腰が痛くなる原因には、痛みの原因となる病気などが特定できる特異的腰痛と、病気などの痛みの元が明確に分からない非特異的腰痛の二つに分かれます。特異的腰痛にはヘルニアなどの病気による坐骨神経痛や、激しい運動による血流の悪化によって起こる筋・筋膜性の腰痛などが含まれます。非特異的腰痛は、レントゲンの検査などをしても原因が特定されません。重い病気が原因ではないため、まずは一安心ですが、原因がわからないため、痛みが慢性化することもあります。

腰痛の原因は多岐にわたります。筋力の低下などの身体的要因や、ストレスや不眠といった心理的要因などの複数の要素が重なることで慢性化してしまうことも少なくありません。そのため、まずは医療機関へ相談し、腰痛の原因になる身体的、心理的要因の解消や予防を心掛けることが大切です。

腰痛・腰が痛くなる原因
・腰椎椎間板ヘルニアや座骨神経痛などの病気
・運動不足
・肥満
・ストレス
・不眠

普段の生活習慣も腰痛の原因の一つですが、中でも椅子は、サイズや座り方などによって、腰への負担を大きくしてしまうことがあります。特に座椅子などを使ったロースタイルの生活では、椅子やテーブルなどの選び方や使い方を間違えると、腰痛を引き起こしがちです。座椅子を使って生活する場合は、どのような点が腰に良くないのかを理解したうえで、腰痛対策も考えていきましょう。

座椅子で腰痛・腰が痛くなる原因
・長時間座るのに適していない座椅子を使用している
・座り方や姿勢に問題がある

長時間座るのに適していないデザインの座椅子は、座っている間に崩れた姿勢が続いてしまうため、腰痛の原因になります。特に座面のサイズや高さが体格に合っていないと骨盤を立てられず、自然な姿勢を長時間キープできません。また背面や座面のクッションが柔らかすぎる座椅子は底付きしやすく、お尻や腰に負担がかかりがちです。

市販の座椅子の中には、長時間姿勢をキープできる機能や、デザインにこだわった物も多く販売されています。店頭などで実際に試してみて、背中や腰への負担がかからないかをチェックすることも大切です。

腰に優しい座椅子を使っていても、座り方や姿勢に問題があると、腰痛の原因になります。特に座椅子に座りながらパソコン作業をするときに多い前かがみ姿勢は、背骨のS字ラインが崩れてしまい、腰に負担がかかります。横座りや座椅子で寝るときに脚を投げ出す姿勢などは、背骨や背中周りの筋肉がねじれた状態が続くので、体を安定させられません。

また、座椅子の背面に強くもたれかかっていると、お尻が座面の前へ滑ってしまうこともあります。この姿勢は「ずっこけ座り」と呼ばれており、背骨本来の形であるS字カーブが崩れてしまうため、背中や腰に負担がかかりやすい座り方です。腰痛を予防するには、座椅子の選び方だけでなく正しい座り方も心掛けましょう。

座椅子におけるNGな座り方
・前かがみの姿勢
・横座り
・脚を投げ出す座り方
・ずっこけ座り

最近は腰に優しい座椅子が数多く販売されており、腰痛を和らげる効果をうたった商品も少なくありません。同じ腰痛でも痛みの強度などは人によって異なるため、誰でも同じ効果が期待できるわけではありませんし、医学的な根拠が必ずしもあるとは限りません。しかし、機能によっては症状を和らげたり、姿勢よく座れたりすることもあるので、医師の適切な診察も受けながら、座りやすい座椅子を探してみましょう。

座椅子を選ぶときのポイントは次の通りです。

腰がいたくなりにくい座椅子の種類の選び方
・姿勢矯正や姿勢改善機能があるもの
・腰痛持ちの人には腰部リクライニング機能があるもの
・腰痛で立ち座りがつらい人には回転座椅子・高座椅子
・長時間座る人にはリクライニング機能があるもの
・テレワークやゲームをする人にはアームレスト付き

