出刃包丁は、魚の骨を断ち切る用途から刃こぼれが起こりやすいため、定期的に研ぐことが大切です。片刃である出刃包丁は、基本的に片面のみ研げばよく、研ぎ方のコツをつかめばそれほど難しくありません。出刃包丁の鋭い切れ味を保つために重要な、3つの研ぎ方のポイントを見ていきましょう。

研ぎ方のポイント
・ハマグリ刃にして強度を持たせる
・先端を薄く・刃元を厚めに研ぐ
・小刃引きを丁寧にする

出刃包丁は、その重さによって硬い魚の骨なども切りやすい反面、刃自体に高い強度が求められます。そこで重要となるのが、理想的な刃の形状であるハマグリ刃です。ハマグリ刃とは、その名の通りハマグリの貝殻のように丸みを帯びた断面を持つ刃の形を指します。刃先に向かって徐々に丸くなる形が、切れ味と強度を両立させています。

出刃包丁を研ぐ際は、砥石の番手を変えながら段階的に進めるのが基本です。また、単に研ぐだけでなく、出刃包丁の刃先と刃元で厚みを変える研ぎ方が理想とされています。魚をさばく刃先は薄く鋭く、骨を切る刃元は厚く丈夫に研ぎ分けることで、バランスの取れた出刃包丁になるでしょう。

出刃包丁の研ぎ方で大事なポイントが、刃先の部分に小さな刃を付ける小刃引きです。刃先が鋭いほどよく切れるイメージがあるかもしれませんが、強度が不足します。魚の骨を切る機会が多い出刃包丁だからこそ、段をつけることで少しだけ刃の角度が緩やかになり、丈夫さが増します。

ステンレス出刃包丁を砥石で研ぐには、まず道具の準備が必要です。砥石は、荒砥から仕上げ砥まで複数の種類を段階的に使い分けます。作業をスムーズに進めるためにも、あらかじめ十分なスペースを確保して準備しておきましょう。手間のかかる作業ですが、一工程ずつ丁寧に行うことで出刃包丁の切れ味が戻ります。具体的な片刃の研ぎ方を見ていきましょう。

砥石を使った研ぎ方
・包丁の状態を確認する
・刃先を研いで二段刃を作る
・荒砥石で二段刃を研ぐ
・中砥石で軽く小刃引きをする
・仕上げ砥石で軽く小刃引きをする
・裏面を研いで裏押しをする
・小刃引きをして仕上げる
・新聞紙で切れ味を確認する

必要な道具
・出刃包丁
・荒砥石
・中砥石
・仕上げ砥石
・砥石台
・水を入れる容器
・新聞紙
・台拭き

まず出刃包丁全体を見て、刃こぼれやヒビがないかを確認します。また、元の形を覚えておくことも大切です。万が一研ぎ方を間違えて刃の形が変形すると切れ味が悪くなってしまうため、形や厚みをきちんと見ておきましょう。

出刃包丁の刃の部分のみがちょうど砥石に当たるようにして、刃こぼれもなくすような研ぎ方を意識します。カエリと呼ばれるバリができていれば、しっかり研げている証拠です。ある程度研いだら刃先をチェックし、光の加減で刃先に白い線が見えると二段刃になっています。この二段刃が、本格的に刃を研ぐ際の基準となるため、丁寧に行ってください。

刃先の研ぎ方
・包丁を砥石に対して角度は45度
・刃先のみを砥石に当て、カエリができるまで研ぐ

二段刃のままだと出刃包丁の刃先が厚く切りにくいため、次に荒砥石を使って研ぎます。その際にしのぎ筋と呼ばれる刃の平な部分と、切り刃の境目も研いでしまうと、強度がなくなり見た目も美しくありません。切り刃全体が砥石に当たる研ぎ方をすることで、余計な部分を削らずに済み、きれいな刃線ができあがります。

荒砥石での研ぎ方
・二段刃がなくなるまで研ぐ
・切り刃全体を砥石に当てる
・しのぎ筋が崩れないよう注意する

荒砥石で研いだ出刃包丁は、刃の表面に傷がたくさんついています。そのため、中砥石を使う場合は、傷を消すように丁寧な研ぎ方が欠かせません。刃が薄いため刃先を研ぐ作業は慎重に行い、小刃（二段刃）を残さないようにするのがポイントです。

中砥石での研ぎ方
・研ぎ傷を消すように意識する
・刃を少し起こす
・刃先は研ぎすぎない

仕上げ砥石では、中砥石でできた細かい研ぎ傷をなくし、刃を鏡面のように滑らかに磨き上げます。刃先を意識した研ぎ方で、カエリが出ないよう注意しましょう。カエリが出てしまうと刃が薄くなりすぎるため、小刃がなくなるまで研いでください。

