同じように都市居住での環境共生・
都市緑化という点では共通するものがあるのかなと思います。
「陶朱隠園」の周りをぐるっと一周すると、エントランスと思しき場所がありました。
もちろん高度なセキュリティで守られているため、内部は全くうかがえませんが、
超高級分譲マンションならではの空気感がありました。
エントランスゲートを真正面から見たところ。
花崗岩の塊が、建物と同様にねじれながらアーチ状の屋根を構成しています。
ゲートの奥にも豊かなガーデンが広がっていることを想起させます。
どんなガーデンなのか、画像などを見てみたい気がしますが、
どこを探してきっとでてこないでしょうね。
エントランスから、建物を見上げたアングルです。
シンメトリックな位置に権威的なエントランスを設けるのではなく、
側面からひっそりとアプローチさせるあたりも、「陶朱隠園」と名付けられた
ように、「隠れ家」的な演出なのかもしれません。
最後に、アップでもう少し。
波打つような曲線のバルコニーラインが美しいです。
メカニックなデザインですが、ところどころに「ゆらぎ」のような優しいデザインがされているのも素敵です。
曲面のガラス手すりからはみ出すように、植栽が育っています。
台湾は亜熱帯気候帯なので、山並みを見ていて気付いたのですが、常緑樹が優勢なように思います。
ここでも、常緑樹が季節を問わず都市に緑を与えているように感じました。
いかがでしたでしょうか?、台湾・台北の中心街にある、高層芸術住宅「陶朱隠園(タオヂュインユェン)」。
台湾で見た建築の中でも、異彩を放つこの建物は特に印象に残った建築でした。
台湾に行かれる方は、是非、実物を一度見に行かれてはどうでしょう?
いろんなことを感じさせてくれる建築です。
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