座椅子の中には姿勢を正しく矯正したり、座ったときの癖を改善する機能があるものもあります。普段から姿勢の良くなる椅子に座っていれば、腰痛を防いだり、痛みを和らげたりできるかもしれません。
背中のS字カーブに沿うように、背もたれがデザインされている座椅子であれば、深く座ることで姿勢の崩れを防止できます。座面に窪みがある骨盤調整機能付きの座椅子であれば、お尻の位置が安定し腰への負担を軽減します。

普段の姿勢の癖に合わせて、姿勢良く座れる座椅子を選びましょう。ただし、姿勢矯正機能がある座椅子は背もたれクッションのサイズが小さい物が多いようです。背もたれに体重をかけられないため、長時間座ってリラックスしたい人には不向きかもしれません。

腰痛持ちの人の場合は、背もたれの腰部にリクライニング機能があれば、腰への負担を軽減できます。リクライニング機能で腰部のクッションに傾斜を付けると、座った際に骨盤を立たせられます。腰周りの筋肉の緊張が和らぎ、腰痛の軽減や改善も期待できるでしょう。

腰周りを包み込むような構造の座椅子であれば座った際の骨盤が正しい位置になるようサポートしてくれるので、腰に余計な負担がかかりません。

腰痛によって立ち座りがつらいと感じる人は、回転座椅子や高座椅子を使うと、立ち上がる際の腰や膝への負担を軽減できます。回転座椅子は下部に回転する台座が付いていて、座面が360度回転します。座ったまま身体の向きを変えられるので、一般的な座椅子に比べ、向きを変えるとき、腰に負担がかかりません。

高座椅子は、普通の座椅子に比べて座面が高いのが特徴です。低い物でも35cm程度の高さがあり、座る位置が高くなることから立ち上がるときの腰や膝への負担を軽減できます。

長時間座椅子に座って作業するのであれば、角度が調節できるリクライニング機能があるものを選びましょう。座椅子は一般的に背面クッションの角度を調節できるようになっていますが、より細かく調節できる物や無段階で調正できる座椅子であれば、体格や作業内容に応じて楽な姿勢を取りやすくなります。

背面だけでなく、脚部や頭部などの部分にも、リクライニング機能が付いている商品もあります。全てをフラットにすれば、簡易ベッドやマットレスのようにも使えるのがメリットです。

普段から座椅子に座ってテレワークやゲームをしている人向けに、正しい姿勢をキープできるよう、アームレストが付いている座椅子もあります。アームレストがあれば、座ったときに腕の位置を安定させられるので、作業中に体が前傾姿勢になりません。また人の両腕は体重のうち上腕が8％、前腕が6％を占めているとされています。

体重70kgの人であれば両上腕が5.6kg、両前腕が4.2kgの重量があることになり、支えがないと肩や背中が疲れやすくなります。アームレストで両腕を支えれば、作業中の肩や背中への負荷が和らぎ、長時間の作業でも疲れません。可動式のアームレストであれば、体格やデスクのサイズに合わせて高さを微調整できるので、より疲れにくい姿勢をキープできます。

座椅子のクッションは、背中や腰への負担を軽減する役割があり、素材によって座り心地や疲れやすさが大きく変わります。耐久性も異なるので、それぞれの素材の特徴などを踏まえた上で、自分に合ったクッション素材を選びましょう。

腰に良い座椅子のクッション素材の選び方
・腰痛にはポケットコイル
・出費を抑えたい人には高反発ウレタン

腰痛が気になる人なら、腰への負担を軽減できるポケットコイル入りの座椅子を選びましょう。クッション部分には不織布に包まれたコイルが入っていて、座ったときの体圧を均等に分散します。腰に体圧が集中しないため腰が楽で、長時間座っても体が疲れません。

その半面、製造に手間がかかることから、他の素材に比べて価格は高めです。

体圧分散性を優先して出費も抑えたい人は、弾力のある高反発ウレタン素材を使った座椅子にしましょう。ポケットコイルに比べて価格が安く、密度の高い弾力性ウレタンを使用しているため、座った際の体圧を分散できるのが特徴です。適度な反発力もあるのでお尻が痛くならない上、立ち座りの際、腰に余計な負担がかかりません。 同じウレタン素材でも低反発ウレタンのソファは、座った際に過度に体が沈み込むため、正しい姿勢がキープしにくく長時間の使用には適していません。

