難易度 ★

真夏の花の少ない時期にカラフルな花を楽しめる松葉牡丹。花壇の花として、多く公共の庭などでも利用されてきました。
同じ科で、一見とても似ているポーチュラカとの見分けの違いは、その葉っぱです。松葉牡丹の葉は松葉のように細い筒のようですが、ポーチュラカは葉が平く、また葉先が丸いのが特徴です。学名ではどちらもPortulaca（ポーチュラカ）の名がつき、そしてスベリヒユ科の植物です。茎が地面を這うように広がり、さらに枝葉を広げてカーペット状に成長します。
高温と乾燥にとても強いですが、寒さと湿気には弱い性質があります。日本では一年草扱いとされ、冬には枯れますが、たくさんのこぼれ種が落ちて、翌春には新たな芽があちこちに出る事も。また、折れた茎も簡単に土に挿して増やす事ができるので、簡単にどんどん増やせます。花は日中開き、夕方にはしぼみます。

苗から育てる方法と、種を蒔いて育てる方法があります。種はとても小さく、種が流されないような水やりや種まきに少しコツがいるので種まきに慣れていない初心者は、簡単な苗からの栽培がおすすめです。特定の品種を育てたい、もしくはたくさんの量を育てたいという場合は、もちろん種まきからの栽培が良いでしょう。
発芽温度が高いので、種まきをする場合は春しっかり温度の上がった４〜５月に行います。育苗箱に種まき用の用土を入れ、表層にピートモスを敷き詰めて、種をばらまきします。手でしっかりと表面を押さえたら、霧吹きで水をやります。発芽に光が必要な植物なので、種の上に土はかけません。以降その育苗箱が入るトレーに水を張って、下から水を吸わせるか、霧吹きでの水やりをしつつ、育苗箱の上にビニールをかけて発芽するまで覆いをかけておきます。
発芽後、間引きをしながら本葉３〜４枚程度に成長したら、培養土を入れたポリポットに植えて育てます。本葉が６〜８枚になったら庭や鉢に植えます。苗から育てる場合は、松葉牡丹は地面を這うように広がっていくので、株間を２０〜３０センチは開けて植え付けます。

松葉牡丹は成長と共に枝葉を広げながら大きく成長していきます。伸びた枝を少し切り戻す事で側枝が出て、より枝葉がたくさん茂るようになります。植えっぱなしにするよりはこまめに先端を摘芯して、より多くの枝葉を出すように手入れします。そうする事で、花の数も増えて華やかになります。
さらに切れてしまった枝を土に挿すだけで、案外簡単に増やすことができます。挿し穂を用土に挿して、他の松葉牡丹同様に水をやり管理します。土に挿す部分の葉っぱは取り、もし花や蕾がついていればそれも切り落としてから土に挿します。根っこが出るまでは明るい日陰くらいの環境で管理して、育ってきたら日当たりの良い場所に移動します。挿してから１ヶ月もすれば、花を楽しめます。
咲き終わった花がらは、こまめにとってあげましょう。枯れた花が雨で枝葉にくっついて、それが原因で病気になる可能性もあります。長く花を楽しむためにも、咲き終わった花はできるだけ摘み取るようにします。

肥料は成長には必要ですが、松葉牡丹はあげすぎると枝葉ばかり茂ったり軟弱に育ったりするので、あげ過ぎには注意します。特に窒素分（N）のあげ過ぎには気を付けます。
鉢植えは少し肥料分が流れやすいので、月一回程度置き肥を鉢の縁に適量与えます。庭植えでは植え込む時に緩効性肥料を混ぜて植え、その後は成長期の５〜９月の間、肥料が効くように定期的に施すと良いでしょう。
松葉牡丹は、多肉質の葉を持つため、とても乾燥に強い性質があります。その反面水のあげすぎは根腐れを起こしたり、病気にかかりやすくなるため、少し乾燥気味なくらいで育てた方が上手くいきます。

大変病害虫には強い性質を持ちますが、湿気が多く日陰で風通しの悪い場所ではうどん粉病やアブラムシが発生する事があります。そのような兆候が現れたら、置き場所の見直しをしたり、幹部を早めに取り除き、蔓延しないようにします。何より日当たり良く、乾燥した風通しの良い環境があれば、あまり病害虫の心配はありません。

花は一重、八重、万重とバリエーションがあり、八重や万重種は大変豪華な見た目です。色も白、濃いピンク、薄いピンク、黄色、オレンジ、赤などの鮮やかな色から、コーラルカラー、レモンイエロー、白とピンクのしぼり模様など優しい雰囲気の花色もあります。
色々な園芸品種も出回っており、「ジュエル」は、通常の松葉牡丹よりも花が大きな一重咲きで、秋も１０月ごろまで花を楽しめる品種です。しかも、通常の松葉牡丹よりも耐寒性があり、上手く越冬すると翌年も楽しめます。花色は白とマゼンタカラー（濃いピンク）の２色です。「ソーラーキッズ」は、通常の松葉牡丹よりも長い時間開花を楽しめる園芸品種です。
園芸品種の種類によっては一代交配種やF1と表記されているものもあり、そこに結実した種からは同じ形状、品質の花はできませんので、それらの品種を育てたい場合は、翌年新たに種や苗を購入して育てます。

真夏に次々と花を咲かせてくれる松葉牡丹。乾燥した場所を好む植物なので、水はけの良い花壇の縁取りや、ロックガーデンに合います。また雨が降り続ける梅雨時期に、蒸れや湿気を避けるために、鉢植えやハンギングも良いでしょう。お日様大好きの植物で、花はお日様がよく照った場所できれいに開きます。曇りや雨の日には花が閉じてしまう事もあるくらい、花の開花にお日様が影響します。元来午後あたりから花が閉じてしまう性質がありますが、園芸品種は改良されて夕方頃まで花が開くようになっています。
花を十分に楽しむためにも。必ず1日たっぷり日の当たる場所に植える、もしくは日当たりの良い場所に鉢植えを設置します。

茎がだらんと倒れるくらいになったら、地面から８〜１０センチくらいから半分くらいの丈に思い切って切り戻すといいですよ。そのタイミングでリン酸多めの肥料もしくは窒素・リン酸・カリのバランスが均等な肥料を施してあげましょう。１ヶ月もしたら、またたくさんの花を楽しむ事ができますよ。

多く出回る八重品種はバラのように見える事から、海外ではモスローズという流通名もあります。日本では牡丹のような花という事で松葉牡丹という流通名になりました。国が違えば例える花も違うって、なんだか面白いですね。

この可愛らしい花はたっぷりお日様が当たる場所が大好きです。日陰になると花を閉じてしまったり、あまり明るくない場所だと、そもそも花つきが悪くなり、花も開かずに終わってしまう事もあるので、植える場所は必ずお日様が終日当たる場所にします。
真夏にたくさんの花を次々に咲かせる松葉牡丹。日当たりと過湿にならない事だけ気をつければ、かなり簡単に育てることができるので、園芸初心者にもおすすめの花です。