2026.5.29 / 実験集合住宅・NEXT21の緑化
大阪市内の「上町台地」と呼ばれる閑静な住宅街の一角に、実験集合住宅「NEXT21」が建っています。
この建物は、近未来の住宅について様々な実験を行うため、エネルギー会社の大阪ガスさんが建設された建物です。
その実験住宅・NEXT21で、大阪ガスさんの社員の方々による居住実験が始まってから30年が経ち、
ここ数年、その30周年記念の様々なイベント企画のお手伝いをさせていただきました。
そのご縁で、NEXT21の共用部に、つるバラを数本植栽させていただける機会を得て、
その後の景観の変化を定期的に観測しています。
今回は、この大阪ガスさんの実験集合住宅「NEXT21」の中に植栽さえていただいた、つるバラがつくる風景に
ついて、ご紹介したいと思います。
こちらは、今年の春のNEXT21の南側ファサード。
この建物は中高層の集合住宅ですが、一般的な集合住宅とは明らかに異なる表情をした建物です。
1階の外構だけでなく、屋上や共用廊下など、共用部の至る所に、植栽が施された、
いわゆる「環境共生型」集合住宅です。
建設から30年が経ち、植栽された木々は大きく育っています。
通常の集合住宅では、南側にバルコニーを並べるというのが住戸配置の定石ですが、
こちらのNEXT21では、南側に庭を囲むようなコの字型の住棟配置となっています。
南側に共用廊下を抱え、コの字型に突き出した共用廊下の両側を渡す、鉄骨のブリッジ(橋)が
2本(5階と3階)に架けられています。
その共用廊下の一角、アルコーブ状の空間に、住戸の専用庭(前庭)的なスペースがあり、
そこに、当時その住戸に入居されていた住民の方と相談して、つるバラを植栽させていただきました。
その空間が、こちら↑。
木製のチェアとテーブルが置かれた場所は、共用廊下の延長で、少しアルコーブ状に広がった空間になっていて、
住戸の専用庭(共用部分)として活用されています。
5階の空中ブリッジ越しに、このアルコーブ空間を眺めてみます。
上層階からは、とてもよく見えるコーナーです。
住戸側の壁面を使って、ローズピンクのつるバラ(品種:パレード)を誘引しています。
バラ以外にも、ピンクのサツキもちょうど満開を迎えています。
このアルコーブ状の空間(共用部)には、この部屋の住民の方が育てられている鉢植えの植物も置かれています。
実験集合住宅・NEXT21では、昔ながらの「路地空間」を集合住宅の中に取り込み、
「立体路地空間」を構成することが、計画段階からのコンセプトでした。
昔の路地によく見られた、鉢植えがたくさん家の前に並べられた景観の現代版的な感じがします。
つるバラ・パレードを誘引している壁面は、建物の外皮(外壁)ですが、実験集合住宅・NEXT21は、
いわゆる「SI住宅(スケルトン・インフィル住宅)」のため、「スケルトン」:躯体(柱・梁・床など)と、
「インフィル」:間仕切りなどが区別される構造で、「インフィル」部分は可変できるように設計されています。
よって、このつるバラ・パレードを誘引している壁面も可変(取り外しが可能)なため、
直接壁に誘引するのではなく、少し浮かせた状態でステンレス・ワイヤーを張り、そのワイヤーに誘引しています。
つるバラ・パレードの開花の様子。ほぼ満開に近いタイミングでした。
植えている場所も、もちろん地植えではなく、集合住宅の5階の共用廊下です。
小さな植栽枡(土壌も軽量の人工土壌がベース。)に植えているのですが、
庭植えと遜色ないくらい見事に咲いてくれています。
この場所に植栽して、ちょうど丸3年といったところです。
この専用庭スペースを少し斜めから見たところ。
手前に置かれた木製のチェアとテーブルがいいですね。
ここでお茶を飲んだり、おしゃべりしたり、住民の方々にとっても憩いの場所になっていると思います。
こちらが、つるバラ・パレードのアップ。
鮮やかなローズピンクの大輪花で、とにかく良く目立ちます。
実験集合住宅・NEXT21では、基本的に園芸種の植物は植栽しないことになっているのですが、
このスペースは共用部分でも専用使用部分(専用庭)にあたり、この住戸の住まい手の意向が考慮され、
このバラ(パレード)を植えても良いことになりました。
NEXT21の中では、少し浮いた印象(派手!)ではありますが、こういう賑やかなシーンもあって良いのかなと
個人的には思っています。
今年は、NEXT21の共用部につるバラ(各所に5本)を植えて3年目ということで、株も充実してきて
風景をつくれるように育ってきたと思っています。
こちらの写真は、コの字型の南側共用廊下に設けられた植栽スペースです。
いろんな植物が植えられています。
3階にはサツキがメインで植えられているのですが、サツキは残念ながら花が終わっていました。
今回注目していたのが、4階の住戸前のバルコニー(4階は、共用廊下が住戸バルコニーになっている)に植栽した
原種のつるバラ、「白モッコウバラ」です。
原種バラということもあり、旺盛に育ってまして、ツルが伸びすぎて、4階の住民の方から南側の視界を遮るため、
少し枝を剪定して欲しいとのご依頼を受け、この冬に結構、枝を間引き剪定していました。

もう少し、白モッコウバラに寄って撮影したのがこちら。
早咲きのため、もうだいぶ花が散り始めているのが残念でしたが、滝のように枝垂れてさいている様は
なかなか良かったです。
その白モッコウバラを植えている、4階のバルコニー部分を裏側から見たところです。
この4階だけは共用廊下ではなく、住戸のバルコニーとなっているのですが、
かなりの量の植栽が植えられているのが分かります。
外側が南のため、植物は外に向かって枝を伸ばし、葉を広げるようになっています。
ひとつ下の3階の共用廊下から、4階の白モッコウバラを見上げたアングルです。
手前には、ピンクのサツキが満開で、その対比も美しいです。
こちらは、3階に設けられた空中ブリッジからの眺めです。
こんもりと枝垂れて咲く様は、イメージ通りでとてもうまく景観が作れたと
思っています。
白モッコウバラのすぐ左に植えられているのが、ユキヤナギ。
既に花は終わっているのですが、ユキヤナギは剪定されて、上を向いて
葉を伸ばしているように見えます。
植物の葉の動きの違いで、景観の見え方がより複雑に見えると思います。
3階の空中ブリッジから、真正面に白モッコウバラの滝を眺めたアングル。
ちょうど良いボリューム感で、動きのある景観を作り出してくれています。
こちらは、3階の共用廊下から見上げたアングル。
上の階(4階)のバルコニーから枝垂れる白モッコウバラの裏側です。
まさに、滝を裏側から見ているような感覚です。
こちらは、1階のエコロジカルガーデン(中庭)から、コの字型の外観を見上げたアングル。
枝垂れる植物、柱を伝って上に駆け上る植物など、様々な植物が共生しています。
まさにアニメの「天球の城ラピュタ」を想起させるような外観です。
ここに見える範囲では、3階に1本、4階に2本のつるバラを植栽しています。
そして、こちらが、建物1階、南側前面道路から見たNEXT21の低層部です。
コの字型の共用部の一角に、白モッコウバラの滝が流れ落ちているのが見えるでしょうか?
毎年少しづつ表情を変えながら、緑豊かな建物緑化を構成しています。
いかがでしたでしょうか?、実験集合住宅・NEXT21のつるバラが作る風景。
次回は、実験集合住宅・NEXT21の、バラ以外の建物緑化そのものの魅力をご紹介したいと思っています。
乞うご期待!
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