7月も終盤で、間もなく8月になりますが、相変わらず、暑い日が続きます。
さて、今回は、少し前(昨年の春)に、九州・長崎県にある、「三原庭園」を訪れたのですが、
そのレポート記事を書かせていただこうと思います。
以前、こちらのブログ記事でも書かせていただきましたが、2018年のチェルシーフラワーショーに、
世界的ガーデンデザイナーの石原和幸氏のサポートメンバーとして参加させていただいたことがあるのですが、
※ 「チェルシーフラワーショー2018・レポート記事」は、こちら → ※
その石原和幸氏の生まれ故郷の長崎で製作し続けているオープンガーデン(一般公開されている庭)が、
「三原庭園」です。

「三原庭園」には和・洋と2つの代表的な庭の他に、水景庭園、風景盆栽などの様々な趣向のガーデンも作られ、
加えて、レストランカフェ、Bar、雑貨店、植物の販売コーナーなど、様々な施設が併設されています。
かなりの枚数の写真を撮ってきたので、その1(前編)と、その2(後編)の2回に分けて、レポートしたいと
思います。
まず第1回め(その1/前編)では、石原和幸氏の代名詞でもある「和風庭園」と、その和風庭園と建物を介して
表裏一体となっている「洋風ガーデン」を紹介したいと思います。

長崎の急斜面に張り付く住宅街を抜けたところに、青い空が広がる場所が「三原庭園」の始まりの場所です。
ここが、道路に面して設けられた駐車場です。(実は、建物の屋根にあたる場所なのですが。)
結構、細い道を抜けてようやくたどり着くのですが、もっと手前にも駐車場が設けられているのですが、
すぐそばまで、車で行きたい場合は、この駐車場に停めることになります。

駐車場の前をさらに奥へ行くと、カフェや植物の販売コーナー、その他
様々なモデルガーデンが作られています。

大きくうねるような松の盆栽が植えられた黒い植栽枡が置かれています。
その黒い盆栽の枡の下に、赤い花のバニバナトキワマンサクや、
赤い葉のノムラモミジが植えられたコーナーがあり、
その横に小さな階段が設けられていて、そこを下っていくようにと促されます。

細い階段を下った場所に、「三原庭園」と書かれた門(ゲート)が見えてきます。
この先が、「和風庭園」と呼ばれるエリアになります。

ゲートをくぐって、中に入っていくと、水景があり、石張りの細い道が奥へ奥へとつながっています。
緑や赤い葉の植栽の奥には、青い空が広がっていました。

こちらは、入って来たゲート方向を振り返ったアングルです。
中央奥に黒い建物が見えているかと思いますが、実は、その建物の屋根の部分が、
先ほど冒頭で紹介した駐車場になっています。
和風庭園の入口を示す大きな風景盆栽(松の盆栽)も見えています。
フラットな敷地の少ない長崎の斜面地で、駐車場を確保する立体的な工夫がされています。

その駐車場を屋根に乗せた黒い建物に近づいてみます。
水景とともに、様々な樹木が密集して植栽されています。

そのひとつ、建物の際に植えられていたのが、こちらの赤い花のツバキ。
訪れた時、ちょうど満開でした。

建物の際にさらに近づいて見ると、灯篭のほかに、龍の置物や狛犬の置物(陶器製)などが、
さりげなく飾られています。

こちらの写真は、ひとつ上の写真の左端に置かれた灯篭の足元の様子。
石原さんと言えば、チェルシーフラワーショーで、何度もゴールドメダルを受賞され、
エリザベス女王から「緑の魔術師」と称され、チェルシーフラワーショーでつくる石原さんの庭では、
「コケ(苔)」を多用しておられ、その庭づくりの手法から「モスマン(苔男)」とも称されています。
短期間展示のショーガーデンでは苔をグランドカバーとして多用する手法を取られていますが、
常設のガーデンでは、日常的なメンテナンスなどのことも考慮され、ほとんど苔は使われていませんでした。
代わりに、常緑でメンテナンスもほぼいらず、丈夫なユキノシタなどを、グランドカバープランツとして
使われている点も、実際、現場を見に行って分かったことでした。

