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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

環境に必要なグリーンスペース・ロンドンにて、ナチュラリスティックの波

吉谷桂子

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イギリスで、自然に倣った21世紀のナチュラリスティック・ガーデニングの潮流(正確には、新・自然主義というべきような neo とかnew が付いた方が正確かも)が登場し、すでに20年以上の時が経っています。ピート・アウドルフさんがイギリスで注目され始めたのも、ミレニアムの前後。

また、ロンドンのような都市部で、特に具体的にそれが目立って盛り上がったのは、ロンドン・オリンピックの会場の植栽が話題になった以降だったと思います。

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環境に負荷をかけないガーデニング、イギリスで頻発した水不足、逆に雨降りや高温。人手不足から必要となったロウメンテナンス。それでいて、都市には緑が必要だ。という自明の理。

それ以外では、やはり一つの流れ。それを、流行というと軽薄に聞こえそうですが、今の時代が必要としている自然観を表現するような、この雰囲気が大切なのだと思います。マリゴールドには全く罪はありませんが、マリゴールドだけを絨毯状に植えるのとは違った花壇の作り方。

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以来、この流れは、ニューヨークのハイラインの成功と同時に、欧米で一般的になってきたと言えるのかと思います。しかし、この状態とは逆に、王立バラ協会の庭が閉鎖されたニュースには驚いたし、なかなかに象徴的でした。

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↑写真の景色は、年末、ロンドンのメリルボーンを歩いていて、見つけました。

見つけた時は、いよいよだ!

と思いました。2年前から、これに近いことを青山通りで考えていたから。

しかし、この景色よりは、私は、もうちょっと、はっきりとわかるように、デザインしていますが。ただ自然なだけでは...。ちょっと。

ただの自然風では...漠然と、雑草めいてしまうし。

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特に私が気をつけているのが、草花のデュラビリティ。2年で消えたら意味がないので、長生きする丈夫な対応性の高い植物でありながら、フォルムのコントラストは大切。「線」の形の草同士を横に並べて植えるのは美しい感じがしない。また、ペルシカリアもタデ科の雑草と思われやすいので、うまく使わないと、良いインプレッションを与えるのは難しい。ただし、丈夫で雨が降っても茎が倒れにくいという利点があるのでうまく参加させたい。

アスファルトだけでは、雨水のドレイネージ、水捌けに問題があった、このように水を吸い込むデザインが面白いがゴミが溜まる心配も?しかもゴミが除去しにくそうだ。

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1990年代までの、よく知っているロンドンの街のグリーンといえば、街路樹以外では、ハンギングバスケットが主流でした。今もあります。でも、この、ロンドン市のハンギングは、以前よりも減っていると感じていました。

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そして、少しづつ、目に止まるようになったのが、これ。この感じ。

誤解を避けるため。これはまだ一部です。どこにでもあったわけじゃない。

でも、ここに書いてあること。歩行者へのベターな環境配慮と都市の雨水の水捌けへのサステナブルな対処法。ここが最近始まった新たな公共のナチュラリスティック。(ただし、それだけなら、日本の歩道のようにサツキなどの常緑樹だけでも良いのかもしれないのですが。)

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でも、季節が来れば、花が咲く。これが宿根草の良いところ。でも、しかし、こうして植栽升がタバコの吸殻だったり、犬のトイレにされたら最悪。でも、この可能性は高い。悲しい。

ただ、以前のように、一斉にパンジーを植える植栽をあまり目にしなくなりました。銀座や日本橋では相変わらずそういう場所もあるけれども、自然風な植栽の場所も出てきましたね。

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↑ ブルタリズム建築のバービカンをポジティブな雰囲気に転換していくことに成功した、イギリスのナチュラリズムの旗手ナイジェル・ダネット(デュネット)氏設計の庭。重要で注目すべきは『デザインされたプラントコミュニティ』デザインされた植物コミュニティが、生態学的にお互いに存続性があり、自然な植物生態系の特徴を捉えて選ばれていること。私は、日本ではもう少し日本自生種に重点をおきたいが。

日本では、まだ、この世界的なナチュラリスティックの動きに気づいてない種苗会社や園芸家も少なくない、だから、それが、これからなのか、今後も、日本ではあまり一般的にならないのかは、私には、わかりません。

好きか、嫌いかと言われたら、好きになれないという意見が、まだ圧倒的に多いからです。仕方がない。若い世代はどうだろう?

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わたし的には、このオーナメンタル・グラス、カレックスやミスキャンサス・シネンシス。今までも、多くの日本人から雑草!といわれてしまいガチな植物をそうは思わせない演出で植えなくてはとは思っています。「線」のグラスに対し、シュウメイギク(奥)の葉は「面」があるのでグラスの「線」のコントラストが際立って美しく見える。

実は、青山の植栽にも、最初からシュウメイギクと他に日本でも自生してきた品種は欠かしていません。他にオミナエシ、ツワブキなど。

そもそも、25年前。日本で最初に宿根草の庭を作った際、造園の職人さんたちに「西洋の雑草か!」と言われたことがあります。

いろいろな価値観があってそれをセレクトできるのも現代的ですが。私はイギリスの園芸の価値観の方が、圧倒的に自分の共感に近いので、気候の違いは別として、世間のニーズと合わせるのに、いつも悩みます。注意深く、でも、ちょっとづつ進めていってみます。

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2018年8月のPiet Oudoluf private Garden

ピート・アウドルフさんの言葉には大きく共感するので。そこだけは。

"For me, garden design isn't just about plants, it is about emotion, atmosphere, a sense of contemplation. You try to move people with what you do.

You look at this, and it goes deeper than what you see. It reminds you of something in the genes ------ nature, or the longing for nature."

私にとって、ガーデンデザインは、植物について、だけのものではない。
それは感情、雰囲気、熟考の感覚。
そうすることで、人々の心を動かそうとするもの。
あなたがこれを見るとき、それは、あなたが見ているよりも、いっそう深いところに届き、それがあなたの遺伝子の中で、あなたに何かを思い出させることだろう。

------ 自然または自然への憧れを。

と勝手で下手な解釈ですが。少しづつ理解されるように、やっていこうと思う。

難しいけれども、やって行きたいことを。


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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


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