2022.9.30 / お気に入りの植物
もう秋の気配が感じられる季節になってきましたが、今年春の庭のお話です。
ひとつ前の記事で、我が家の庭で育てているシャクヤクの中から、今年の春に
咲いたお気に入りのシャクヤクをご紹介しましたが、今回はその第二弾。
クレマチス編をお届けしようと思います。
我が家の庭では、バラはつるバラも合わせて、おそらく150品種くらいあると
思います。
その次に多いのが、クレマチスです。
おそらく50品種以上は育てていると思います。
今回は、その中から、この春に咲いたクレマチスの中で、特に花が美しかった
品種をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
■エンプレス
こちらは、我が家の中庭で、大型のつるバラ、スパニッシュ・ビューティと
コラボさせているクレマチスで、「エンプレス」という品種。
分類的には、早咲き大輪系(パテンス系)で、旧枝咲きのクレマチスです。
早咲き品種の中でも、超早咲きで、我が家にあるクレマチスの中で一番最初に
咲き出します。
なので、同じ超早咲きのつるバラ、スパニッシュ・ビューティと一緒に
(スパニッシュ・ビューティのつるに絡ませるように)誘引しています。
著名な育種家、レイモンド・エヴィソンとポールセンローズ社の共同作出品種で、
ポールセンローズ社のリーガルコレクションの品種です。
後述する「ジョセフィーヌ」というクレマチスを片親に持ち、花芯が細かい針状に
なっているセミダブル咲きのクレマチスです。
花径が15センチほどにもなる大輪花で、花色の派手さも手伝って、インパクトが
ある上、多花性で「群」となってよく咲き、遠くからでもよく目立ちます。
旧枝咲きなので、大きく育てて、枝を高い位置まで誘引できるので、
風景も作りやすいです。
とても素晴らしい品種で、特に気に入っています。
花と花芯は咲き進むと白く変化し、少し優しい雰囲気に変わります。
外側の花弁が先に散っても、中心の花芯は長く残り、表情を変えながら、
長く楽しめるという点でも、とても優秀な品種だと思います。
■フェアリーブルー
クレマチスはバラにはない青い花を咲かせる品種も多く、その点でバラと風景
をデザインする上でとても重要なアイテムと考えています。
ですので、僕のお気に入りのクレマチスは青花系に傾いています。
その青花のクレマチスの代表格が、こちらの「フェアリー・ブルー」。
(別名:クリスタル・ファウンテン)
2018年に行ったイギリス・ロンドンでのチェルシーフラワーショーの会場でも
この「フェアリー・ブルー」(イギリスでは、クリスタル・ファウンテンでしたが)が
クレマチスのナーセリーの展示ブースで美しくディスプレーされているのを見て
感動したのを、今でもはっきり覚えています。
この「フェアリー・ブルー」も、早咲き大輪系(ラヌギノーサ系)で旧枝タイプ。
クレマチスの名花、「H.F.ヤング」の枝変わり品種らしく、なんと作出者は、
日本人の早川廣氏(作出年:1994年)。
咲き始めのの頃は、紫がかったパステル調の青紫色ですが、咲き進むに連れて
色が抜けて透明感のある青色に近づきます。
セミダブル咲きの美しい花形は、咲き進むに連れて変化し、多花性で、株全体で
咲いているような仕立てになるのも良いところです。
ラベンダーブルーで、蕊(シベ)が針状に弁化したフォルムが特徴的です。
ひとつ前の記事で、我が家のお気に入りのシャクヤクをご紹介しましたが、
シャクヤクの「翁咲き」に似た咲き方です。
このタイプの花は、ひとつ前で紹介した「エンプレス」同様、外側の花弁が散っても
内側の花芯部分が中から次々と展開して、約1ヶ月近くの長い期間花を楽しめるのが
魅力的です。
■ディアマンティナ
こちらも青系花の八重咲き品種のクレマチスで、「ディアマンティナ」。
(早咲き大輪系(ラヌギノーサ系)、旧枝タイプ)
ひとつ前で紹介した「フェアリー・ブルー」の枝変わり品種のようで、
とてもよく似ています。
咲き始めとかは、ほぼ同じに見えます。
冒頭で紹介した「エンプレス」と同じく、著名な育種家のレイモンド・エヴィソンと
ポールセンローズ社の共同作出品種で、ポールセンローズ社のガルディーニコレクション
品種になっているようです。
2010年に、チェルシーフラワーショーで発表され、同年の新品種トップ10に
選ばれるなど、注目を浴びた品種です。
咲き進むと、「フェアリーブルー」とは大きく異なり、中央が濃い青紫色から
花弁の外側の白くなった部分までの青のグラデーションがとても美しく、
球体のように咲くのも特徴的です。
花期も長く、多花性、コンパクトに仕立てられるので鉢植えにも向くという
非常に素晴らしいクレマチスと言えます。
■ジョセフィーヌ
ピンク系のクレマチスで気に入っている品種のひとつがこちら、「ジョセフィーヌ」。