再度振り返って、今度は、和風庭園の奥へと進んで行きます。
ここで印象的なのは、やはり赤い葉の「ノムラモミジ」でしょう。
秋の紅葉時でもないのに、鮮やかな赤い葉を茂られているノムラモミジは、庭のアクセントになって、
緑一色の庭とは明らかにことなる風景を形作っています。

このアングルも素敵でした。
水景の奥右側に斜面状の緑の塊があり、山のような風景を作っています。
水景の中には、大きな岩が据えられ、その手前(画面左端)には、瓦の材料で作った龍の置物が置かれています。
とても動きのある構成を感じます。

少し分かりにくいですが、こちらの写真の左側に、龍の置物の全景が見えます。

カメラのレンズを広角から望遠に切り替えて、ズームして風景を圧縮して撮影してみました。
手前の大きな石、その右側に風景盆栽のマツ、その向こうに赤いノムラモミジ、緑のモミジ、
そして最奥に黒い和風建物の屋根と軒がチラッと見えています。
一枚の絵の中に、様々な要素を圧縮して取り込んだような構成が素晴らしいと感じました。

右奥の斜面の部分にも、これでもかと思うほどたくさんの樹木が、まるで実際の山の中に生えているように
密に植えられています。
このあたりの高密植手法も、石原さんならではと思いました。
通常なら、樹々が大きくなることを想定して、多少の樹木間の空間を取って植えるところですが、
石原さんの場合、植えた時からすでに、山のような風景をつくるような手法を取られています。
ひょっとしたら、チェルシーフラワーショーでの庭づくりと同様、樹木があまり大きくならない様に
鉢植えのまま、斜面に配置しているのかもしれないなと思いました。

こちらは、水景と石畳の間のニッチスペースに植栽されたグランドカバープランツ。
こんなところにも、細かい作り込みを発見できます。

こちらも、水景と石畳の園路との間につくられた植栽スペースで、風景盆栽が植栽されています。
ここもおそらく、鉢のまま沈めて、その周りのグランドカバーで装飾しているのではないかと推察します。

さらに奥へ進むと、正面に、もう一つの建物が見えてきました。
ここの風景も、石原さんならではの見せ方で、建物の左右から、樹木の枝が伸びだして、
美しいラインを見せています。
手前に赤いノムラモミジ、奥に鮮やかな新緑のモミジの枝が伸びだしている感覚がとても素敵に思います。

和風庭園の中で、ひと際目立っているのが、こちらの赤い葉のノムラモミジ。
地際ギリギリに葉が展開し、樹高も敢えて低く抑えられていると思います。

近寄ってみると、とても存在感のある姿で、特筆すべきは、その美しい赤い葉です。

赤いノムラモミジの反対側、斜面のエリアです。
手前に水景、そして一気に登っていく斜面にマツやモミジなどの植栽が、圧縮陳列のように
高密度で植栽されています。

その部分を園路側から真正面に見たのが、こちらのアングル。
上方に、道路のガードレールが見えていると思いますが、急斜面を活かした立体的な演出です。
様々な樹木の間に灯篭が置かれ、その横には、御影石を突き出して、小さな滝が作られています。

こちらが、その滝のアップ。
両側に小さな松を配置し、その隙間から水を水景に注ぎ込んでいます。
このあたりも、石原さんのチェルシーフラワーショーでの滝のつくり方と共通するデザインかと思います。

水景を抜けると、建物前の広場のような場所に出ます。
この広場の中央には、形の美しいモミジが、まるでオブジェのように植えられていました。
その手前に石のベンチが作られ、今歩いてきた水景方向を眺めることができるように演出されています。

その広場のベンチから、横を見たのがこちらのアングル。
正面に白いしっくい壁が見えていますが、その奥は斜面の絶壁になります。

石原さんの和風庭園では、あまり花の咲く樹木や草は使われないイメージで、最小限のものだけが厳選されて
配置されています。
ここれは、ピンクの花が咲くシャクナゲ(ちょうど満開でした。)と、足元には、青い花穂を上げている宿根草、
アジュガがグランドカバーとして使われていました。

