「無水調理という言葉を聞いたことがあるけれど、どんな調理法なのだろう」と思っている人も多いのではないでしょうか。煮物やスープ、カレーなどを作るとき、普通は水を加えますが、無水調理では野菜から出た水分を使って調理します。無水料理の特徴やメリット、簡単なレシピなどを紹介しましょう。

無水調理とは水を加えず、食材自体の水分を活用した調理法のことで、食材から出る油分も使うため、油もの使用量も抑えられます。無水調理では、鍋に蓋をして密閉状態を作るのが特徴です。気密性の高い専用鍋を使えば、素材本来の香りや風味が強く感じられる料理ができます。

無水調理は素材から出る水分や油分を活用する調理法で、普段の料理とはできあがりも異なります。無水調理をするとどのようなメリットがあるのか、ポイントを5つ紹介します。

無水調理のメリット
・栄養素を逃しにくい
・食材のうまみと甘みが凝縮される
・ヘルシーに仕上がる
・熱効率が良く調理時間が短い
・材料を切って入れるだけで簡単に調理できる

無水調理は、余分な水分を入れないので素材の持つ豊富な栄養を逃しません。食材によっては水を加えると栄養素が溶けてしまい、本来の栄養を取り入れられないことがあります。例えば、野菜や果物に含まれるビタミンC、豚肉や玄米などに含まれるビタミンB1、B2などの水溶性ビタミンが当てはまります。

料理がおいしくできても、せっかくの栄養素を逃してしまっては残念です。しっかり栄養を取りたいのであれば、無水調理がいいでしょう。

無水調理では、素材から出る水分を使うので旨味や甘みが凝縮され、いつもと同じ料理でも深みのある味になります。料理を作る際、レシピ通りに作っているはずなのになぜか味が薄いと感じることもあるでしょう。これは食材から出る水分に味付けの際の水分が加わり、素材そのもののうまみが感じにくくなっているからです。

素材によって含まれる水分量も違い、せっかくのうまみを逃がしてしまうこともあります。しかし、無水調理なら水分量を最小限に抑えられます。

無水調理では肉や魚などの食材から出る油分を使います。普段の料理であれば油を引いて炒めたり焼いたりする際、途中で油を足すこともあるでしょう。無水調理はわざわざ油を足さずに済み、料理の仕上がりも油っぽさが抑えられ食べやすくなります。また調味料に頼らず素材の味を生かせるので、減塩にもつながります。

無水調理では、鍋の蓋をしっかり閉めて密閉状態にするので、時間をかけずに熱が早く伝わるのが特徴です。保温性も高く加熱を止めても余熱でしっかり火が通るので、ガスや電気代の節約にもなります。余熱で仕上げることができれば、キッチンにいる時間も短縮できるので、他の調理に時間を使えて効率的です。

無水調理は、切った食材と調味料を入れて加熱するだけのシンプルな調理法です。途中で水を足したり混ぜたりすることはほとんどなく、密閉された鍋の中で火が通り味もしみ込むので、料理が苦手な人でも楽に調理できます。特に電気式の無水調理器を使えば、火加減を気にせず自動で調理できて便利です。

無水調理では必要最低限の調味料だけで、ヘルシーな料理を時間をかけずにつくることができます。しかし、注意しなければならない、次のようなデメリットもあります。デメリットをあらかじめ知っておけば、失敗せずにおいしい料理を作れるでしょう。

無水調理のデメリット
・焦げ付きやすい
・火加減が難しい
・水分の少ない食材は向いていない
・専用の鍋は高価で重い
・蓋が開けにくくなり危険

無水調理は食材から出る水分のみで調理できるのが特徴です。しかし水分が少ないと焦げ付いてしまうことがあるのがデメリットです。使い始める前に、シーズニングという鍋に油をなじませる作業をしておくと焦げ付きにくくなります。特にホーローのようにコーティング加工された鍋はコーティングがはがれて焦げ付きやすくなってしまうので注意しましょう。

無水調理では最初の火加減が肝心です。ご飯を炊く際ははじめに一気に火を通しますが、それ以外の煮込み料理などでいきなり強火にするのはやめましょう。一方、弱火にしすぎてもなかなか火が通らず時間がかかってしまうので、使う食材や料理に合わせた火加減の調節が必要です。

無水調理では食材から出る水分を使うので、元々の水分量が少ない食材を入れると、鍋底にこびりついてしまったりパサついたりすることがあります。特に、さつまいもやかぼちゃ、れんこんのような根菜は水分が出にくいので注意が必要です。これらの食材を使いたい場合は、少量の水を入れるか、濡らしたクッキングシートを鍋底に敷いて調理すると良いでしょう。

水分の少ない食材
・さつまいも
・れんこん
・かぼちゃ

無水調理専用の鍋は普通の鍋より厚手で、鋳物で作られることが多いので重さがあるのが特徴です。鋳物は高温の金属を型に流し込んで製造するので、どうしても重くなります。しかし、金属によって重さが違うので、重いものを持つのが苦手だという人は、比較的軽いアルミやステンレスなどを使ったものを選ぶと良いでしょう。

