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専門家「風景」をつくるガーデニング術

立体寄せ植え、信楽焼テラコッタプランター

居場英則

4月に入り、庭の植物たちが一斉に花芽を付け始めています。

我が家の庭は、クリスマスローズや水仙が終わり、ユキヤナギの白い花も

もうほとんど散ってしまいました。

今年は、記録的な速さで桜が咲き、4月もまだ前半だというのに、我が家の

早咲きのバラも咲き始めています。

そんな中、今回は我が家の庭で今、ひと際異彩を放っている寄せ植えをご紹介

したいと思います。

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こちらが、我が家の前庭で異彩を放っている寄せ植えの鉢です。

正確に言うと、信楽焼でできたテラコッタ製の鉢に、様々な植物を植え付け、

それを三段重ねにしたものです。

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このテラコッタ製の植木鉢、滋賀県・信楽町のとある信楽焼の店先で見つけたものです。

信楽は、我が家のある奈良市から車で小1時間ほどの場所で、

陶器のうつわの収集が趣味でもあるので、良く通っています。

車で通りすがりに見たこの異彩を放つ植木鉢、一見すると土管のようにも見えますが、

良く見ると、テラコッタ製の鉢が三段に積み上げられています。

スタジオジブリのアニメに出てきそうな、とても有機的なフォルムをしています。

テラコッタフェチでもある僕の目が、この不思議な造形物に釘付けになりました。

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こちらは、斜めから見たところです。

それぞれの鉢は、側面に6カ所の小穴が開いていて、その穴に植え込んだ植物が

顔を出し、上部の大きな開口部は鉢を重ねられるように設計されています。

店主に聞きましたら、昔は信楽のあちこちで作られていたそうですが、

今はどこも作っていないとのこと。

僕にとっては新品より、この風化していい味になったものの方が良いので、

この雑草の生えたままで良いから売ってもらえないか、聞いてみましたが、

売り物ではないから・・・とやんわりと断られてしまいました。

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半年ほど経って、また信楽を訪れることがあり、別の信楽焼の店先で、

同じようなテラコッタ製の鉢を見つけました。

前の店で見た鉢と比べると、側面の穴がこちらの方が一回り大きく、

どことなく宇宙人の顔のように見えます。

同じ型で作っていた大量生産品かと思っていましたが、製作所によって、

微妙にディテールが異なっていたのかもしれませんね。

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こちらは、二段重ねで2つしかなく、店主に売ってくれるか聞いたところ、

売っても良いが、もう売っていない珍しい商品だからと、

びっくりするような高額を提示されたので、購入を断念。

なかなか諦めきれず、前に見つけた店へダメもとで向かいました。

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その店では、以前のまま店先に野ざらしのまま置かれていました。

店主に再交渉したところ、この日は店主の機嫌が良かったのか、雑草の生えたままで持って帰ってくれるなら、

売っても良いとのこと。

お値段も、中古品だし、ほぼタダ同然の金額で譲っていただけることになったのです。

想いは通じるものですね。

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自宅に持ち帰って、早速、雑草を抜き、土を出して鉢を空(カラ)にするところから始めました。

周りのテラコッタ鉢と全く同じ色で、庭の風景にも馴染みそうです。

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中のモノを全て取り去り、キレイに水洗いしたら、この通り、見違えるようになりました。

中身がなくなり、テラコッタだけになると、より一層独特なフォルムが際立ちます。

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水洗いして、テラコッタが水分を含むと、少し赤く染まります。

風化して、一部苔むしているところは、それが味なので、キレイに洗いすぎず、残しています。

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底には水抜き穴が設けられています。

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側面の穴の大きさが違ったように、底穴も製品によってマチマチだったんでしょうか?

こちらの底の穴は小さく、水洗いした水分が残ってしまいます。

このままでは、水はけが良くありませんので、少し手を加えます。

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陶器やコンクリート用のドリルを使って、テラコッタ鉢に穴を開けます。

底面が結構に広いので、小さな穴を何カ所も開けて水はけが良いようにします。

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空の状態で、このテラコッタ鉢を三段積みにしてみました。

我が家の前庭、玄関アプローチ(ガラス扉横)に置いてみました。

ここは、水勾配をとるため、床(地面)が傾いているので、

三段積みのテラコッタタワーは、ピサの斜塔のように傾いてしまいます。

どこか水平な地面を探して置かなければなりません。

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三段積みのテラコッタタワーは、それぞれの階(段)でぐるぐると回転できるので、

側面の穴の位置も自由に変えられます。

側穴に植え付けた植物の位置も、太陽の向きに合わせたりして、

自由に変えられるのが良いですね。

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今年2月、いよいよこの信楽焼のテラコッタプランターに植物を植えることにしました。

どんな植物を選び、どんな順番で(配色で)植え付けるか、センスが問われるところです。

庭づくりを手伝う友人が苗の選別とカラーリングを担当してくれました。

枝垂れる植物、こんもりと茂るもの、葉色の濃淡などを考慮し、立体的に見えるよう意識したそうです。

一段に付き6カ所、全部で三段、18カ所に加え、最上段にはてっぺんの大きな開口部にも植物を植えることが

できるので、結構な数の資材(苗)が必要になります。

コストパフォーマンスや見栄えを考慮して、今年はパンジーやビオラを中心に、

ハーブ、ヘデラ、イチゴなどをセレクトしました。

最上部の平坦な部分にはルピナスをセレクトしました。

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これらの資材(植物苗)を、配色を考え、三段のテラコッタ鉢の側面の穴に植え付けました。

