都内には数多くの観光名所がありますが、この連載では東京が江戸と呼ばれていた頃からの歴史を持つ名所を訪ねていきます。

江戸時代から、日帰りでの行楽を楽しむ人は大勢いました。その流れが今も続いている季節感あふれる江戸東京の行楽名所をご紹介してまいります。 都内には数多くの観光名所がありますが、この連載では東京が江戸と呼ばれていた頃からの歴史を持つ名所を訪ねていきます。

江戸時代から、日帰りでの行楽を楽しむ人は大勢いました。その流れが今も続いている季節感あふれる江戸東京の行楽名所をご紹介してまいります。

江戸の梅見

開花にはまだ少し早いですが、今回は梅の名所を訪ねます。

江戸時代の花見をあらわすフレーズとして「梅に始まり菊に終わる」という言葉があります。初春の梅見に始まり、秋の菊見に終わるという意味です。

現在では、花見というと桜のイメージが強いですが、江戸時代は少し違っており、梅の花見が、桜に勝るとも劣らず盛んだったのです。というよりも、江戸の花見のメインは、梅見でした。梅見は、上流階級の習慣で、江戸時代以前からありました。もともと、梅見はセレブな人が楽しんでいたものなのです。

その習慣が大衆化し、江戸時代に入ると一般庶民の間にも広がります。そして、梅見のシーズンには、春の訪れを待ちわびる江戸っ子が梅見に押し寄せるのが例年の光景となったのでした。 開花にはまだ少し早いですが、今回は梅の名所を訪ねます。

江戸時代の花見をあらわすフレーズとして「梅に始まり菊に終わる」という言葉があります。初春の梅見に始まり、秋の菊見に終わるという意味です。

現在では、花見というと桜のイメージが強いですが、江戸時代は少し違っており、梅の花見が、桜に勝るとも劣らず盛んだったのです。というよりも、江戸の花見のメインは、梅見でした。梅見は、上流階級の習慣で、江戸時代以前からありました。もともと、梅見はセレブな人が楽しんでいたものなのです。

その習慣が大衆化し、江戸時代に入ると一般庶民の間にも広がります。そして、梅見のシーズンには、春の訪れを待ちわびる江戸っ子が梅見に押し寄せるのが例年の光景となったのでした。

その盛況ぶりを示すように、江戸には梅の名所が生まれます。梅屋敷と呼ばれた梅園までありました。江戸の観光名所として賑わっていた一つに、呉服商・伊勢屋彦右衛門の別荘があります。亀戸天神の近くにあるこの別荘には、300本もの梅の木が植えられていたため梅屋敷と呼ばれていました。 その盛況ぶりを示すように、江戸には梅の名所が生まれます。梅屋敷と呼ばれた梅園までありました。江戸の観光名所として賑わっていた一つに、呉服商・伊勢屋彦右衛門の別荘があります。亀戸天神の近くにあるこの別荘には、300本もの梅の木が植えられていたため梅屋敷と呼ばれていました。

現在は、この梅屋敷をモチーフにした新しい複合商業施設ができています。

その他、江戸時代後期に誕生した向島百花園も当初は梅園で、新梅屋敷と呼ばれていました。その後、梅に限らず、多種多様な草花が植えられたことで、百花園と呼ばれるようになりました。 現在は、この梅屋敷をモチーフにした新しい複合商業施設ができています。

その他、江戸時代後期に誕生した向島百花園も当初は梅園で、新梅屋敷と呼ばれていました。その後、梅に限らず、多種多様な草花が植えられたことで、百花園と呼ばれるようになりました。

後楽園での梅見の宴

次に訪ねる江戸時代以来の梅の名所は、向島百花園とともに都立庭園の一つである小石川後楽園です。面積は７万平方メートルにも達します。

小石川後楽園をはじめ東京ドーム一帯は、かつては水戸家の広大な上屋敷でした。その屋敷の中に、後楽園という名園が造られます。水戸黄門こと、水戸家第二代藩主徳川光圀の時に完成しました。梅の名所として全国区の知名度を誇る水戸の偕楽園も水戸藩が造った庭園ですが、後楽園も梅が見所の庭園でした。

