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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

ナチュラリスティック&ピート・アウドルフを@11月30日池袋コミカレにて 

吉谷桂子

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現状篇 デザイナーの仕事はある面。時代が何を求めているのか、先読みしながら新商品を開発するようなところがあります。この様↑な雰囲気の眺めを初めて見たのが、何十年前なのか思い出せないのですが、それは、とても新鮮ですぐに惹かれました。もともとシードヘッドになった植物の眺めや「草原風」が昔から好きでした。都会で育ちましたが、草っ原には憧れがあります。
春から夏を経て、秋、形が変化して美しくなった植物を見ると、何かクラフトに使えないかと思ったり。
25年くらい前、イギリスの海沿いで晩秋の草原&林を、杉本博司さん小柳さんたちと歩いていた時(吉谷家は、その頃「民宿吉谷」と呼ばれて、杉本さん専用の宿だった。当時既に「世界のSUGIMOTO」だったけれども、ホテルよりも快適だったみたいだ)、私が盛んに枯れた植物を集めていたので(綺麗だったのでリースでも作ろと思って)超ミニマリズムでコンテンポラリーアーティストである彼らに、「なんでそんなもの集めるの?」と聞かれたことが忘れられない。彼らはそういうものを飾らないミニマリストだから。綺麗だと思うのはキラキラ輝くものだけでなく、茶色くウェーザードしたものにも美を感じるし。(それにもよりますが)何を美しいと思うか。
これは難しい問題です。
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ピートさんに影響を与えたと言われているミーンルイスの庭。ミッドセンチュリーのモダンガーデン。
ミニマリスティックな仕上げに憧れます。なんか、どうしてもいろいろ植えたくなってしまう私。
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必要な要素がバランスよく。コンポジション。
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ミーンルイスの庭でもっともシンボリックに植わっていたルス・ティフィナ!
北アメリカの自生植物ですが、ピートさんの植栽にはあちらこちらに登場してきますよね。
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かと思うとこうした宿根草のエリアもあって
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もしかしたらルイスの時代にはなかった植物も入っているかもしれませんが、そのメソッドは生かされているはず。
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7・ピートさんの設計した庭、あるいはその影響、関係のある庭はとにかく、美しい!あるときはかっこいい!です。
でも、ここで一度、お伝えしたい。グラスを使った植栽が『ナチュラリスティックガーデン』ではないこと、特に、日本ではグラス=ローメンテナンスでもない。グラス類は品種を間違えると、攻撃的だったり侵略的な場合もあるので注意が必要です。
昨今のSNS等では、そのように勘違いしている人少なくないらしいので最初にお伝えしておきます。前述の歴史篇からも、オーナメンタルグラスのブームは20世紀末のヨーロッパの雨不足とも無関係ではありません。 
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2018年8月のPiet Oudoluf private Garden
芸術的に美しい庭かどうかという点ではイギリスに存在する大小公私数千か所の庭はどれも素晴らしいですが、ピートさんの庭が注目される理由、その人気の理由は??
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まず、ピートさん。背が高くてハンサム(笑)妻のアンニャさんがビジネスパートナーとして、もっとも、優秀だと思える。本当に素敵な方だった!
デザインセンスとビジネスセンスも素晴らしかった。辣腕のマネージャーなのではないですか?
去年のアンニャさんと7年前のアンニャさん、どっちもMOMAなどコンテンポラリー美術館 で売っていそうなモダンアクセサリーもスタイリングもかっこいい。↑2018年8月の写真
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妻のアンニャさんと「はじめまして」のときの印象的な出来事があります。2012年6月の写真
2012年6月のガーデンツアーで フメロのピートさんをご自宅に尋ね、初めてお会いした時のこと、
最初は、お会いできない。と言われていましたが、アンニャさんが対応にでてくれました。
そこでおもわず
「ピートさんは、私にとって、世界で最高のガーデンデザイナーです」と申し上げたら
No ,He is an artist! 」と返され・・・(汗!)私は
「Of course !」としか返事ができませんでした。ごもっともです。(しまった。最初からそう言えばよかった)
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以下は写真は後から入れる予定ですが、時間の関係で文章のみで、この内容をコミカレの講座では
写真入りで、解説いたします。
庭を、絵画や彫刻のような芸術という視点で捉え、表現手段だと語るのは、チャールズ皇太子を含め、
プランツエコロジーの旗手(先端)だったベス・チャトーさんもそうです。
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人を感動させるような庭を作る人は、皆そうなのだと思います。
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その上で、地球温暖化の21世紀、今の時代ほど自然界に負荷をかけている時代もありません。
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プランツエコロジーは必須の課題です。
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無農薬、無肥料の考え方は、イギリスでも90年代早くからベス・チャトーさんが実践し、
夏の徹底的なドライウェザーに対応する乾燥に強い植物に注目する必要もありました。
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注目の理由は、あげればきりがありませんが、ピートさんは植物を知り尽くしたプランツマンであり、
その植物を絵の具に見立ててランドスケープというキャンバスに絵を絵を描く芸術の才能があったこと。
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また、その詳細なメソッドをわかりやすく、著書や図面で惜しげなく一般に公開していること。
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私はかつて、ピートさんほどそのデザイン・メソッドを開けっぴろげにするひとを見たことない。
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そして、なによりも、2012年のフロリアードでも掲げられた(このメソッドはピートさんの言ではありません)
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「未来の庭に向けて必要な 4つの庭の基本要素」のメソッドを、ピートさんも満たしています。

