中華料理などに欠かせない鉄フライパンをうまく使いこなすためには、正しい「育て方」が何より大切です。鉄フライパンの育て方において、特に重要となるのが日頃の手入れ方法です。手入れの重要性を理解しておくことで、鉄フライパンを長く、きれいに使い続けられます。

鉄フライパンに手入れが必要な理由
・焦げ付きを防ぐ油膜を育てるため
・サビを防ぐため

鉄フライパンの手入れが必要な主な理由は、表面を焦げ付きから守るためです。鉄フライパンは、テフロン加工などを施したフライパンに比べて、焦げ付きやすい傾向があります。鉄フライパンの手入れは、焦げ付きを防ぐバリアとなる酸化皮膜を育てる工程です。

酸化皮膜とは、鉄フライパンの表面に馴染んだ油が熱で固まることでできる膜です。酸化皮膜ができることで、鉄フライパンの表面に微細な凹凸が形成され、食材が焦げ付くことなくスムーズに調理できるようになります。ただし、酸化皮膜は一度の手入れだけでは定着しないため、正しい方法で繰り返し油を馴染ませるという育て方が必要です。

フライパンの手入れというと使用後の洗い方が一般的ですが、鉄フライパンにおいては最初に適切なメンテナンスをすることが大切です。最初の正しい手入れ方法や使い方を知っておけば、初めて鉄フライパンで調理する人でもスムーズに使い始められます。

鉄フライパンを使い始める際には、事前に必ず油ならしを行ってください。鉄フライパンの表面には無数の小さな穴があります。この穴に油を馴染ませて、鉄フライパンの表面に焦げ付きや錆びから守るためのコーティングを作ることが、油ならしの目的です。

最初に、鉄フライパンの表面に付着したほこりをお湯または水で洗い、布巾で水気を取ってから火にかけます。水気が残ったままだと鉄フライパンが錆びる原因になるため、加熱して鉄フライパンの水気を完全に蒸発させてください。また、購入して最初に調理する際、一般的な鉄フライパンには錆び止めが塗布されています。

そのため、手入れとしてこの錆び止めを焼き切る空焼きが必要です。鉄フライパンを火にかけ、全体が青みがかったり、灰色になったりするまで加熱すれば空焼きは完了です。

水気を取ったら一度火を止めて、鉄フライパンに油を加えます。油は一般的なサイズであれば1/2〜1カップ、小さめのフライパンであれば1/4〜1/2カップ程度の量を入れ、弱火〜中火で加熱してください。3分程度加熱するのが、鉄フライパンの手入れのコツです。

油を加熱したら火を止めて、一度フライパンから油を出します。オイルポットに入れておけば、簡単な使い方で油ならしに使った油をろ過できるため、後で揚げ物や油返し用として使えます。

油ならし自体はこれで完了ですが、手入れ後に鉄フライパンを保管する場合は、表面に残った油をキッチンペーパーで拭き取ります。油ならしの後、すぐに鉄フライパンを使い始めるのであれば、拭き取らずそのまま使っても問題ありません。

鉄フライパンの育て方において重要な油ならしですが、特に初心者は難しいと感じるかもしれません。油の使い方や種類などの簡単なポイントを理解しておけば、初めて鉄フライパンを使う人でも簡単に手入れできます。

鉄フライパンの油ならしのポイント
・新品で使う際気になる場合は洗剤で洗う
・野菜くずを傷めるとさらに馴染む
・油の種類は乾性油・半乾性油がおすすめ
・油ならしは基本的に使い始めの1回でOK

新品の鉄フライパンの表面には、錆びを防ぐためのニスやコーティングが施されていることがあり、そのまま使い始めると臭いが気になる場合があります。鉄フライパンの臭いや汚れが気になる場合は、油ならしを行う前に一度洗剤で洗ってください。洗剤で洗った後は、中火で加熱をして十分に水気を飛ばすことが大切です。

油ならしで鉄フライパンを手入れする際、油と一緒に玉ねぎの皮やキャベツの芯などの野菜くずを入れてください。野菜くずがフライパンに付着している鉄臭さを取り除きます。また野菜くずがハケの代わりとなり、鉄フライパンの隅々まで簡単に油を馴染ませる効果もあります。

鉄フライパンの手入れに使う油は、基本的に何でも問題ありませんが、種類によって馴染みやすさが異なります。鉄フライパンの育て方に慣れていない人であれば、乾性油や半乾性油などの使い方が簡単な油を選ぶと、失敗しにくいでしょう。一般的に、油は乾きにくいものほど油ならしで作ったコーティングが落ちやすく、乾燥しやすいものほど取れない傾向があります。

乾性油や半乾性油などを使えば油が固まりやすいことから、鉄フライパンの手入れで作ったコーティングを定着させられます。一方、不乾性油と呼ばれる油は鉄フライパンに馴染みにくく、温度が下がっても固まらずにぬめりが残りやすいため、手入れには不向きです。

油ならしに向いている油
・サラダ油
・ごま油
・アマニ油
・菜種油

油ならしに不向きな油
・オリーブオイル
・ラード

鉄フライパンを育てるために必要な油ならしは、最初に調理する前に一度だけ行えば基本的に問題ありません。しかし、​鉄フライパンの臭いや汚れが酷く、洗剤で洗った場合や、油のコーティングが剥がれてきて焦げ付きが目立つ場合には、追加で油ならしを行ってください。

最初に使う前の油ならしだけでなく、毎回の調理前にも手入れを行うことも鉄フライパンの育て方において大切です。調理前に必ず手入れをしておけば、調理時の焦げ付きを防げるだけでなく、料理をより美味しく仕上げられます。

