大名庭園のライトアップ

秋の深まりに伴い木の葉が赤や黄色に色付き、紅葉狩りの季節がやってきます。紅葉を求めて山野や公園などに出かける人が増えるのは、江戸の時代も同じでした。

今回は、江戸・東京の紅葉の名所を訪ねます。 秋の深まりに伴い木の葉が赤や黄色に色付き、紅葉狩りの季節がやってきます。紅葉を求めて山野や公園などに出かける人が増えるのは、江戸の時代も同じでした。

今回は、江戸・東京の紅葉の名所を訪ねます。

11月に入ると、都立庭園は紅葉狩りの人であふれます。日中だけではなく、夜間でも紅葉狩りができる庭園があります。それは、文京区駒込にある六義園です。

ここは、川越藩主柳澤家の屋敷内に造営された庭園でした。いわゆる大名庭園で、５代目将軍徳川綱吉の側近として権勢を振った柳澤吉保により造園されました。将軍綱吉のご息女の鶴姫と八重姫も訪れたことで知られる名園です。 11月に入ると、都立庭園は紅葉狩りの人であふれます。日中だけではなく、夜間でも紅葉狩りができる庭園があります。それは、文京区駒込にある六義園です。

ここは、川越藩主柳澤家の屋敷内に造営された庭園でした。いわゆる大名庭園で、５代目将軍徳川綱吉の側近として権勢を振った柳澤吉保により造園されました。将軍綱吉のご息女の鶴姫と八重姫も訪れたことで知られる名園です。

明治に入ると柳澤家の手を離れ、三菱の創業者岩崎弥太郎の所有となります。深川にある清澄庭園も岩崎家の所有でした。深川江戸資料館の向かい側に広がる清澄庭園は下総国関宿藩主久世家の屋敷内に造られた庭園でしたが、明治に入ると、六義園と同じく岩崎弥太郎に買い取られたのです。

その後、岩崎家は六義園も清澄庭園も東京市に寄付します。そして、現在では都立庭園として一般公開されているのです。 明治に入ると柳澤家の手を離れ、三菱の創業者岩崎弥太郎の所有となります。深川にある清澄庭園も岩崎家の所有でした。深川江戸資料館の向かい側に広がる清澄庭園は下総国関宿藩主久世家の屋敷内に造られた庭園でしたが、明治に入ると、六義園と同じく岩崎弥太郎に買い取られたのです。

その後、岩崎家は六義園も清澄庭園も東京市に寄付します。そして、現在では都立庭園として一般公開されているのです。

現在、六義園では11月後半から12月上旬にかけて、「紅葉と大名庭園のライトアップ」という催しが毎年開催されています。期間中は午後９時まで開園時間を延長し（入園は午後8時30分まで）、ライトに照らされた庭園の幻想的な空間が楽しめるようになっています。

都内では六義園だけでなく、同じような企画が各所で繰り広げられています。仕事帰りに庭園や公園を訪ね、夜の紅葉狩りを楽しむのも秋の夜長のひそかな楽しみといえるのではないでしょうか。 現在、六義園では11月後半から12月上旬にかけて、「紅葉と大名庭園のライトアップ」という催しが毎年開催されています。期間中は午後９時まで開園時間を延長し（入園は午後8時30分まで）、ライトに照らされた庭園の幻想的な空間が楽しめるようになっています。

都内では六義園だけでなく、同じような企画が各所で繰り広げられています。仕事帰りに庭園や公園を訪ね、夜の紅葉狩りを楽しむのも秋の夜長のひそかな楽しみといえるのではないでしょうか。

紅葉の名所・海晏寺

現代の東京から江戸へ、話はさかのぼります。

晩秋となると紅葉狩りを楽しむ人たちで山野が賑わうのは江戸も今も同じですが、当時は意外な場所も紅葉の名所として広く知られていました。それは、寺院の境内です。 現代の東京から江戸へ、話はさかのぼります。

晩秋となると紅葉狩りを楽しむ人たちで山野が賑わうのは江戸も今も同じですが、当時は意外な場所も紅葉の名所として広く知られていました。それは、寺院の境内です。

なかでも東海道筋に建つ海晏寺は、江戸の観光ガイドブック『江戸名所図会』で「海晏寺紅葉見之図」という表題で取り上げられるほどの観光名所でした。初代歌川国貞や二代目歌川広重も海晏寺の紅葉を浮世絵の題材に選んだことで、その人気に拍車がかかります。 なかでも東海道筋に建つ海晏寺は、江戸の観光ガイドブック『江戸名所図会』で「海晏寺紅葉見之図」という表題で取り上げられるほどの観光名所でした。初代歌川国貞や二代目歌川広重も海晏寺の紅葉を浮世絵の題材に選んだことで、その人気に拍車がかかります。