使う資材(植物)の種類や植える位置、積み重ねる順番によって、無限のバリエーションが生まれます。

また季節によって、着せ替えすることができるため、オールシーズン、様々な風景をつくることができます。

このあたりが、このテラコッタプランターの面白いところかと思います。

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まだ小さな苗を植え付けただけなので、パンジーやビオラも小さく、

とても貧相に見えますね。

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ひと月ほど経った3月、だいぶ植物が茂ってこんもりとしてきました。

瑞々しい新緑の緑とテラコッタ色が、良いコントラストをなしています。

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太陽が当たる向きによって、波状にくびれたタワーに陰影が生まれ、

より趣き深い風景になります。

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そして4月。

駐車スペースと一体となった我が家の前庭は、春を待つ植物たちの圃場のようになっています。

鉢植のバラやシャクヤク、竹支柱をつけたクレマチスの鉢、

フジやジャカランダなどの育成中の大物の鉢植えなど、所狭しと並んでいます。

その中に埋もれるように、信楽焼のテラコッタタワーが佇んでいます。

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側面の穴に植え付けたパンジーやビオラもこんもりと茂り、

たくさんの花を咲かせています。

一番上の鉢の正面に見えるマットなピンク色の花はイチゴです。

パンジーやビオラなどの園芸種ばかりでなく、ところどころにハーブや

イチゴなどを加えることによって変化が生まれます。

最上段に植えたルピナスもだいぶ大きくなってきました。

塔状に花を付けるルピナスが咲けば、さらに立体的な風景になるはずです。

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こちらは、反対側から見たところです。

庭に植栽しているパンジー・ビオラ同様、このテラコッタタワーでも

青~紫系統の花だけをセレクトしています。

それ以外に、マトリカリアという白い花を咲かせるキク科の植物も植栽しています。

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360°、様々な方向から眺めることができます。

こちら側の2段目には、ちょっと変わった形の葉を持つヘデラを入れています。

それぞれの方向に正面を作ることができ、普通の寄せ植えとは全く違う

面白さがあります。

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強い日が差し込むと、陰影が生まれ、また別の表情を楽しめます。

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バラが咲くまでのこの時期、日照条件のより西向きの我が家の前庭は、まさに圃場なので、

せっかくのテラコッタタワーが他の植物に埋もれてしまうので、中庭へ移動させることにしました。

三段積みの鉢を一旦解体し、バラバラにして中庭へ運びます。

植物が結構に育ち、土も水分を蓄えているので、植え付けた時よりずいぶんと重くなりました。

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これを再び積み上げていきます。

最上段は変えることはできませんが、二段目と三段目は入れ替えることができます。

そうすることで、また違った風景を作れます。

さまざまな変化をもたらすことができ、とても面白いガーデン資材だと思います。

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三段に積み上げた様子を真横から見たところ。

最上段のルピナスはまだ咲いていませんが、側面のパンジーやビオラは満開で、

美しい風景を作ってくれています。

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もう少し近寄って見てみましょう。

底に向かってくびれたテラコッタの側面に、風化して苔むした風情が表れています。

とても造形的で、美しい風景が作れ、大満足しています。

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こちらは、真上から見下ろした様子。

塔頂部には、星形の葉が美しく並ぶルピナスが植わり、その周囲に、

側面の穴から飛び出すように、パンジーやビオラ、イチゴなどが生えています。

上から眺めても、とても面白い造形です。

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こちらは、斜め上から見たところ。

最近、イタリアや中国では高層マンションのバルコニーというバルコニーに

高木を植えて、「都市の森」をつくる事例がありますが、

何となくそんな風景に似ている気がします。

寄せ植えの鉢を立体的(重層的)に配置したような景観です。

他であまり見たことがない、面白みがあります。

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我が家の中庭には、お気に入りのテラコッタ製のホースリールがあります。

(→こちらのdinosさんのブログのバックナンバーでもご紹介しています。)

どちらもシンプルな円形の造形で、呼応するかのように馴染んでいます。

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この重ねて置けるスタイルの信楽焼のテラコッタプランター、

以前は需要があってたくさん製作されていたらしいのですが、

今はもうどこも作っていないそうです。

さまざまな使い方ができるし、飾る人のセンスによってさまざまな風景を

デザインすることができるスグレモノです。

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いろんな人が様々な使い方を提案すると、きっとニーズが生まれるはず。

ガーデナーのクリエイティブ心をくすぐる面白い製品だと思います。

どなたか、復刻して製作してくれる人が現れないかな~、なんて思います。


如何でしたでしょうか?、今回の信楽焼テラコッタプランター。

テラコッタ好きの僕の、大のお気に入りのガーデン資材です。

皆様にも是非お勧めしたいところですが、今のところ、ほとんど手に入らないものです。

ただ、同じように、埋もれて日の目を見ないガーデン資材はきっと他にもあるはず。

そんな掘り出しものを見つけるのもガーデニングの楽しみのひとつではないでしょうか?


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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