天然の美を宿す、山葡萄の籠
自然の恩恵と人の叡智が結実して生まれる、山葡萄の籠バッグ。いにしえの作風のままに今尚私たちを惹きつける、普遍とも言える魅力の源泉を探りました。
・温故知新で生み出された、圧倒的な美しさ
自然の美しさと強さが息づく「いいもの」をお届けしたい――。とある展示会で偶然出会った国産の山葡萄籠バッグに惹かれ、ぜひご紹介したいと思い長野県の工房へ。そこには、自然の叡智と受け継がれてきた編みの技が息づいていました。DAMAコレクションが魅せられたのは、職人の手の温もりにあふれる逸品でした。・「山葡萄百年」と称される揺るぎなき価値を作る
古くから縄などに利用され、日本人の暮らしとともにある山葡萄の蔓(つる)。その蔓細工は堅牢で割れにくく、「山葡萄百年」と言われる丈夫さを具えています。実用品にして天然の美しさを醸し出し、別格の存在として憧れをかき立てる山葡萄の籠バッグは、いったいどのように作られているのか。いにしえの日本人が生み出した制作の技術・過程を追ってみましょう。山葡萄籠の制作は、原料を採るところから始まります。採取できるのは、一年のうちわずか2、3週間ほどの梅雨の時期。職人は天然木の多い深山に分け入り、山葡萄を求めて道なき道を進みます。彼らには各々独自の採取場所があり、そこで採れる原料の品質に誇りを持っているのだとか。良質な山葡萄を見つけたら伐採に取り掛かるのですが、根元から切ってしまうのではなく、数十メートルもある高木によじ登って絡みついた蔓をほぐし、可能な限り上の方で切り取るのがルール。また蔓の大きさに基準を設け、基準値に満たないものは刈り取りを延期する、採取量以上に新木を植えるなど、種を枯渇させないための工夫を行っています。サスティナビリティが提唱される遥か以前から、環境への配慮を実践していたことに自ずと敬意が沸き起こります。さて、原料が揃ったら、次は“ヒゴ”と呼ばれる棒状の素材を作成するターン。まっすぐなもの、曲がったもの、捻じれたもの…山葡萄の蔓には一本一本ユニークな個性があり、鞣しと削りの加工を手作業で行って、均等な太さ・厚みのヒゴを拵えます。この工程は籠作りにおける最も重要なプロセスで、完成度を大きく左右するもの。職人の技量が問われる瞬間です。・愛でることで、美しく育つ。唯一無二の存在へと昇華。
素材が揃ったら、いよいよ編み上げ。ヒゴを縦横に交差させ、木型に巻き付けて籠の底部から編み始めます。要所要所でヒゴを水に漬けて柔らかくし、編んではまた乾燥させる。この過程を何度も繰り返すため、ひとつの籠が完成するまでに膨大な時間を必要とします。大量生産が当たり前の現代では効率を重視してしまいますが、じっくりと素材に向き合って創作することで、何世代にも渡って愛される美しい仕上がりが叶うのだそうです。編み技の原点はおよそ5500年前、なんと縄文時代に遡るとされる籠細工ですが、現在では職人が少なくなり、長きに渡る伝統が失われつつあると言います。その状況に危機感を覚え、いにしえの文化を継承し存続させようと尽力しているのが、今回ご紹介するブランド「Yama-Biko」。数多ある作品からDAMAコレクションが選んだのは、端正な佇まいに大人の品格が漂うボックス型の一品。容量たっぷりのボディは、ペットボトルやタブレットが収納でき、日常使いに恰好のサイズ感です。編み柄は緻密で均整な“網代編み”を基調に、一段ごとに三つ編みに加工したヒゴを配置し、繊細な華やぎを添えたもの。山葡萄の素朴さが優しく緩和され、和装はもちろんのこと、サマードレスやデニムなどにもすんなりとなじむ表情です。ハンドルの高さは通常より高めに設え、肩掛けもできる仕様に。さらに内側には柿渋染めの裏地をあしらい、隅々まで丹念に仕上げました。そして特筆すべきは、山葡萄籠が経年変化により麗しい風合いに変貌するということ。使い込むほどに持ち主の手の脂を得て深い色と艶を纏い、見る人を惹きつけ、持つ人に高揚感を与える唯一無二の存在へと育っていくのです。万一不意に破損した場合でも修理が可能。親から子へ、子から孫へと末永くお使いいただける、価値ある名品にどうぞご注目ください。
【Yama-Biko/やまびこ】
天然素材を愛する職人が山葡萄籠に魅せられ、2021年長野県大町市で創立。ブランド名の「Yama-Biko」には失われつつある伝統から新たな価値を創造し、“やまびこ”の如く世界にこだまさせるという願いと使命が込められています。