仕上げ砥石での研ぎ方のポイント
・カエリが出ないよう刃先は研がない
・中砥石での傷をなくすように研ぐ

出刃包丁は片刃であるため、裏面は角度をつけず、砥石にぴったりと平らに当てることが大切です。平らな仕上げ砥石を使い、刃の裏側全体が砥石に接するようにして、カエリが取れる程度に優しい研ぎ方で仕上げます。この際、刃の真ん中あたりを指で軽く押さえると安定しやすくなりますが、研ぐときは力を入れすぎないのがコツです。

裏面の研ぎ方
・裏側全体を砥石に当てる
・引くときに力を入れ、押すときに力を抜く

この時点では刃先が鋭利である一方、薄すぎてヒビ割れや刃こぼれを起こしやすい状態のため、仕上げとして小刃引きを行います。小刃をつけることで切れ味が良くなり、長持ちします。力を入れすぎない研ぎ方を心がけましょう。

仕上げの研ぎ方
・一番細かい砥石を使う
・45度で刃を立たせる
・軽い力で研ぐ

出刃包丁を一通り研ぎ終わったら、新聞紙を使って切れ味を試します。刃がすっと引っ掛からずに切れれば、きちんと研げている証拠です。刃全体で試し切りを行い、引っ掛かりを感じる部分があれば、まだ研ぎ方が足りないため、再度調整してください。

包丁を研ぐのが初めての人や、まだ慣れていない人にとって、片刃の出刃包丁は重く刃も厚いため、難しいと感じるかもしれません。しかし、研ぎの基本となるポイントを押さえれば、他の包丁にも簡単に応用できます。初めての人でも失敗しない出刃包丁の簡単な研ぎ方を紹介します。

初心者の研ぎ方のポイント
・正しい砥石を選ぶ
・角度を一定に保つ
・力をいれすぎない
・砥汁を流さない

砥石は種類によって包丁の削り具合が違い、選び方が重要です。はじめに使う荒砥石は削る力の強い砥石で、刃こぼれや大きな傷を削るのに適しています。中砥石は、一般的に家庭でもよく使われている砥石で、切れ味を良くしたいときに使うものです。仕上げ砥石は、さらに鋭い切れ味と美しい刃面を作るために使用します。

用途に合った砥石を使うことで、出刃包丁は長持ちします。購入の際は、パッケージなどで砥石の種類をよく確認しましょう。

片刃の出刃包丁の正しい研ぎ方は、角度を一定に保ったまま砥石の上を滑らせることです。包丁を研ぐときは砥石に対して45度にするのがベストで、これは刃の斜面を砥石に密着させたときに包丁が持ち上がる角度です。この角度を崩さないように、手前から奥に向かう研ぎ方を意識しましょう。

片刃の出刃包丁を研ぐ際に力を入れすぎると、刃が滑って怪我をするおそれがあります。包丁を握る際は、普段の調理と同じようにハンドルを持ち、人差し指を包丁の背に、親指を刃元に添えて安定させます。研ぎ方のコツは、包丁を押し出すときのみ軽く力を加え、引くときは力を抜くことです。軽い力加減を心がけましょう。

出刃包丁を研いでいると、黒っぽい液体が出てきます。これは砥汁といい、砥石の粒子と包丁の金属が混ざったものです。この砥汁こそが、出刃包丁の刃を鋭利にするのに役立つため、洗い流さずに研ぎ続けましょう。砥石が乾いてきたら、砥汁の上から少し水をかけると滑らかになって研ぎやすくなります。

片手でも研げるシャープナーや研ぎ器は、忙しいときに役立つアイテムです。できれば2〜3段階で研げるものを選ぶと、1段階のタイプよりも切れ味が戻ります。研ぎ方のポイントは、砥石のときと同様に各段階で同じ回数研ぐことです。必ず片刃用の製品を使用し、研ぐ方向や順番を間違えないよう気をつけましょう。

出刃包丁を自分で研ぐ際、基本的な研ぎ方を理解していれば問題ありませんが、研ぎの最中や手入れの際に予期せぬ事態が起こると、対処に困ることもあるでしょう。出刃包丁の研ぎ方でよくある質問と解決法を紹介しますので、参考にしてください。

出刃包丁にサビが発生した場合、軽いサビであれば消しゴムタイプの物やサンドペーパーでサビを直接こすります。クレンザーを使う場合は、包丁に垂らしてスポンジで刃を磨きます。サビがひどいものは、スポンジの代わりに金たわしでこするとよいでしょう。

自分の研ぎ方では出刃包丁の切れ味が戻らない場合は、プロの包丁研ぎ業者に依頼するのも良い選択肢です。料金は業者によって異なり、刃渡り90mmまでの出刃包丁で1,000円、270mmまでで4,180円で依頼できるところもあります。一般的な大きさの出刃包丁であれば、2,000円前後で依頼できることが多いでしょう。