江戸の頃、後楽園の梅を楽しめたのは水戸藩の殿様と家族、そして将軍や同僚の大名ぐらいでした。藩士も殿様の許可を得なければ楽しめませんでした。

毎年正月、水戸藩では後楽園を会場として、藩主主催の梅見が家臣を招いて執り行われていました。現代風にいうと、初春の園遊会です。園内の尚古閣では、藩主自らがお酌をして、家臣たちとの交流がはかられていたのです。 次に訪ねる江戸時代以来の梅の名所は、向島百花園とともに都立庭園の一つである小石川後楽園です。面積は７万平方メートルにも達します。

小石川後楽園をはじめ東京ドーム一帯は、かつては水戸家の広大な上屋敷でした。その屋敷の中に、後楽園という名園が造られます。水戸黄門こと、水戸家第二代藩主徳川光圀の時に完成しました。梅の名所として全国区の知名度を誇る水戸の偕楽園も水戸藩が造った庭園ですが、後楽園も梅が見所の庭園でした。

江戸の頃、後楽園の梅を楽しめたのは水戸藩の殿様と家族、そして将軍や同僚の大名ぐらいでした。藩士も殿様の許可を得なければ楽しめませんでした。

毎年正月、水戸藩では後楽園を会場として、藩主主催の梅見が家臣を招いて執り行われていました。現代風にいうと、初春の園遊会です。園内の尚古閣では、藩主自らがお酌をして、家臣たちとの交流がはかられていたのです。

水戸藩の藩主は他の殿様とは違い、江戸で暮らすのが普通でした。水戸に帰れば偕楽園で梅見を楽しめましたが、参勤交代で水戸に戻ることはほとんどありません。そのため、毎年正月に梅見の宴を後楽園で開いたのです。

光圀はじめ水戸藩の殿様が住んでいた御殿は、今は東京ドームになりましたが、庭園部分は現在も残り、園内には約90本の紅梅や白梅があります。江戸時代の頃とは違い、今は誰でも入園でき、春の訪れを楽しむことができます。 水戸藩の藩主は他の殿様とは違い、江戸で暮らすのが普通でした。水戸に帰れば偕楽園で梅見を楽しめましたが、参勤交代で水戸に戻ることはほとんどありません。そのため、毎年正月に梅見の宴を後楽園で開いたのです。

光圀はじめ水戸藩の殿様が住んでいた御殿は、今は東京ドームになりましたが、庭園部分は現在も残り、園内には約90本の紅梅や白梅があります。江戸時代の頃とは違い、今は誰でも入園でき、春の訪れを楽しむことができます。

梅まつりと梅の実

江戸以来の梅見の由緒を持つ小石川後楽園では、毎年二月中旬から三月はじめにかけて梅まつりが開催されます。水戸藩主催の初春の園遊会の現代版といえるでしょう。園内では大江戸玉すだれなどの伝統芸能を楽しめるほか、植木市も開かれます。その主役は、もちろん梅の盆栽です。 江戸以来の梅見の由緒を持つ小石川後楽園では、毎年二月中旬から三月はじめにかけて梅まつりが開催されます。水戸藩主催の初春の園遊会の現代版といえるでしょう。園内では大江戸玉すだれなどの伝統芸能を楽しめるほか、植木市も開かれます。その主役は、もちろん梅の盆栽です。

後楽園と同じ東京都文京区内の湯島天神も梅の名所です。湯島天神でも梅まつりが毎年開催されており、なかでも梅の下での野点が人気イベントになっています。先ほど、お話した新梅屋敷と呼ばれていた向島百花園でも梅まつりが開催されるのが恒例です。

このように、梅見とともに江戸情緒あふれる催し物が江戸以来の梅の名所で繰り広げられており、現在の東京の風物詩となっています。

江戸の人々にとっては梅見だけが梅の楽しみではありませんでした。やがて実を結ぶ梅の実も大きな楽しみの一つでした。それは今も同じなのかもしれません。 後楽園と同じ東京都文京区内の湯島天神も梅の名所です。湯島天神でも梅まつりが毎年開催されており、なかでも梅の下での野点が人気イベントになっています。先ほど、お話した新梅屋敷と呼ばれていた向島百花園でも梅まつりが開催されるのが恒例です。

このように、梅見とともに江戸情緒あふれる催し物が江戸以来の梅の名所で繰り広げられており、現在の東京の風物詩となっています。

江戸の人々にとっては梅見だけが梅の楽しみではありませんでした。やがて実を結ぶ梅の実も大きな楽しみの一つでした。それは今も同じなのかもしれません。