2025.12.25 / 訪ねてみたい名庭園
今年2025年も、あとわずか。
今回は、今年最後のブログ記事です。
前回のブログでレポート記事を書かせていただいた「2025年12月・台湾への旅レポート」の続編で、
前回のモダン建築とはある意味対極にあたる、台湾に現存する古い歴史のある庭園「林本源園邸」を
ご紹介したいと思います。
林本源園邸は、台湾の首都・台北市に隣接する新北市板橋区にある、台湾五大豪族の1つ板橋林本源(板橋林家)に
よって建てられた庭「園」(板橋林家花園)と「邸」宅の総称を指します。
中国本土・蘇州の「留園」を模した設計で、台湾に現存する庭園および建築としては、最も保存状態が良好である
とされ、台湾政府から、「国定古蹟」に指定されています。
ずいぶん昔に、中国・蘇州の伝統的な庭(たぶん「留園」だったと思います。)を見に行ったことがありますので、
今回も台湾の伝統的なガーデンを是非見てみたいと思い、訪れました。
前の予定が押して、ここに到着したのが16時半頃。
季節は12月で、既に薄暗くなってきていて、17時に閉園となるため、駆け足で園内を見て回りました。
こちらは、交差点に面したガーデンへの出入口付近です。
入園料は、80元(日本円で、約400円)。日本語のパンフレットもありました。
「林本源園邸」は、100年以上の歴史を持ち、清時代には林家の貸家だったらしく、
その後、林国華、林国芳兄弟により拡張され、林本源一族の住居となったようです。
現在は、国定古蹟として3度の修復を経て、新北市政府文化局の管理下で庭園の運営が行われているようです。
市政府が管理する庭園「林家花園」は、約12,000㎡の広さを持ち平方メートル。
花園は来青閣、月波水榭、定静堂といった多数の家屋と人工山水で構成されており、
台湾四大名園のひとつと言われています。
実は、実際に園内に入ったのは、裏口のようなところからでした。
こちらは、その裏口?を入ってすぐの場所に見えた建物。
あとで調べると、「定静堂」という、園内で最大の面積を有する四合院式建築の正面出入口かと思います。
昔、林家が大規模な宴会を催すのに使われ、100人以上を収容できる広さがあり、
内部はほとんど仕切りのない建物です。
赤い瓦屋根と外壁面にも赤いテラコッタかレンガブロックのようなものが使われています。
日本の古い建物とはずいぶん趣きが違って、ベトナムなどの東南アジアの雰囲気を強く感じました。
慌てていたためか、パンフレットに書かれた順路とは反対廻りに回ってしまいました。
(後で気づいたことですが。)
奥に見えているのが、一枚上の写真の定静堂の正面出入口あたりです。
その横に、小さな水庭が作られていました。
更に奥へと進み、定静堂方向を振り返ったアングルです。
中国の庭によく見られる、壁の真ん中に丸い穴が切り抜かれ、空間を区分しながらつなげるという手法が
取られているのが分かります。
こちらは、「月波水榭」と呼ばれる、定静堂東側に面する池のそばにある眺望台です。
建物の平面形は一対の菱形で構成されていて、橋で岸とも繋がっています。
アングルを変えてもう一枚。
東屋のある台の上は、月を観賞をする場所らしく、水面に映る月影から「月波水榭」と名付けられています。
こちらは、「月波水榭」から次の建物「香玉簃」(奥に見える白壁の建物)との間の広いガーデンスペース。
「香玉簃」は、約20坪ほどの花を観賞するための場所らしく、
「簃」は楼閣のそばにある小屋という意味だそうです。
花畑があり、詩を吟じる際に多用され、林家の婦人が集う場所だったとも言われています。
こちらの写真は、「香玉簃」から「月波水榭」を振り返ったアングルです。
「月波水榭」の前には、樹種は分かりませんでしたが、
大きな常緑樹が枝を広げていました。
こちらの写真は、「香玉簃」へと続く回廊です。
日本の寺社仏閣の朱塗りとはまた違う、独特の赤で塗られた柱と、
床面のテラコッタタイル、吊り下げ垂れた提灯に特徴があります。
