小児科医・吉岡春菜の季節コラム Vol.07
秋のコラム
秋といえば、読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋・・・。
皆さんはどんな秋をイメージしますか?
今回は子どもたちの肥満についてのお話をしてみたいと思います。
1970年代から食習慣の変化、自動販売機やファストフード店の増加、自動車の普及など様々な要因で子どもの肥満は少しずつ増加しており、現在では子どもの約13パーセントが肥満の状況にあるといわれ、一つの社会課題となっています。
どれくらい太っていると肥満に当てはまるのかは、以下の計算式にお子さんの体重と標準体重を当てはめると分かります。
肥満度=(実測体重−標準体重) / 標準体重×100 (%)
幼児では肥満度15%以上は太りぎみ、20%以上はやや太りすぎ、30%以上は太りすぎとされ、学童では肥満度20%以上を軽度肥満、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満といいます。
標準体重は性別、年齢別、身長別に設定されていますので母子健康手帳を参照してください。(注:乳児の場合はこの計算式を当てはめることはできません。)
子どもの肥満のほとんどは単純性肥満と呼ばれ、食事や間食・清涼飲料水の過剰摂取、バランスの悪い食事や運動不足が原因といわれいています。
脂肪細胞の数が増加する時期は決まっており、母体にいる間・生後1年・思春期にピークがあります。脂肪細胞を増やさないためにも思春期までの対策が大切になります。
「母体にいる間にも赤ちゃんの脂肪細胞が増えるの?」と驚いて、妊娠中にダイエットを意識するお母さんがいるかもしれません。しかしこれは誤りです。母体が痩せの状態にあった子どもは将来、成人病を発症するリスクが高まることが分かっています。妊娠中の無理なダイエットは自身だけではなく、子どもの成長発達にも大きく影響するので気をつけていただきたいと思います。
なぜ子どもの肥満が問題になるのかというと、成人と同じように合併症があるためです。高血圧・糖尿病・脂質異常症が3大合併症です。肥満が改善されずに3大合併症が進行すると、動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞を発症するリスクが高まります。
また、膝や腰への負担から運動嫌いとなり、余計に肥満を改善することが難しくなるケースもあります。
食習慣が固定する思春期までに肥満を認める場合は、家族ぐるみで積極的に食事のバランスや量、運動習慣を見直す必要がありそうです。
日本には母子健康手帳という世界でも珍しい仕組みがあります。母子健康手帳にお子さんの身長と体重を定期的に記録し、身長に比べて明らかな肥満を認める場合や体重増加が著しい場合は、医療機関を受診して合併症について相談をしてみてください。
適度な食欲と運動で、よい秋を迎えましょう。