座る人の体格によって、腰に負担のかからない座椅子のサイズは異なります。座椅子のサイズや高さが体格に合っていないと、座っている間に姿勢が崩れやすくなるため、腰痛や背中の痛みの原因になりかねません。実際に店頭で座ってみるなどして、自分の体格に合っているか確認してから購入しましょう。

腰に良い座椅子のサイズの選び方
・座面の厚さは10〜15cm
・幅や奥行きはお尻がすっぽり収まるサイズ
・背もたれの高さはミドルバックかハイバック
・部屋のスペースが狭い場所は折りたたみ機能

座椅子の座面の厚さは10〜15cm程度あると、座ったときの底付き感がありません。座面が薄すぎると体圧が分散されず、長時間座っていると、腰の周りに痛みを感じる可能性があります。座面が厚いほど床の硬さを感じにくいため快適に座れますが、厚すぎると座った際に体が過剰に沈み込んでしまい、姿勢が崩れてしまうことがあります。

ローテーブルと一緒に座椅子を使う場合は、天板の高さとのバランスを考えて適切なサイズを選びましょう。一般的に座椅子の座面の高さから、30〜35cm程度高い位置にテーブルの天板が来るよう、サイズを合わせることが大切です。

座面の幅や奥行きのサイズは、体圧が一点に集中するのを防ぐため、お尻が収まる程度の大きさを選びましょう。座面の幅は、男性であれば50cm以上、女性は45cm以上の大きさがあると座椅子の上であぐらをかけます。奥行きが浅いと、座った際にしっくりこない可能性があります。

実際に座椅子に座ってみて、お尻から膝裏まで奥行きがあることを確認しましょう。

体への負担が心配なら、背面全体を支えられる、ミドルバックやハイバックタイプのものがおすすめです。ミドルバックタイプは背もたれが肩の高さまであり、肩甲骨周りを支えるので、座っているときの上半身の姿勢を安定させられます。ハイバックタイプの座椅子は、背中だけでなく首や肩周りも支えられるため、より体圧を分散できます。

ハイバックタイプはミドルバックに比べて背もたれの高さや全体のサイズが大きく、部屋に置くと圧迫感が出ますが、ゆとりを持って座りやすいので昼寝や仮眠を取りたいときに便利です。

サイズの大きい家具を置くスペースが部屋にない場合、折りたたみ機能がある座椅子を選ぶと良いでしょう。使いたいときにだけ広げ、使わないときにはコンパクトにして棚やクローゼットなどに収納できます。

折りたたみ機能付きの座椅子は、一般的な座椅子より軽量で簡単に持ち運びできることが多いため、急な来客時などで重宝します。

座椅子のカバーの生地も、座ったときの快適さや通気性などの点で重要です。自分の好みや実際の座り心地などから、長時間座っても快適な生地を選びましょう。

腰に良い座椅子のカバー生地の選び方
・滑りにくいファブリック
・通気性の高いメッシュ

座椅子に座っている間にお尻が滑ってしまうのが気になる人は、適度な摩擦力があるファブリック生地にすると良いでしょう。ファブリック素材の表面には糸を織り込むことでできた凹凸があり、衣類との接触面積が増えるため、滑りにくくなります。また汚れた際にも取り外して洗濯機で洗える物が多く、手入れも楽です。

同じファブリック生地でも、質感によって肌触りやデザインなどが異なるため、自分好みの物を探してみましょう。

座椅子に長時間座ることが多いのなら、通気性の高いメッシュ生地が適しています。メッシュ生地は一般的な生地に比べて繊維の表面の網目が大きいため、熱や汗を通しやすく、接地面がムレにくいのが特徴です。腰や座面クッションなどの一部分にメッシュ生地が使われている商品もあります。部屋の雰囲気や、他の家具との組合せも考えて選びましょう。

一見使いやすそうな座椅子でも、デザインによっては腰が痛くなる原因になる場合もあります。背もたれや座面などに腰が痛くなる原因が隠れていることもあるため、座椅子を購入する際は、次のような点をチェックしましょう。