アングルを変えて、歩いてきた方向を振り返ってみます。
細かい葉のモミジ(赤のノムラモミジと緑のヤマモミジ)や、太い丸葉のシャクナゲ、幹を倒して配置した
サルスベリ?や、まっすぐ空に向かって枝を伸ばす常緑樹など、葉の色や形、樹形など多彩な組み合わせが
計算されて絶妙に配置されていることが、とてもよく分かります。

こちらは、建物の一角、黒く塗られた縦格子の向こうに、白い漆喰で塗り固められた壁面があります。
その壁面に、石原さんのトレードマークとなる「渦巻き模様」がデザインされていました。
この「渦巻き模様」、石原さんによると、石原さんの原風景からインスピレーションされた湧き水「源」を
デザインしたものらしく、石原さんがデザインしたガーデンには、よく見られるアイテムです。

こちらの建物の際の日陰ゾーンにも、先ほど紹介したのと同じ、常緑のユキノシタが、グランドカバーとして
植栽されていました。
他にも、斑入りのツワブキやアジュガなど、和洋折衷ですが、うまく足元(地面)を常緑の宿根草でデザイン
されています。

こちらは、和風庭園の最奥にある建物。
その建物の手前にも水景がデザインされています。

建物に寄っていくと、見慣れた風景が・・・。
2018年のチェルシーフラワーショーでつくられた「お・も・て・な・しの庭」でも使われた
鉄平石を貼った階段が黒い建物へと誘ってくれます。

階段を登りながら横をみると、水景があり、そこにほぼ真横に倒した木が見えています。
これも、2018年のチェルシーフラワーショーで見た、「エアー」と呼ばれる手法で、
鉢植えのまま木を横に倒して植栽しているのではないかと推測しています。

こちらが、建物への階段の詳細。
石原さん好みの階段のデザインかと思います。

階段を登り切ったところから、見返したアングルです。

こちらが、建物のエントランス付近から見える風景。
写真左下あたりに、水景(池)に注ぐ滝(壁泉)が設けられています。

常に水が流れ込んでいるので、池の水面には、波紋が現れ、それも風景のひとつとなっています。

こちらが、建物の内部。
これも、チェルシーフラワーショーで、いつも石原さんがつくる茶室的な空間です。

床の間があり、畳の上には丸い円卓が置かれています。
チェルシーフラワーでつくられる庭では、いつも水景の中にアヤメが植えられます。
常設のこの三原庭園では、水景の中にアヤメは植えられていませんでしたが、
代わりに、アヤメの絵が展示されていました。

こちらが、茶室の窓から見える水景。
眼下の池に張り出すように、様々な樹々が枝を伸ばしている様子が分かります。

アングルを変えてもう一枚。
手前の手すりも、いい仕事をしています。
この茶室から、和風庭園の全景を眺めることができます。

目線を上げると、こんな風に見えます。
様々な樹々が葉の色、葉形、樹形を変えながら、ひとつの空間に調和して成立しているのが分かります。

茶室を出て、再びガーデンのレベルを降りてみます。
入って来た入口方向を見たアングルです。
このアングルだと、新緑のモミジの中に、先ほど見てきた低い位置に赤いノムラモミジが
効果的に配置されているのがよく分かります。

少し引くと、今度は画面の両側から、赤いノムラモミジが枝を伸ばし、一枚上の写真の風景とは
がらりと印象が変わります。

こちらは、先ほど入った茶室へのアプローチ。
右側が茶室へ上る階段ですが、よく見ると、その左側の白い漆喰の壁面に、開口部が開けられているのが
分かりますでしょうか?