また専用鍋はやや値段が高めです。しかし、素材やメーカーによって値段に差があります。

無水調理では、蓋と本体を密着させて調理するため、調理後に冷めると、中が真空状態になって蓋が開かなくなってしまうことがあります。無理に蓋を開けようとすると、開けた瞬間に蒸気が一気に出てきたり、中の物が飛んできたりして火傷の恐れがあり危険です。蓋がなかなか開かないときは、一度温めて中の温度を上げると、真空状態が解消されて開けやすくなります。

無水調理をしてみたいけれど、家に専用の鍋がないので、家にある鍋を使って挑戦してみたいと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、普通の鍋では蓋と鍋本体の間にうまく水の膜ができないことがあります。どのような鍋を使えば、無水調理ができるのかを具体的に説明しましょう。

無水調理に適した鍋の特徴
・蓋が重く密閉性が高い
・素材や構造によって熱効率が良い

無水調理に使う鍋を選ぶ際に重要なのが蓋です。密閉性の高い圧力鍋の蓋とは違い、無水調理の鍋蓋はロックをかけるものではありません。しかし無水調理で失敗しないためには、鍋本体と蓋が密着しなければなりません。蒸気が外にでてしまうと、水の膜ができないので、蓋に重みがあって、本体とぴったり密着する鍋を選びましょう。

時間をかけずに気軽に無水調理を楽しみたいのであれば、アルミ製が良いでしょう。ステンレスの約14倍の熱伝導率があり、軽くて使いやすいのが特徴です。ステンレスは丈夫で錆びにくく保温性もあるので、アルミとステンレスを使った多層構造鍋は熱効率が高まります。ステンレスにホーロー加工を施した鍋は保温性も高いのですが、衝撃に弱いのが欠点です。

熱効率が良い素材
・アルミ
・ステンレス

無水調理では、蓋と鍋本体を密着させ、間に水の膜を作ります。無水調理専用ではない普通のステンレス鍋やフライパンでは蓋と本体が密着せず、水の膜ができません。上手に無水調理をするには、専用の鍋を使いましょう。

土鍋やホーロー鍋の中には、無水料理ができるものもあります。圧力鍋にも、無水調理の機能がついている製品があるので、購入時に取り扱い説明書を確認しましょう。

無水調理はやり方を間違えると、焦げ付いたり中までしっかり火が通らなかったりしてうまくいかないことがあります。しっかりやり方を覚えておきましょう。
無水調理の手順や失敗しないためのコツなどを紹介します。

鍋の素材によっては無水調理の前に少量の油を引いたり、あらかじめ鍋を温めたりする必要があります。食材がくっついたり焦げ付いたりするのを防ぐためですが、空焚きしてはいけない物もあるので、使い始める際には説明書をよく読みましょう。

基本的な使い方
1. 調理をする前に中火で1〜2分予熱をする
2. 食材と最低限の調味料を入れて蓋をする
3. まずは中火から始めて、沸騰したら弱火にする
4. 具材に火が通ったら余熱で5分ほど置く
5. 完全に火が通ったか確認し、そのまま置いて味をしみこませる

洗った野菜は軽く水気を切ったらそのまま鍋の中に入れましょう。水分の多い葉物野菜や根菜を一番下に入れると、すぐに水分が出始めます。そうすることで肉や魚などの食材が焦げ付かず、十分な水分と蒸気によって火が通ります。

無水調理では食材から出る水分で調理しますが、強火にするとすぐに水分が飛んでしまいます。そのため、基本的には中火から熱し始め、沸騰したら弱火で時間をかけて煮込むのがコツです。専用鍋は保温性に優れているので、あとは余熱でじっくり火を通しましょう。

調理中に火が通っているか、焦げ付いていないか確認しようと蓋を開けたくなる人もいるでしょう。しかし、何度も蓋を開けると蒸気が逃げてしまい、蓋と鍋本体の間にできた水の膜もなくなってしまいます。火加減は沸騰している音や蓋の間から漏れた蒸気で確認して、調節しましょう。

無水調理でできる料理といえば、煮込み料理や蒸し野菜などが代表的ですが、それだけではありません。スイーツも時間をかけずに簡単に作れるので、親子で調理を楽しめます。無水調理の人気のレシピを5つ紹介しましょう。

材料（4人分）
・鶏もも肉：2枚
・ジャガイモ：3個
・タマネギ：大1個
・ニンジン：1本
・ナス：中2本
・ピーマン：中2個
・カットトマト缶：1缶
・カレールー：1/2箱
・サラダ油：小さじ2
・塩こしょう：少々

カットトマト缶を使った簡単なカレーのレシピです。

作り方
1. 鶏肉と野菜を食べやすい大きさにカットする
2. サラダ油を鍋に入れ中火で熱する
3. カットした材料を鍋に入れ、油が全体に回るぐらいまで炒める
4. トマト缶と塩こしょうを入れ軽く混ぜたら蓋をする
5. 10〜15分ほど煮込み、野菜が柔らかくなったら火を止める
6. カレールーを入れ溶かしたら、再び火をつけとろみが出るまで煮込む