1、自然な雰囲気( Natural appearance)

2、手入れが楽(Maintenance-friendly)

3、生物多様性(Biodiversity)

4、 耐久性と長寿(Dureblility & Longevity)

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私たちも日本の庭で、上記の基本要素はそのまま受け入れられる要素でしょう。
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現在の問題提起
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ピートさんの言う Think about plants born to dead には、多いに影響を受けましたが、日本ではまだ、枯れた草花が見える庭は受け入れられにくく、ましてや夏の台風や大雨で宿根草がぶざまに倒れ景観を乱します。
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日本で実行する場合はもうすこし違った視点。
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例えば、伝統にヒント。日本庭園にヒントを得るような根本的なデザインセオリーの見直しや
日本自生種の植物に目を向けるような視点がないと、ただ、似たようなものを作ろうとしてもそれには無理があると思います。
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ニューヨークのハイラインのビジネス的な大成功には驚かされますが、モダンデザインの要素と現代美術やハイブランドなどの様々な要素と時代のニーズが合致したと思います。
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ただ、日本の気候はヨーロッパやアメリカと違います。
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植生的には、アジアは参考になる。(だからシンガポールガーデンシティツアー!見に行きます!)
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私自身も13年ほど前にテレンス・コンラン卿のプロデュースによる六本木のボタニカの庭の設計をした時は、少なくともピートさん的なもの(流行の先端・ナチュラリスティック)を作ろうとしていましたが、気候とのバランスで随分悩みました。
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ある種のグラス(パニカム)はうまく育ちましたが、むしろ日本の気候によって
攻撃的だったり侵略的な品種も多く、うまくいかないものは徐々に排除せざるを得ませんでした。
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しかし、デザイン・メソッドは大いに参考にしました。
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マッス・プランティングやスパイクプランツ、ボタンプランツの考え方。
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ここには「どんな植物が新しい景観を安定的にもたらすか。何が流行って廃れるか。時代は何を求めているのか」を先読みしながら新商品を開発するようなマネジメント。
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個人の庭では個人の好きで良いのですが、公共の庭では、
「どんな植物が新しい景観を安定的にもたらすか。何が流行って廃れるか。時代は何を求めているのか」も絡まないとうまくいかないでしょう。
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庭を 「芸術」という視点と、マネジメントやマーケッティングビジネスという視野でも見て行く必要もあると考えています。
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また、さらに、ピートさんのように十分な「栽培経験や知識」の上で「美学」をも強調できる視点が必要。
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「美学」なく、植物を育てるだけの園芸、栽培熱だけでは、景色の美観とも解離するという厳しい課題にも直面します。
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先日も静岡県での講演会の最後の質問に、「オキナグサを種から育ててみたいんですけれども、どうしたら」
と、質問をいただきました。
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私はオキナグサが大好きで、苗から育てたことは何度もあるのですが(写真は中之条ガーデンズにて。シードヘッドが素敵!!!)でも、実は
オキナグサをタネから栽培したことがないので、お答えできない、とお断りした上で、「家で種まき栽培をした植物が、何十株も増えて狭い庭の空間を散らかすので、種まきは楽しいけれども、眺めの美観を望む時、種まきは躊躇する場合が多いのです。
育った植物の全てを庭に植えるか、誰かにプレゼントしないと精神的に辛いからです」という様なお答えをしました。
園芸の引き算には永久に悩まされています。センチメントで、美学の実現が難しいです。
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これから日本の庭が「美しくなる」かどうかは、草花の経験を積み、自分の目を養う、あるいは、鍛えることで私たちの未来にかかっている。
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ただ、ナチュラルなだけでは、ダメで、他者を引きつける眺めの魅力がなくては、
そこには、きっと芸術の香りがするような。
ただ、満開の花でないと、興味を持ってくれない見学者の状況はそう簡単に変えられない様にも思います。
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見学者の目も肥えていないと成立しないけれども同時に、作り手の絵画的素養もさらに必要と思う。
ありふれた景色に思われがちなものでも、組み合わせや相性で
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美しく人の心を動かすことがあると信じて。
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私たちにも、努力の余地がいっぱいあるということだと思います。
まずは、知見を広げてみることから。私は結局、デザインの仕事をしてきた40年と途中からガーデニングに関わってきた30年弱の間、いろいろな体験やアンテナにかかったことからヒントをもらって、それを糧に前に進むより他に道がなかった様に思います。だから!固定観念ではなく実学のすすめ。

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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


Instagram@keikoyoshiya 

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