近づいてみると、こんな感じ。
赤いノムラモミジの枝の下をくぐって、庭園の外へ出る、
もう一つの出口が設けられています。

出入口(勝手口?)のアップです。
新緑のヤマモミジと赤い葉のノムラモミジのトンネルをくぐって
外へ出られます。

こちらは、出入口を一旦出たところから、和風庭園方向を見たアングル。

ちょうどゲート(門)のところから和風庭園を見ると、
もみじのトンネルの下、小径を抜けて中に入っていく演出です。

完全にゲート(門)を出ると、こんな感じです。
こちらは、三原庭園の他の施設側の出入口(勝手口?)となっていて、
こちらからも和風庭園に入ることができるようになっています。

その勝手口?側から見る、和風庭園の全景です。
このアングルで見ると、この庭園が急斜面を使って作られていることがよく分かります。
先ほど紹介した写真の中に、シャクナゲが植えられている部分の奥に見えていた白い漆喰の壁が、
実はこの斜面ギリギリに建てられた塀だったのです。

一枚上の写真の階段を上がって、和風庭園の上の道路から、和風庭園を見下ろして見たのがこちらのアングル。
右側に見ている黒い屋根の建物が、茶室です。
庭園の向こうには、急こう配の斜面に張り付く様に建てられた長崎の街が見えています。

こちらは、茶室の上あたりから、和風庭園に入って来た方向を見たアングルです。
奥にチラッと見えている建物の屋根が、駐車場となっている部分です。

こちらは、和風庭園の中央あたりを、上の道路から見下ろしたアングルです。
遠くに、長崎の街が広がっているのが分かります。

そして、こちらは、冒頭で、駐車場横の和風庭園への入口を知らせる、風景盆栽です。
建物の角に、木製プランターに植えられています。

そして、引いて見ると、駐車場の屋根と、その右下に広がる和風庭園の樹々、
そして奥のスペイン瓦の建物(三原庭園の関連施設)も見えています。
これで、何となくの位置関係は分かりますでしょうか?
立体的な構成になっているので、少々分かりにくいかとは思いますが。

こちらは駐車場(建物の屋根)から見える風景です。
和風庭園の樹々、その横の道路際に建つ建物、その奥に広がる長崎の街並みの
関係がよく分かるかと思います。

駐車場から、和風庭園の全景が見渡せます。
水景とその中を縫うように作られた石張りの園路、奥の茶室などが見えます。

横位置のアングルで撮影するとこんな感じです。
急斜面につくられたガーデンですが、意外に広く見えます。

再度、建物上部の駐車場に戻ります。
今度は、和風庭園と反対側の階段(写真左端)を下りて、もうひとつのガーデン「洋風ガーデン」へ案内します。

石積みでつくられた入口には、「MIHARA GARDEN」のサインがありました。

先ほどの和風庭園とは反対側の小さな階段を下りていくと、
これまた小さなゲートが見えました。

階段の側面(建物側)には、様々な植物が混植された壁面緑化が現れます。
先ほどの和風庭園とは趣きの異なる、少しエキゾチックなテイストです。

ヤツデや斑入りアオキ、オタフクナンテンなどの和風な植物とともに、シダ植物も植えられて
どことなしか、南国の植栽のイメージを感じました。

そして、階段を下りきったところに、広いパティオのような空間が設けられていました。
その中央には、立派な株立ちのサルスベリが、シンボルツリーとして植えられていました。
訪れたのが4月で、落葉樹のサルスベリは、まだ葉がほとんど展開していませんでしたが。

このエリアをぐるっと見渡すと、こんな感じ。
一般の住宅の庭のモデルガーデンといったテイストでした。

こちらの「洋風ガーデン」側からも、建物の中に入ることができます。
この建物の屋根が駐車場になっているのです。
いかがでしたでしょうか?
世界的ガーデンデザイナー・石原和幸氏の手掛ける「三原庭園」の「和風庭園と「洋風ガーデン」。
特に、渾身の「和風庭園」は、チェルシーフラワーショーなどで見せるショーガーデンとは異なり、
長期・常設展示という性質を踏まえた、メンテナンス性も考慮されつつも、
石原さんの独自の世界観を前面に打ち出した素晴らしいガーデンでした。

次回は、「三原庭園」のもうひとつの顔である、カフェや植物販売コーナーを含むエリアを紹介します。
和風庭園の奥に広がるワンダーガーデンです。

こちらが、そのエントランス。
石原さんらしい「和の趣き」とは別世界の、遊び心のあるガーデン空間です。
乞うご期待ください。
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