難易度★★

多くはフレッシュな生の葉を利用します。乾燥して使うのはディルシードと呼ばれる種です。刻んだ葉は、サーモンマリネや、魚、卵料理、スープやサラダにとてもよく合います。種はスパイスとして使われ、ディルシードで香り付けされたピクルスは有名です。
ディルはお日様が好きな植物で、風通し、水はけの良い環境を好みます。セリ科の植物で、葉が大変似ている同じセリ科のフェンネルと混同されがちです。ですが、フェンネルが多年草なのに対して、ディルは一年草です。そして、フェンネルは２m程に大きく成長しますが、ディルは草丈４０〜６０センチほどの高さです。
花は同じセリ科のため、似たような黄色の花を夏に咲かせます。暑さや蒸れに弱いので、夏場は午後半日陰になるような環境を選んで植え付けるのがおすすめです。

種を蒔くか、苗を購入して育てます。ただし、ディルは太い根っこが真っ直ぐに伸びる直根性の植物なので、植え替えをあまり好みません。
できれば直に種を播いて、間引きしながら大きく育てていくと良いでしょう。基本的には秋（９〜１０月）に種を蒔きます。筋状に種を播き、成長と共に間引きを繰り返し、最終的に間隔を２０センチ程開けて育てます。セルトレイや黒ポットに種を播いて育てる場合は、本葉が４〜５枚程に育ったら、鉢植えや庭に植え付けをします。
育ちすぎて、ポットの中で根が巻いてしまうとその後の成長がうまくいかないので、適期に植え付けをします。また根を崩さないようにして植え付けます。
寒冷地にお住まいの方は、秋まきでなく、春（３〜６月）に種を播きます。土は弱酸性土を好むので、庭に植える時は、腐葉土や堆肥、苦土石灰をすき込んで準備をした土に植えます。鉢植え栽培の場合は、培養土やハーブ用の土に植え付けます。

ディルを種から育てる場合は特に、成長と共に茎が立ち上がって少しグラグラと不安定になります。苗が小さなうちは間引きと合わせて、株元に土を寄せてぐらつかないようにします。これを土寄せと言います。
草丈が２０センチくらいになってきたら、風で倒れたりするのを防ぐために、支柱を立てて紐で緩く誘引してあげると、ぐらつかずにおすすめです。

植え付け前に堆肥や腐葉土、苦土石灰を混ぜて土づくりをしておきます。プランター栽培の場合は、肥料入りの培養土もしくはハーブ用の土にもし肥料が入っていないようだったら、植え付ける前に緩効性肥料を混ぜておきます。
その後、葉を多く収穫するためには、春から初夏にかけての成長期に肥料が効くように、定期的に施します。水やりは乾いたらたっぷり鉢底穴から水が流れるくらいを目安に水やりします。
地植えは一旦根づけば特に水やりは必要ありませんが、晴天が続き乾くようだったら様子をみて水をあげます。

風通しが悪くジメジメした環境下では、アブラムシやうどん粉病が発生しやすくなります。これらの症状は見つけ次第広がりすぎる前に除去します。
特徴としては、他のセリ科同様、アゲハチョウの宿主となって、多くのアゲハが卵を生みに来ます。多すぎないようであれば、その成長過程を楽しんでも良いでしょう。
しかし、虫が苦手は人は、気温が上昇し、虫が増えてくる少し前に防虫ネットをかけてあげると、虫被害の心配をせずにすみます。

プランターで育てる場合、その後の成長を見込んで６〜７号鉢（１８〜２１センチ）に１株、５０〜６０センチの横長プランターであれば、間隔を開けながら３株を目安に植えるようにします。横長プランターを選ぶ場合、できるだけ深さのあるタイプを選ぶと良いでしょう。
通常よりも少し小型の品種ディルテディやドワーフディルは、限られた場所での栽培や、プランター栽培におすすめです。
ヨーロッパを始め西洋ではいくつかのディルの品種がありますが、日本ではあまりたくさんの品種が出回っていいません。これらの品種が欲しい場合は、ハーブ専門店やネットのサイトにオーダーして手に入れると良いでしょう。

葉の収穫は草丈が２０〜３０センチほどに成長したら、随時外側の葉から収穫できます。一気に摘み取って収穫しても良いですが、自宅で育てている場合、使う分だけ随時摘み取る方法の方が、長く楽しめます。
花が咲くと葉も茎も硬くなり、一年草なので種子をつけると枯れ始めます。もし蕾が上がってきたら、その茎をカットして花の時期を遅らせる事で、より長く葉を収穫できます。最終的に、種を収穫する場合、放っておくといつの間にか種が熟してバラバラと自然にまかれてしまいます。
傘状に広がった花が徐々に茶色に変化し始めたら、３０センチほどの長さで茎を切り取ります。その傘部分に紙袋などをかぶせて口を縛り、涼しい場所で逆さ吊りにして乾かします。種が自然に紙袋の中に落ちて収穫できます。
完全に乾いたら紙袋ごと振って種を落とし、収穫します。種の収穫を目指す場合、同じセリ科のフェンネルの近くで栽培すると交雑しやすいので、近くに植えるのは避けましょう。

継続的に収穫をしたい場合には、基本は株の3分の１から4分の１がベストです。一気にとってしまっても、時期がよければ新しい芽が出てきますが、植物が回復するのに少し時間を要し、うまく復活しても次の収穫まで少し時間がかかってしまいます。
長く収穫を目指したいときには、一度にたくさん取りすぎないよう注意しましょう。

自宅で育てれば、香り高い葉をふんだんに利用でき、使う分だけを収穫できるメリットがあります。特に採れたての葉はより香りが高く、刻んだ葉を混ぜるだけで、普段の料理をワンラク上の味に引き立ててくれます。
また花も可愛らしく、その後に結実する実を収穫すれば葉とはまた違った香りのハーブを楽しめます。

黄色の花はミツバチなどを呼ぶことができ、さらにはアブラムシを捕食してくれる益虫も呼ぶことができます。
受粉や益虫の隠れ家として、家庭菜園の近くなどに植えると、コンパニオンプランツとしてもディルの良さを生かすことができます。