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専門家「風景」をつくるガーデニング術

奈良・唐招提寺の蓮

居場英則

僕の住む街、古都・奈良。

奈良時代から1300年以上も続く街には、東大寺や興福寺、春日大社など、有名な寺社仏閣が多数残っています。

その中で、南都六宗のひとつである律宗の総本山・唐招提寺は、苦難の末、中国から来日を果たされた鑑真和上が、

戒律を学ぶ道場として開かれた寺院です。

1998年には、古都奈良の文化財の一部として、ユネスコより世界遺産にも登録されています。

その唐招提寺とご縁があって、現在、開祖・鑑真和上ゆかりの「薬草園」を復興するというプロジェクトに、

ガーデンデザイナーとして、関わらせていただいています。

  ※ 唐招提寺・薬草園プロジェクトについては、バックナンバー記事をご覧ください。→ 

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唐招提寺は、蓮の花で有名で、西大寺・喜光寺・薬師寺の四ヶ寺で共催される「西ノ京ロータスロード」にも

参加しています。

今回は、その唐招提寺の蓮について、少し紹介をしてみたいと思います。

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こちらは、南大門正面に見える唐招提寺の金堂(国宝)。

奈良時代に建立された寺院金堂としては現存する唯一のもので、均整の取れたプロポーションがとても美しいです。

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その金堂前に、初夏になるとたくさんの蓮鉢が並べられます。

蓮は、泥水の中から生じる清浄な美しい花を咲かせる姿が、仏の智慧や慈悲の象徴とされ、

仏教と深いつながりがある植物です。

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蓮の鉢の向こうに見えているのは、唐招提寺の行事にひとつ、「うちわまき」が行われる鼓楼です。

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大きな蓮の葉の中から、すくっと花茎が伸び、ピンクの大輪の花を咲かせています。

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花弁が開いた姿がとても美しいです。

この蓮の花形が、多くの仏像の台座としてデザインされています。

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さらにクローズアップしてみます。

とても神々しい花だと思います。

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唐招提寺の蓮は、品種ごとに分けられ、様々な形の蓮鉢に植え付けられています。

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こちらは、境内奥にある建物の前に並べられた蓮鉢群。

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門を背景に、大きな蕾がいくつも上がっています。

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花が開く前もとても美しいです。

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花色も様々で、こちらは典型的な花色の蓮で、蓮の葉とのコントラストも

とても綺麗です。

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こちらは、桃のような形をした蓮の蕾。

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こちらも、花弁の先がほんのりと赤く染まって、何とも艶めかしい姿です。

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こちらは、金堂の西にある、薬草園計画地。

僧侶になる儀式、受戒を行う施設「戒壇」の位置しています。

こちらにも多くの蓮鉢が並べられています。

普段は見学不可のエリアですが、蓮の花が咲く季節には開放され、自由に見学することができます。

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薬草園計画地の奥から見たアングル。

蓮の見学がしやすいように、石畳が設置されています。

現在進めている薬草園プロジェクトでも、この同じ場所に蓮鉢を並べるように

配置計画を行っています。

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薬草園計画地の北側にある戒壇を背景に、蓮の葉が旺盛に茂り、

その中から、花茎がすくっと伸びています。

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蓮は、花も見事ですが、その葉もとても美しいです。

大きな蓮の葉に雨水がたまり、ガラス玉のように輝いて見えます。

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こちらに設置された蓮鉢の蓮も、美しく咲いていました。

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少し斜めから見る、蓮の花形がとても美しいと思います。

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蓮の花と、大きな葉の対比も面白いです。

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こんな八重咲の白花の蓮もあります。

まるでバラのようです。

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こちらの花も大輪で、とてもインパクトがあります。

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この薬草園計画地にある、鉢鉢の植え替え作業に、ここ2年ほどお誘いをいただいて、参加させていただきました。

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蓮の植え替え作業の時期は、3月中旬。

境内に多数ある蓮鉢の植え替え作業を、順次行っておられます。

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最初にお手伝いさせていただいたのが、蓮鉢の底に溜まった泥の清掃。

ゴミや土の塊を除去し、サラサラの細かい粒子の泥水にしていきます。

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結構、泥まみれになる作業で、スタッフの皆さんも汚れても良い格好に着替えて、黙々と作業を続けておられます。

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一方、蓮鉢から取り出された蓮の根(いわゆるレンコン)は、泥ごと薬草園計画地の地面にひっくり返して

置かれています。

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これから、植え替え用のレンコンを取り出していくのですが、カラスもレンコンを狙って飛んでくるので、

作業開始するまでは、ブルーシートやワラを掛けて、カラスに食われないように注意が必要です。

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蓮鉢から地面にひっくり返したレンコンの状態です。

この泥の中にレンコンが埋まっているのです。

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一鉢づつ、丁寧に水洗いをしながら、レンコンの採り上げていきます。

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土の中で、レンコンはとぐろを巻くように伸びているので、折らないように慎重に作業を行います。

水を掛けながら、徐々に泥を落としていきます。

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状態の良いレンコン部分を3節残して、あとは包丁で切って取り分けます。

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品種が分からなくなると困るので、品種プレートを段ボール箱に入れながら、掘り上げたレンコンを

取り分けていきます。

スペアも含めて、一品種3本程度、レンコンを選んでいきます。

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凍傷にあたって紫色に変色しているものや傷のついたレンコンは除いて、状態の良いものから使います。

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植え替え用のレンコンを蓮鉢の泥水の中に優しく沈めていきます。

レンコン全体が泥水の中に隠れるようにします。

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唐招提寺では、約40種類ほどの蓮があるとのこと。

これらを品種ごとに鉢に植え替え、品種プレートを設置していきます。

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植え替えが終わった蓮鉢には、カラスにレンコンを食われないよう、防鳥ネットを掛けていきます。

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概ね、ネットの設置が終わったところです。

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このように、多くの手間と時間をかけて、蓮を奇麗に咲かせる努力の賜物で、毎年美しい蓮の花を拝見することが

できるのです。

是非、6月~7月の蓮シーズンに、唐招提寺へとお運びいただけましたら幸いです。


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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