早咲き大輪系(パテンス系)、旧枝咲きの品種で、こちらも育種家・レイモンド・エヴィソンとポールセンローズ社
の共同作品種で、ポールセンローズ社のリーガルコレクションの品種となっています。
我が家では、中庭のサンルームのガラスの壁面に、つるバラ・ピエール・ド・ロンサールとコラボさせて
誘引しています。
ちょうど、ピエールと花期が合うという点も、多くの方が、このジョセフィーヌとピエールをコラボさせておられる
理由のひとつかと思います。
花は、八重咲きというより「万重咲き」といった方が良いほど、ゴージャスな咲き方をします。
これまでにご紹介してきたクレマチス同様、外側の花弁が散っても内側の花弁が次々と展開してくるため、
長期間、花を楽しむことができる上、花の形が変化していくので、別の品種が咲いたのかと思うほど
風景が変わっていくこともその魅力のひとつと言えます。
■ミゼット・ブルー
こちらは、青系の花の旧枝咲きタイプのクレマチスで「ミゼット・ブルー」。
このクレマチスの最大の特徴は、「矮性」ということ。
あまり大きくならないので、鉢植えでコンパクトに育てることができます。
狭い小さな庭や、他の植栽の足元をカバーしたいといった時に重宝します。
花も小ぶりで鮮やかなラベンダーブルー、多花性という点も魅力的です。
今年、それに加えてこのクレマチスの新たな魅力を発見しました。
それが、新芽(葉)の鮮やかなライムグリーン色です。
新緑感が半端なく、同じライムグリーンの葉を持つイタヤカエデや、ギボウシのシェードファンファーレなどと
合わせると、フレッシュグリーンゾーンを構成してとても爽やかで目を惹くガーデンを作れることに気づきました。
■アラベラ
矮性のクレマチスの代表格と言えば、こちらの「アラベラ」。
インテグリフォリア系の新枝咲き品種で、冬場は地上部がなくなってしまいます。
50センチ〜1.5mくらいの半つる性のコンパクトなクレマチスで、四季咲き性も高い品種です。
しかも剛健な性質で、花付きも良い(多花性)く、切り花としてアレンジにも使いやすいということもあって、
長年、人気が高い品種のようです。
上向きに花が咲くため、誘引せず地面や低い位置に這わせてグランドカバー的に使うこともできるため、
今年はアラベラを何鉢も増やし、育成中です。
新芽を摘んで分枝させ、多くの花を咲かせるような仕立てれば、バラの季節に、その足元をブルーの花で飾ることが
できるので、来年はそういう風景を目指したいなと考えています。
■天塩
こちらも、青花系のクレマチスで、「天塩(てしお)」。
分類上は、早咲き大輪系(パテンス系)に分類されるクレマチスで、旧枝咲きです。
かなりの早咲き品種で、我が家では、前庭の隣地境界側の白い木製フェンスに、同じく早咲き品種のつるバラ、
ピンク・カクテルと合わせています。
淡い青紫色の花色は、とても涼しげで、八重咲きの剣弁花、花持ちも良いので、長く楽しめる品種です。
よく、つるバラとクレマチスを合わせるなら、冬に地上部がなくなる「新枝咲き」のクレマチスが良いと、
クレマチスの教則本に書かれていますが、確かに花後に地上部をばっさり切り戻せる「新枝咲き」品種のクレマチス
は管理が便利ですが、この「天塩」のように「旧枝咲き」のクレマチスは、冬に地上部が残り、その残った枝は
クレマチスの割にしっかりしていて、誘引ができるので、つるバラの誘引後に、クレマチスの枝を重ねるように
誘引できるのは、庭をデザインする上で、とても大きな魅力のひとつです。
その「クレマチスの誘引」の醍醐味を気づかせてくれたのが、この「天塩」という品種のクレマチスです。
■アンドロメダ
こちらは、青花系のクレマチスが好きな僕の庭では珍しい、白花系のクレマチスで
「アンドロメダ」という品種。
分類状は、早咲き大輪系(パテンス系)、旧枝咲き品種ということになっていますが、
我が家の庭では、あまり「早咲き」の印象がなく、
むしろ遅咲きのつるバラ「モーツアルト」と花期が合うので遅咲きではないかと
思うほどです。
澄んだ白色の花弁に濃いピンクの筋が花弁の中央に入る、個性的な花が魅力です。
花径も小ぶりで、一緒に合わせている一重咲きで房咲きするつるバラ、モーツアルト
との相性も良く、色はピンクと白の2色が、花の中央と花弁とが逆転していて
対照的なのと、尖った花弁の「アンドロメダ」と丸弁の「モーツアルト」が
同じく対照的なのが、面白い組み合わせになっています。
我が家の前庭の小壁にこのクレマチスとつるバラを誘引しているのですが、
とても気に入っているゾーンです。
■ビル・ド・リヨン
こちらは、我が家の庭では珍しい、濃い赤紫色のクレマチスで、「ビル・ド・リヨン」。
分類上は、遅咲き大輪系、もしくはジャック・マニー系の新枝咲き品種とされています。
少し蛍光色を思わせるような刺激的な赤紫色の花は、庭でとてもよく目立ちます。