腰に悪いNGな座椅子の特徴
・背もたれの角度が不適切
・座面が硬すぎたりやわらかすぎたりする
・腰の負担を減らす機能がない

座っているときに疲れやすい場合は、座椅子の背もたれの角度が直立しすぎているか、倒れすぎている可能性があります。大きく倒れている背もたれは、座った際に腰椎のカーブが失われることから正しい姿勢をキープできません。また直立しすぎている背もたれも、背中や腰周りの筋肉に余計な力が入ってしまい、疲労感の原因になります。

一般的に、疲れにくい背もたれの角度は100度前後とされています。休憩時は90〜110度、パソコン作業などでは110〜130度といったように使い方に合わせ、リクライニング機能で適切な角度に調節しましょう。

座椅子の座面が硬すぎたり、やわらかすぎたりしても、姿勢が悪くなる原因になります。硬すぎる座面は座っている間、大腿部などにピンポイントで圧力がかかるため、血流を阻害してしまう可能性があります。やわらかすぎる座面も体が過度に沈み込んでしまうので、腰椎に圧力がかかって腰痛の原因になることが少なくありません。

座椅子に適度な硬さと弾力性があるか、実際に試して確認しましょう。

腰の負担を減らす機能がない座椅子の場合、姿勢の変化や癖に対応できず、体を痛めてしまうことがあります。特に背面の構造は、腰の負担を軽減する重要なポイントです。背骨のS字カーブを支える曲面デザインや、ランバーサポートなどといった負担を減らす機能がないと、背もたれの下部と腰周りの間に空間ができてしまい猫背の原因になります。

座椅子で腰が痛くなるのを防ぐには、日頃から体に負担をかけない座り方を心掛けることが大切です。座るときの深さや背もたれの使い方などを工夫すれば、長時間の作業でも体に負担がかかりにくくなります。次のような点に注意しながら、普段の座り方を見直しましょう。

腰が痛くなりにくい座椅子の座り方のポイント
・お尻を背もたれにつけて深く座る
・骨盤を立てて座る
・背もたれに背中を沿わせる
・サポートとしてクッションや座布団を使う
・1時間に1回は立ち上がる

お尻の位置を安定させるために、座椅子に座る際はお尻が背もたれに付くほど深く腰掛けましょう。座椅子に深く座ることで、座面へ均等に体重をかけられるようになり、背中や腰へ余計な負担がかかりません。

浅く座ると、背もたれに強くもたれかかる状態になり、お尻が座面の前へ滑り出てしまうずっこけ座りの原因になります。ずっこけ座りは腰椎のカーブを無くしてしまい、背中や腰の痛みの原因にもなります。

座椅子に座るときは、骨盤が座面に対して垂直に立っている状態を意識すると、腰への負荷を軽減できます。この姿勢をキープすることで、背骨の自然なS字カーブを維持しやすくなり、背中や腰に余計な負担がかかりません。お尻の下に手を入れて、左右の座骨が椅子の座面へ均等に当たっているかどうか確かめてみましょう。

座椅子に座っている間は、姿勢の崩れを防ぐため、背もたれへ背中を軽く沿わせることを意識しましょう。背もたれにもたれかかるとずっこけ座りの原因になります。また背もたれと背中が離れていると前傾姿勢になりやすく、作業中に猫背になってしまいます。

座椅子に座っていると不安定に感じる場合、クッションや座布団などを使って腰周りの高さを合わせ、安定するようにサポートしましょう。座面に適度なサイズのクッションや座布団を敷くと、腰の位置が上がって正しい姿勢をキープしやすくなります。

骨盤を立てるのが難しい場合は、厚みのあるタオルを八つ折りにして腰の後ろへ挟むと、骨盤を安定して立たせやすくなります。

長時間作業するときも、1時間に1回は立ち上がって、一度背筋を伸ばしましょう。背中や腰に負担がかかりにくい座り方ができていても、長時間同じ姿勢でいると背中や腰の筋肉が緊張し続けてしまい、慢性的な腰痛の原因になってしまいます。また血流が滞ることで、むくみやエコノミークラス症候群などの原因になる場合もあります。こまめに立ち上がって休憩を取ることが肝心です。

座椅子にはさまざまな大きさなデザインの商品があります。部屋の雰囲気や他の家具との組合せなどを考えて選びましょう。腰が痛くなりにくいおすすめの座椅子を7点紹介します。