食材の大きさを揃えると時間をかけずに火が通ります。炒める際は焦げ付かないよう全体をまんべんなく混ぜましょう。カレールーに対し水分量が少ないようであれば少しずつ調節し、塩こしょうで味を整えます。

材料（2人分）
・牛肉：200g
・ジャガイモ：2個
・タマネギ：1個
・ニンジン：1/2本
・しらたき：100g

（A）調味料
　醤油：大さじ3杯
　酒：大さじ2杯
　みりん：大さじ2杯
　砂糖：大さじ2杯
　だしの素：小さじ1

和食の定番である基本の肉じゃがのレシピを紹介します。

作り方
1. タマネギはくし切り、ニンジンとジャガイモは乱切りでカットする
2. しらたきは食べやすい長さにカットし、湯通しして臭みを取る
3. 鍋にタマネギ、ニンジン、ジャガイモ、しらたきの順に入れ、一番上に肉を広げて置く
4. あらかじめ別容器で混ぜたおいた調味料（A）を鍋に加える
5. 蓋をして中火で加熱し沸騰させる
6. 蒸気で蓋がカタカタ音を立てたら弱火にする
7. 10〜20分ほどしたら鍋の底から全体を混ぜる

しらたきの臭みを取ることで仕上がりの風味が変わります。牛肉は豚肉でも代用でき、あらかじめ炒めてから野菜の上に置いても良いでしょう。沸騰したら調味料が全体になじむようにからめ、火を止めます。冷ましているうちに味が具材にしみこんでいきます。

材料（2人分）
・タマネギ：1.5個
・キャベツ：1/2玉
・ニンジン：1/2本
・カットトマト缶：1缶
・コンソメキューブ：1個
・塩こしょう：少々
・にんにくチューブ：お好み
・オリーブオイル：お好み

具だくさんで栄養満点のミネストローネのレシピです。

作り方
1. 野菜を食べやすい大きさにカットする
2. カットした野菜とトマト缶を鍋に入れる
3. コンソメキューブ、塩こしょう、にんにくチューブを入れる
4. 蓋をして中火で10分煮込み、弱火にしてさらに10分煮込む
5. 野菜が柔らかくなってきたらオリーブオイルをかける

野菜をカットする際は、大きさを揃えると見栄えも良くなり、時間をかけずに手早く火が通ります。味付けはシンプルですが、野菜とトマト缶から凝縮されたうまみが出て、おいしくなります。

材料（2人分）
・豚肉：200ｇ
・白菜：1/8個
・きのこ（しめじやまいたけなど）：お好み
・ごま油：大さじ2
・酒：50ml

（A）調味料
・鶏がらスープの素：大さじ1
・にんにくチューブ：お好み

シンプルな味付けで食べやすい豚肉と白菜の無水鍋のレシピです。

作り方
1. 豚肉に（A）をなじませるように揉み込む
2. 白菜はざく切りにし、きのこは石づきを取って分けておく
3. 鍋にごま油を引き、白菜、きのこ、豚肉を入れて酒を回し入れる
4. 蓋を閉めて弱火で25分煮込む
5. 火が通ったら余熱で2分ほど蒸らす

材料を入れる際は、火が通るのに時間がかかる硬い白菜の芯から入れるのがポイントです。食材を並べて入れると見栄えもきれいになります。仕上げに小ねぎや黒こしょうをかけるとアクセントになって、よりおいしさが増すでしょう。

材料（4人分）
・たまご：3個
・砂糖：70g
・牛乳：500ml
・バニラエッセンス：少々

（カラメルソース）
・砂糖：70g
・水：大さじ3
・熱湯：50ml

無水調理で、プリンも簡単に作れます。

作り方
1. カラメル作り。小鍋に砂糖と水を入れ、中火で熱する
2. あめ色になったらいったん火を止め、熱湯を注ぐ
3. 鍋を傾けながら手早くかき回し、固まらないうちに器に均等に移す
4. プリン作り。ボウルに卵を割り入れ、砂糖を加え泡立てないように混ぜる
5. 牛乳を沸騰しない程度まで温め、ボウルに加える
6. 混ぜたら一度ざるでこし、バニラエッセンスを加える
7. 器に均等に移したら表面の泡を取り、アルミホイルをかぶせる
8. 無水鍋に並べ、器の半分くらいの高さまで熱湯を注ぎ火にかける
9. 蓋をせずに中火にし、器の周りがふつふつとしてきたら弱火で2分ほど煮る
10.火を止めて蓋をし、10分ほど余熱で蒸らす
11.粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やす

カラメルはすぐに焦げ付いてしまうので手早く作ります。卵と砂糖を混ぜるときは、泡立て過ぎないようにするのがポイントです。牛乳を温める際は沸騰させてしまうと卵が固まってしまうので、温度に注意しましょう。

無水調理の鍋を選ぶ際には、素材や構造のほかにも大きさや使い勝手の良さが大切です。無水調理以外の使い方もできる鍋なら、ふだんのちょっとした料理にも使えて重宝するでしょう。初心者でも使いやすく、用途も幅広い無水調理用の鍋を3点紹介します。