花は平面的で一見すると平凡に見えますが、割と多花性で存在感のある
クレマチスと言えます。
こういうインパクトのある花を持つクレマチスも庭には是非欲しいところです。
■プールサイド
こちらは、昨年の冬に親しくしている園芸店さんよりおすすめいただいて
我が家の庭に導入したクレマチスで、「プールサイド」という、
及川フラグリーンさんのオリジナル品種です。
育て始めてまだ一年も経っていませんが、最新品種のひとつということで、
剛健で育てやすい気がします。
分類上は、ジャックマニー系の新枝咲きなので、冬には強剪定できます。
青色系の花ですが、他の青系品種とは一線を画すような透明感のある花色が
特徴的で、筋状のグラデーションがかかり、爽やかな印象がするクレマチスです。
ネーミングもどことなく可愛らしいのも魅力です。
■ビオラ
こちらは、青花系のクレマチスの中でも、代表的な品種のひとつで、「ビオラ」。
分類上は、遅咲き大輪系(新枝咲きタイプ)になります。
確かに、他のクレマチスよりかなり遅くに咲き出します。
地球温暖化の影響で、バラの開花が早まっている中で、6月〜7月に掛けて
たくさんの花を咲かせる遅咲き品種のクレマチスは、バラと合わせるのが
難しくなっている気がします。
ただ、この「ビオラ」はその名前の通り、深いすみれ色の美しい花をたくさん
咲かせる多花性で、地下も剛健で、枝の下の方からもたくさん花を咲かせるので
オベリスクなどに巻き付けで仕立てるのに向いているように思います。
生育旺盛なので、こまめに伸びた枝を誘引すると姿良く仕立てることができると
思います。
■ロマンティカ
こちらも、同じく遅咲き大輪系(新枝咲きタイプ)のクレマチスで、
多花性で有名な品種の「ロマンチカ」。
かなり黒っぽい濃紫色の花で、シベがゴールドに近い色なので、
シックな雰囲気が感じられるクレマチスでです。
昼と夜の温度差が激しい時期は色が濃く、ほぼ黒に近い色で咲くらしく、
大株になると「黒蝶が飛んでいる」ように見えるそうです。
そんな風に育ててみたいクレマチスです。
■周防(すおう)
こちらは、今年春、近所のホームセンターで安売り苗として売っていたものを、試しで購入したクレマチスで
「周防(すおう)」という品種です。
その名前からしても、日本で作出された古い品種だと思いますが、あまり情報がない(育てている人が少ない?)
品種です。
しかし、このクレマチスが咲くと、その美しさに驚きました。
青花系ということで購入しただけですが、この青の花弁にうっすらと浮き上がる「泡のような」細かい
グラデーションが見事でした。
日本人の美意識を反映したような美しい花に魅了されました。
うまく育てて、もっとたくさん咲かせてみたいと思うクレマチスです。
■大流(オオナガレ)
こちらも、今年の春に、たまたま行ったホームセンターで、見かけない品種のクレマチスを売っていたので
試しに購入した品種で、「大流(オオナガレ)」。
分類上は、ビチセラ系の新枝咲きタイプのクレマチスですが、特徴は、この切れ込みの鋭い、細長い花弁です。
しかも青さが他の青花系のクレマチスより、一段と際立っています。
日本名の品種が付いているので、日本で作出されてクレマチスだと思いますが、和の風情を感じます。
かといって、和風の庭だけでなく、洋の庭にも合う不思議なポテンシャルを秘めています。
大切に育ててみたい品種です。
■日向(ひなた)
最後にご紹介するのはこちらのクレマチスで、「日向(ひなた)」。
これもホームセンターで激安価格で売っていた、聞いたこともない品種のクレマチスでしたが、
ものは試しにということで、育ててみたところ、こんな美しい花が咲きました。
この手の濃い赤ピンク色のクレマチスは、ドクターラッペルなど、いくつか有名な品種がありますが、
この「日向」は少し反り返るように咲き、ただ単に派手で下品な感じがしないのが不思議です。
また、その名のとおり、太陽に向かって咲き、とても剛健で丈夫な品種というのも嬉しいところです。
我が家のクレマチスは、毎年暑い夏を越せず、何度育てても枯死してしまう品種がありますが、
この「日向」は、耐暑性にも優れているような気がします。
如何でしたでしょうか?
現在、我が家の庭で育てている数十種類のクレマチスの中から、今年とても良かった、印象的なクレマチスを
いくつかご紹介いたしました。
派手好きではあるので、少し傾向が寄っているかもしれませんが、バラや他のクレマチスとうまく絡めながら
風景を作れることにこだわりを持って品種を選んでいます。
クレマチスも、バラ同様、多くの種類があり、人それぞれの好みがあると思いますが、
皆さんのクレマチスの品種選びの参考にしていただければ幸いです。
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