現在の品川区品川５丁目に建つ海晏寺は、鎌倉時代に創建された古寺です。この辺りは東海道という名称のとおり、海岸に沿って街道が走っていました。

建長３年（1251年）の頃と伝えられます。漁師たちが品川沖に投げた網に大きな鮫がかかりました。網を引き揚げて鮫のお腹を割いてみたところ、観音像が出てきたのです。これを聞いた鎌倉幕府の最高実力者であった執権北条時頼は、その観音像を本尊として安置する寺院を建立するよう命じます。こうして創建されたのが海晏寺でした。

そのため、観音像は鮫洲観音と呼ばれるようになります。地名や京浜急行本線の駅名でもある鮫洲の由来にもなりました。

その後、戦国時代に海晏寺は荒廃してしまいますが、江戸時代に入ると、その復興が急速に進みました。そして、境内に多数の楓が植えられたことが海晏寺の歴史にとって大きな転機となりました。晩秋になると、紅葉目当てに江戸っ子が大挙押し寄せるようになったからです。 現在の品川区品川５丁目に建つ海晏寺は、鎌倉時代に創建された古寺です。この辺りは東海道という名称のとおり、海岸に沿って街道が走っていました。

建長３年（1251年）の頃と伝えられます。漁師たちが品川沖に投げた網に大きな鮫がかかりました。網を引き揚げて鮫のお腹を割いてみたところ、観音像が出てきたのです。これを聞いた鎌倉幕府の最高実力者であった執権北条時頼は、その観音像を本尊として安置する寺院を建立するよう命じます。こうして創建されたのが海晏寺でした。

そのため、観音像は鮫洲観音と呼ばれるようになります。地名や京浜急行本線の駅名でもある鮫洲の由来にもなりました。

その後、戦国時代に海晏寺は荒廃してしまいますが、江戸時代に入ると、その復興が急速に進みました。そして、境内に多数の楓が植えられたことが海晏寺の歴史にとって大きな転機となりました。晩秋になると、紅葉目当てに江戸っ子が大挙押し寄せるようになったからです。

歓楽街・東海道品川宿

しかし、海晏寺が江戸っ子の間で紅葉の名所として人気が出たのは、紅葉だけが理由ではありません。その立地や環境も大きかったのです。 しかし、海晏寺が江戸っ子の間で紅葉の名所として人気が出たのは、紅葉だけが理由ではありません。その立地や環境も大きかったのです。

海晏寺が建つ東海道には、品川宿という大きな宿場町がありました。京急本線は東海道に沿うかたちで走っており、ちょうど北品川駅から青物横丁駅周辺までの東海道沿い一帯が品川宿にあたります。海晏寺は青物横丁駅の近くにありますので、品川宿に近接する寺院ということになります。 海晏寺が建つ東海道には、品川宿という大きな宿場町がありました。京急本線は東海道に沿うかたちで走っており、ちょうど北品川駅から青物横丁駅周辺までの東海道沿い一帯が品川宿にあたります。海晏寺は青物横丁駅の近くにありますので、品川宿に近接する寺院ということになります。

宿場町というと旅人が宿泊する町のイメージが強いのですが、江戸四宿と称された宿場町の場合は事情が違っていました。つまり、東海道品川宿、甲州街道内藤新宿、中山道板橋宿、日光（奥州）街道千住宿など江戸にたいへん近い四宿は、旅人が宿泊する町というよりも、江戸っ子が遊びに出かける町としての顔を持っていました。要するに歓楽街だったのです。

そのため、宿場町とはいいながら、飲食や娯楽を提供する店が数多く立ち並んでいるのが特色でした。旅籠屋もありましたが、それは表向きで実際は遊郭のような事例が多かったのです。 宿場町というと旅人が宿泊する町のイメージが強いのですが、江戸四宿と称された宿場町の場合は事情が違っていました。つまり、東海道品川宿、甲州街道内藤新宿、中山道板橋宿、日光（奥州）街道千住宿など江戸にたいへん近い四宿は、旅人が宿泊する町というよりも、江戸っ子が遊びに出かける町としての顔を持っていました。要するに歓楽街だったのです。

そのため、宿場町とはいいながら、飲食や娯楽を提供する店が数多く立ち並んでいるのが特色でした。旅籠屋もありましたが、それは表向きで実際は遊郭のような事例が多かったのです。

品川宿という江戸でも有数の歓楽街にも近かったことが、海晏寺が賑わう理由になったことは否めません。さらに、東海道という風光明媚な海岸通りに面していたことも、人気の追い風となったのです。こうして、紅葉の季節には江戸からの観光客が大挙押し寄せました。

残念ながら、今はその面影はうかがえません。しかし、品川宿近くに建つ海晏寺は150年前までは浮世絵にも紅葉の名所として取り上げられた観光地だったのです。 品川宿という江戸でも有数の歓楽街にも近かったことが、海晏寺が賑わう理由になったことは否めません。さらに、東海道という風光明媚な海岸通りに面していたことも、人気の追い風となったのです。こうして、紅葉の季節には江戸からの観光客が大挙押し寄せました。

残念ながら、今はその面影はうかがえません。しかし、品川宿近くに建つ海晏寺は150年前までは浮世絵にも紅葉の名所として取り上げられた観光地だったのです。