鉄フライパンを使って調理する前には、油返しをして表面に油を馴染ませてください。特に使い始めて間もない鉄フライパンは、油が十分に慣れていない状態です。毎回油返しを行うことで油馴染みが良くなるため、鉄フライパンの育て方において重要な工程です。

また、油返しには鉄フライパンの熱ムラを軽減する効果もあり、調理中にフライパンの表面に食材がこびりつくのを防ぐ目的もあります。

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最初に空の状態の鉄フライパンを火にかけ、わずかに煙が出てくるまで加熱し、吸着水を飛ばします。吸着水とは、鉄と水分子が化学結合することで発生する水分で、加熱して蒸発させることでより油が馴染みやすくなります。なお、強火にすると鉄フライパンが変形するリスクがあるため、加熱する際の火加減は中火に設定しましょう。

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鉄フライパンから煙が出てきたら一度火から下ろして、常温の油を多めに加え、フライパン全体に回してください。火から下ろすことでフライパンの温度を下げられるため、油馴染みが良くなり、低温で調理を始めても食材がくっつきにくくなります。使う油の量は、フライパンの底全体へ広がる程度が目安です。その後、弱火で3分程度加熱して油を馴染ませます。

鉄フライパンに油が馴染んだら、再度火を止め、中の油をオイルポットなどに取り出してください。油返しに使った油は劣化が進んでいないため、残しておけば次の手入れや調理に再利用できます。

油返しが完了したら、必要な量の油を入れて調理を始めてください。鉄フライパンは熱伝導率が高く、強火にすると焦げ付きの原因になるため、調理中は弱火〜中火に設定することが大切です。

一般的に鉄フライパンは丈夫に作られていますが、使用後の洗い方が間違っていると、錆びが発生したり食材がくっつきやすくなったりします。育て方だけでなく、使用後の正しい洗い方も知っておくと、鉄フライパンをより長くきれいに使えるでしょう。

調理後の鉄フライパンの洗い方では、熱いうちに汚れを落とすことが大切です。冷たい水をかけたり、フライパンが冷えた状態で手入れを始めたりすると、汚れに含まれるタンパク質が固まって落としにくくなります。洗剤は使わずにお湯で汚れを浮かせ、たわしで擦り落としてください。裏側は硬いスチールたわしで擦り落とすのが洗い方のコツです。

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洗った後の鉄フライパンは、布巾で水分を拭き取った上で、加熱して水気を完全に飛ばします。布巾で拭き取るだけでは表面に付着した水分を取り切れません。また、鉄フライパンが濡れた状態で火にかけると、乾燥に時間がかかります。そのため、乾拭きをした上で火にかけることが大切です。

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完全に水気を取ったら、最後に鉄フライパンの内側に油を薄く塗り広げます。鉄フライパンの油膜の育て方において大切な工程であり、油を塗ることで錆びを防ぎます。次の調理まで期間が空かない場合は、調理前に油返しをすれば問題ありませんが、長期間使わない場合は忘れずに行いましょう。使う油は新しいものでも、油返しや調理で使ったものでも問題ありません

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間違った育て方や洗い方以外にも、さまざまな要因で鉄フライパンには焦げ付きや錆びが発生します。しかし、鉄フライパンの状態に合わせた正しい方法で手入れすれば、頑固な汚れもきれいに落とせます。

鉄フライパンに付着した錆びは、少量であればスチールたわしなどで擦り落としてください。フライパンの底を覆う程度の量の水を入れ、沸騰するまで中火で加熱して汚れを浮かせます。底などにこびりついた錆びをスチールたわしで擦り、最後に洗い流しましょう。錆びが頑固な場合は、クレンザーなどを使うと掃除が簡単です。

簡単な育て方と手入れをするだけで、多彩な熱源や料理に柔軟に対応できる鉄フライパンですが、ステンレスやアルミ素材のフライパンとは異なる弱点もあります。そのため、実際に鉄フライパンを使う際は、素材の特徴を踏まえた正しい方法で扱ってください。

鉄フライパンを使う時の注意点
・油は多めに使う
・作った料理を放置しない
・洗剤を使って洗わない
・長期間使用しない時は新聞紙に包んで保管する

油ならしや油返しの時だけでなく、調理の際に使う油の量も多めにすることが大切です。卵や肉類などのタンパク質を多く含む食材は鉄フライパンにくっ付きやすいため、油を多めに使って油膜を作っておけば、調理中に食材がこびりつきません。

特に、購入して最初の調理ではフライパンが油に馴染んでいないため、レシピで決められた量の3倍を目安に使いましょう。毎回の調理で油を多めに使えば、油返しの作業を省略できる場合もあります。

出来上がった料理は鉄フライパンに入れたまま放置せず、すぐに皿や保存容器に移し替えてください。鉄フライパンに料理を入れたままにしていると、食材に含まれる水分や酸によって、油返しで定着させた油の膜が剥がれてしまいます。鉄フライパンが錆びる原因になるため、調理を終えたらすぐに料理を取り出し、フライパンの手入れをすることが大切です。

鉄フライパンの手入れには、できるだけ洗剤を使用せず、お湯を使いましょう。洗剤を使うと鉄フライパンに馴染んだ油が落ち、焦げ付きや錆びの原因になります。手入れの際に洗剤を使ってしまった場合は、水気を完全に蒸発させてから、必ず油ならしをしてください。

手入れ後の鉄フライパンを長期間使わない場合は、新聞紙に包んで湿気の少ない風通しの良い場所で保管してください。鉄フライパンを新聞紙に包むことで、手入れの際に馴染ませた油が酸化しにくくなります。また、空気中の湿気を新聞紙が吸収するため、保管中の錆びや劣化も防げます。