洋食器やテーブルコーディネートのシーンで、カトラリーという言葉を耳にする機会が増えました。英語では一般的に使われる言葉ですが、日本語ではまだあまり馴染みがなく、意味が曖昧なまま使われていることもあります。カトラリーとはどのような食器なのか、その意味を見ていきましょう。

カトラリーという言葉は、英語のcutleryに由来します。cutleryは「切るもの」を意味し、語源は中世フランス語のcoutellerieです。初期はナイフなどの刃物を指していましたが、時代とともにフォークやスプーンなども含まれるようになり、現在では食事に使う器具全般を表す言葉として定着しています。

日本ではまだカトラリーという言葉が広く浸透しているとは言えませんが、洋食器やテーブルコーディネートの分野では、今後さらに使われる機会が増えていくでしょう。

カラトリーという言葉は、カトラリーの聞き間違いや言い間違いから生まれた誤った表現です。発音が似ているため間違えて使われることがありますが、正式な言葉ではありません。テーブルマナーとして、カトラリーと正しく表現しましょう。

ナイフやフォーク、スプーンといったカトラリーは、現代の食卓に欠かせない道具です。しかし、カトラリーがどのように誕生し、食文化に根づいてきたのかという歴史は意外と知られていません。カトラリーの起源をたどってみましょう。

カトラリーの歴史
・【11〜17世紀頃】フォーク
・【12世紀頃〜】ナイフ
・【15世紀頃〜】スプーン
・【19世紀頃】カトラリーセット

・王侯貴族：イタリア上流階級で装飾品として使用→17世紀にフランスへ伝わり食具化
・一般庶民：普及は19世紀以降。フォークは贅沢品
・主な国：イタリア発祥→フランス経由でヨーロッパ全土へ

フォークは当初、王侯貴族の間で身分の象徴として使われていました。庶民は素手で食事をしており、フォークは遠い存在でした。その後、フランス宮廷をはじめとする上流階級の間で食事道具として定着しますが、一般家庭へと普及したのは19世紀になってからです。

・王侯貴族：大皿の肉を切り分けるために使用。個人用ナイフは持参制
・一般庶民：手づかみで食事。ナイフはほぼ未使用
・主な国：フランス・イギリスなど西ヨーロッパ

カトラリーの中でも、ナイフは最も古い歴史を持ちます。12世紀頃の食卓では、大皿の肉を切り分けるためのナイフが1本だけ置かれ、給仕する人が使用していました。15〜16世紀になると、客が自分のナイフを持参して食事をする習慣が広まります。

当初、ナイフは肉を切るために鋭さと清潔さが重視される実用品でしたが、食文化の発展に伴い、素材にこだわった高価なナイフも登場するようになりました。

・王侯貴族：スープ用に使用。銀製スプーンは富の象徴。洗礼時の贈り物にも
・一般庶民：17〜18世紀に木製・金属製スプーンが普及
・主な国：フランス・イギリス・ドイツなどヨーロッパ各地

スプーンはナイフに次いで古くから存在する道具で、もともとは調理や化粧に使われていました。食卓で使われ始めたのは14〜15世紀頃ですが、当時は非常に高価で、実用品というよりも財産として保管されることが多かったとされています。また、キリスト教では洗礼の際にスプーンを贈る習慣があり、宗教的な意味合いも持っていました。

・王侯貴族：招く側が揃えて用意。12人分のセットが標準
・一般庶民：各家庭に普及。銀製からステンレスへ
・主な国：イギリスでのテーブルマナー文化が起点、産業革命で欧米に普及

19世紀に入ると、手掴みでの食事は次第に姿を消し、カトラリーを使う習慣が定着します。各家庭では銀製のカトラリーが揃えられるようになり、宴席でも招く側が食器やカトラリーのセットを整えて用意するのが一般的となりました。こうしてカトラリーは、単なる食事の道具にとどまらず、テーブルマナーと豊かな食文化を象徴する存在として定着したのです。

カトラリーは、食事のスタイルや文化の変化に合わせて、形や使い方が少しずつ進化してきました。ナイフ、フォーク、スプーンといった基本的な種類に加え、今では料理やシーンに応じて細かく種類が分かれており、食卓をより豊かに、快適に整える役割を果たしています。代表的なカトラリーの種類と特徴を見ていきましょう。

