難易度 ★

他のバラに先がけて４〜５月頃開花します。つる性低木で、生育はとても旺盛です。植える時には、大きくなる事を想定した場所選びが大切です。基本的にトゲはありませんが、稀に勢い良くのびた新芽にトゲがある事もあります。日当たりの良い場所から少し半日陰までの、水はけの良い環境を好みます。
八重咲き品種はあまり香りがありませんが、一重の品種は香りが楽しめます。寒さに少し弱いので、関東以北のエリアでは、寒さや積雪具合によって屋外栽培が難しい場合が多いです。屋外栽培が可能な地域でも、暖かくなってから大株を植えると失敗が少ないでしょう。
基本的には、お日様が大好きな植物です。多少の半日陰には耐えますが、日照が足りないと花付きが悪くなります。

一旦根付くと、旺盛に枝葉を伸ばします。フェンスなど何かに沿わせたり、アーチやガゼボなどに誘引して育てます。
のびやかに枝を伸ばすモッコウバラの良さを活かすためには、小さなアーチよりは、大型のガゼボやパーゴラ、広範囲のフェンスなどに沿わせて育てるのがおすすめ。成長も早く、大きくなるので地植え栽培の方が適しています。
鉢植え栽培する場合は、小さな鉢で栽培するとすぐに根詰まりを起こすので、できるだけ大きな鉢を選びます。

モッコウバラは花が終わると、どんどん新たなシュート（新しく伸びる枝）を出します。植え付けてから数年経つと、手入れをせずに放置をすると手に負えなくなるくらい枝葉が茂ってきます。新しく伸びたシュートは直立させず、地面に並行に誘引していきます。そうする事で、翌春たくさんの花芽をつけることができます。
シュートを誘引する際には、古い枝や混み合った部分の枝を切り落として、風通し良くしておきます。ただし、かなり多くのシュートがどんどん出てきますので、大きく育てたい場合は、よりシュートを生かして誘引していきますが、コンパクトに収めたい場合は、シュートも厳選して、余分なシュートは根元からカットし、合わせて開花した枝も混み合いすぎないようバランスを見ながら剪定して風通し良い環境を作ります。
冬には葉が多少落ちて枝が見やすくなってくるので、枝振りを見て、混み合った枝を間引き、春の開花や芽吹きに備えます。ただし夏以降、秋の初めに花芽がつくので、秋以降に切りすぎると翌春の花付きが悪くなるので、気をつけましょう。

他のバラに比べてそこまでたくさんの肥料は必要ありません。ですが、芽吹き前の２〜３月と、花の咲き終わった後に、バラ専用肥料や緩効性肥料を追肥します。
新たに植え付ける場合は、周りの土をよく耕して、堆肥や腐葉土などをすき込んで植えると、その後の成長が良いです。地植えの場合、一旦根付いたらほぼ水やりは必要ありません。植え付け後１ヶ月くらいは、水切れしないよう、様子を見て水をあげます。鉢植えは成長とともに乾きやすくなるので、土が乾いたらたっぷりあげます。特に花の咲いている時期は水が切れないように注意しましょう。

他のバラに比べて病害虫にはとても強い植物です。ですが、枝葉が混み合って風通しが悪くなるとアブラムシやハダニ、アオバハゴロモがつく事があります。
葉がベタベタしてテラテラ光るようになるとアブラムシ。ハダニは葉が白く透けたようになったり小さな雲の巣のような糸が張ったようになるのが特徴です。アオバハゴロモは、枝にフワッとした毛のような塊が集団でつきます。これが成長すると薄緑色の羽を持った蛾になります。これらは見つけ次第、被害が広がる前に取り除きましょう。
風通しよく育てるためにも、枝葉の混んだ部分を剪定して健全に育てることが大切です。

モッコウバラは白色もしくは薄黄色の２色です。よく見かける白の八重品種を白モッコウ、黄色の八重品種を黄モッコウと呼んだりします。
実際の学名は、白の八重品種はロサ バンクシア アルバ（アルバは白いという意味）、黄色の八重品種はロサ バンクシア　ルテアです（ルテアは黄色のという意味）。黄色の一重品種はロサ バンクシア ルテセンス、白花の一重はロサ バンクシア ノルマリスです。
一重品種は香りが良いのも特徴で、少しとげがあります。白花品種に比べて黄色品種の方が、若干早く開花する傾向があります。そして、黄花品種は花付きの良さが白花に比べてさらに抜群で、成長の速度も早いです。

実は比較的簡単に挿し木ができるのも、モッコウバラ栽培の楽しみの１つです。どんどん枝葉を伸ばして、剪定枝もたくさん出るので、挿し木にチャレンンジして、友人やご近所にお裾分けしても楽しいですね。
切った枝葉１０〜１５センチほどにカットします。新たな新芽は葉の付け根の節から出てくるので、２〜３節を残しましょう。切った枝は数時間〜半日程水につけます。その後、種まき用の土や、赤玉の小粒、もしくは湿らしたバーミキュライトや水苔に挿して、乾かないように管理します。挿す方の切り口はルートンなどの発根剤をつけておくと、腐らずに発根がよりスムーズできます。
挿した枝は明るい日陰で、１ヶ月ほど管理します。新たな根が出てくると、新芽も出し始めますので、そうなったら黒のポリポットに培養土を入れてそこへ植えます。ある程度黒ポットで管理、成長させたのちに、地植えにします。

思いの外、大きくなりすぎて困る事があるかもしれません。株元も木質化してゴツゴツ大きくなってきます。本来とても強い性質なので、手に負えなくなったら株の根元３０センチほどをを残して強剪定したとしても、また新たに枝を伸ばします。花芽ができるのは、花後8月くらいまでです。花が終わった後に切り詰めて枝を誘引し直すのが良いでしょう。もしくは花芽が少なくなるのを覚悟で、秋以降、シュートが出るのが落ち着いた頃に、選抜して枝数を減らす方法もあります。

モッコウバラは、木香薔薇という漢字で表現されます。他のバラに比べると香りの印象は少ないのですが、では何故香りという漢字が使われたのでしょうか？

白の一重品種の根皮は漢方の世界では「香花刺」と呼ばれ、月経を整えたりむくみを解消したりする効果があるとされています。その香花というネーミングが影響しているのか？もしくは漢方で使われる木香菊（モッコウバラではなく、菊の仲間）の香りに似ているという説もあったりします。この木香菊も根を利用します。いずれにしても、香りは花ではなく、根っこに由来しているようです。
英語名は香りと全く関係なく、レディーバンクスローズと呼ばれています。イギリス人植物学者でプラントハンターのジョセフ バンクス卿の妻であったドロシア レディー バンクスに因んで名付けられました。
早春一番に溢れるように咲くモッコウバラ。育てる場所の確保だけ慎重にすれば、とても簡単に毎年花が楽しめる魅力的な植物である事は間違いないようです。