続いて、「香玉簃」からつながる建物「来青閣」につながる回廊です。
壁には四角に穿たれた開口部があり、奥にある建物「来青閣」をチラ見せしています。
近寄ってみると、こんな感じ。中国式庭園では、このような壁に穴をあけて
額縁効果で奥の風景を見せるとか、期待感を煽るような演出がよくされています。
こちらは、「来青閣」を取り囲むように配置された回廊。
台湾は、かなり緯度が低く、亜熱帯気候のため、雨が多いと聞きます。
このような屋根付きの回廊が多く張り巡らされているのも、
その雨対策なのだろうと思います。
そして、こちらがその回廊の床。
使い込まれて磨きがかかったようなテラコッタタイル(ブロック?かな)が
とても印象的でした。
回廊の右側の塀に囲まれた建物が「来青閣」。
こちらの塀には、磁器でつくられた笠木があしらわれています。
そして、こちらが「来青閣」。
パンフレットによると、園内で最高かつ最も華麗な建物で、昔は来賓の招待所、宿泊所として使われたそうです。
かつては、「来青閣」の楼上に上れば、四方の眺望が良く、青山緑野が見渡せたため、
「来青」の名前が付いたと言われています。
そして、次のコーナーが、「方鑑斎」と呼ばれる、池を囲んで建物が配置されたエリアです。
この庭園の中では、一番の特徴的なスポットと言える場所ではないかと思います。
「方鑑斎」は、当時、読書の場であり、普段から文人たちが吟詠する場所であったそうです。
建物の前に方形の池があり、水面が鏡のようであるため、「方鑑」と称されたようです。
池の周りに、戯亭、鑑賞台、遊廊、造り山小橋などの建築が配置されています。
「方鑑斎」は、「方」形の池に張り出した舞台があり、来賓が周囲から演技を「観劇」できることから
この名が付いたとされています。
池の水面に張り出した劇亭(ステージ)と、看亭(客席)は、
水を隔てて対景(中国式庭園でよく使われる水面に映る影も意識した表現方法)を成し、
池の両サイドに拱廊(アーケード)付きの回廊で取り囲まれていることで、
音響面でも効果的な配置となっており、平時には静寂さと清雅さを醸し出し、
林家花園で最も詩的な一角となっているそうです。
こちらは、池の側面に設けられた岩を固めて作られた、ある種つくられた風景で、
手前には、池を横断する人工的な橋も作られています。
アングルを変えてもう一枚。
水墨画のような「山紫水明」の風景を表現しているように思いました。
岩の前につくられた石造の橋は、人が一人通れるほどの狭い通路です。
現在は、老朽化が進んでいるためか、残念ながら通行できないようです。
こちらの写真は、看亭(客席)側から、水を隔てて反対側の劇亭(ステージ)を見たアングルです。
劇亭に被さるように枝を広げている柳が、とても印象的な風景をつくっています。
ただ、劇亭(ステージ)の後方は、現在は集合住宅がかなり近接して建っていて
洗濯物が干されたり、生活感が漂う風景となっているのが、少々残念でした。
日本では、借景も含めた風景を重視されることが多いので、
著名な史跡では、このようなことになりにくいとは思いますが・・・。
こちらは、「方鑑斎」を出てたオープンスペースで、奥に「来青閣」が見えています。
シーンとシーンの合間には、このような坪庭のような空間が置かれています。
改めて、「来青閣」の建物が、威風堂々と見えます。
手前の小壁で囲われた空間も中国的な設えとなっています。
引きで見ると、このような大きな木が鎮座しています。
幹に根が張り付いて独特の景観を作っています。
いかがでしたでしょうか?
台湾で一番保存状態が良いと言われている伝統的な庭園を、駆け足で巡ってみました。
中国本国の影響を多大に受けた庭園は、日本庭園たイングリッシュガーデンなどとは全く異なる
独自の美意識に基づいてデザインされていました。
良い刺激を受けました。
台湾へ行かれる際には、是非、こちらの庭園にも足を伸ばされることをお勧めします。
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