カトラリーの種類
・フォーク
・ナイフ
・スプーン

ステンレス製のカトラリーは錆びにくく耐久性が高いため、家庭や飲食店でよく使われています。手入れが簡単で汚れが落ちやすく、衛生的に使える点も特徴です。価格やデザインも豊富で、さまざまな食卓に合わせやすい素材です。

銀製のカトラリーは、美しい光沢と重厚な質感が特徴です。使い込むほどに独特の風合いが増していく一方で、空気中の硫黄によって黒ずみや変色が起こることがあるため、使用後の丁寧な手入れが欠かせません。多少の手間はかかりますが、銀製品が持つ上品な存在感は、いつもの食卓に格調高い上質な彩りを添えてくれるでしょう。

純銀は非常に高価で、カトラリーの中でも最上級の素材です。美しい輝きと高い抗菌性を備え、贈答用や格式ある食卓にふさわしい存在感があります。しかし、変色しやすいデリケートな素材のため、輝きを保つためには使用後の丁寧な手入れが欠かせません。

洋白銀器は、銅、亜鉛、ニッケルの合金に銀メッキを施したカトラリーです。表面は純銀とほぼ同じ美しい光沢があり、見た目にも高級感があります。手入れがしやすく、価格も純銀に比べて手頃なため、日常使いから贈答用まで幅広い用途に選ばれている素材です。

アルミは非常に軽く、扱いやすいのが特徴です。手が疲れにくいため、子どもや高齢の人にも適しています。熱を伝えやすい性質を持つことから、熱い料理には注意が必要ですが、アウトドアや気軽な食事の場面では重宝されています。

ホーローは、金属の表面にガラス質を焼き付けた素材です。表面はなめらかで食べ物の臭い移りが少ないため、清潔に保てます。また、酸や塩分にも強く、日常の食卓で幅広く活躍します。ただし、衝撃には弱いため、ぶつけたり落としたりすると欠けやすい点には注意が必要です。

木製のカトラリーは、温かみのあるやさしい口当たりが特徴です。また、軽くて扱いやすいため、子どもや高齢の人にも適しており、和食やナチュラルな雰囲気の食卓によく合います。ただし、水に弱いため、使用後はすぐに洗い、よく乾燥させるといった丁寧な手入れが不可欠です。

カトラリーは、素材や形状、大きさだけでなく、使い方やライフスタイルに合った選び方も重要です。自分に合うカトラリーを選べば、毎日の食事がより快適で豊かな時間になります。カトラリー選びのポイントを見ていきましょう。

カトラリーの選び方
・見た目
・口当たりの良さ
・価格

カトラリーの見た目は、食卓の印象を大きく左右する重要な要素です。ステンレスや銀など光沢のある金属製は洗練された雰囲気を、木製やホーローは温かみや彩りを添えます。形や素材は料理との相性にも関わるため、食器やテーブルコーディネート、使用シーンに合わせて選ぶことが大切です。

スプーンやフォークは口に直接触れるため、口当たりや風味が料理の味わいに大きく影響します。表面がざらついていたり、金属臭がするものは、料理の味を損ないかねません。素材や仕上げによって感触は異なるため、心地良く使えるものを選ぶことが、カトラリー選びにおいて重要です。

カトラリーは、価格が高ければ良いわけではありません。手頃な価格でも、使いやすく、日常使いに十分な品質を備えた種類は多くあります。一方、高価なものは素材や仕上げにこだわりがあるため、長く使いたい人や贈り物として適しています。

日々の食事を楽しい時間にするために、カトラリー選びは大切なポイントです。普段使いしやすいものから、おもてなしの食卓にふさわしいもの、アウトドア用などさまざまな種類があります。おすすめのカトラリーを紹介しますので、参考にしてください。

カトラリーに関しては、使い方や選び方のほか、収納の工夫やテーブルマナーなど、知っておくと役立つ情報がたくさんあります。カトラリーに関するよくある疑問と回答を、Q&A形式でわかりやすく紹介します。

カトラリーのテーブルマナーでは、カトラリーの扱い方や置き方に気を配ることが大切です。食事の途中で手を休める際は、使っているカトラリーを皿の縁にハの字に置くのが基本です。食事が終わったら、カトラリーを揃えて皿の上に並べましょう。

また、音を立てず静かに使う、同席者のペースに合わせて食事を進めるなど、丁寧な所作を心がけることが大切です。