お庭からベランダ、エクステリアなどガーデニング回りをスタイリッシュに演出

 

専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

TOKYO PARK GARDEN AWARD のモデルガーデンの考え方 その1

吉谷桂子

B91A65AC-B310-4F33-B255-78F554E31204.jpeg

この秋、代々木公園内に作庭の計画をしているのは、宿根草を中心とした庭です。

実際の一般公開は、来年の春、桜の咲く頃以降の予定です。

↑は、現場を見て最初に描いた鉛筆スケッチ、完成イメージです。宿根草のフィールドのような。

アイデアを考えていたのは、まだ気温の低い時期でしたが、描き終わった時は、梅雨に入っていました。

植物のことを考える時、その季節、気象状況に左右されやすいのですが

宿根草の最盛期は梅雨の終わるころ。実は日本においては厳しい季節の始まりでもあります。

イギリスの6-7月とは大違い。

IMG_3080.jpeg

着彩スケッチは 8月、現実に宿根草はシードヘッドになったものも登場する時期です。

同時に実際に植えたい植物も8月の終わりの発注。すると、思っていた品種の在庫切れがいろいろ。

この業界では、植え付けの半年前、だいたい六月に予約を入れるので、これは懸念材料でした。

いまのところ、フロミス・ルッセリアナやアムソニア・フブリヒティがなかったり。

アリウム・ミレニアムがアリウム・サマービューティに。完成イメージのスケッチは、絵に描いた餅

でありながら、デザインのイメージを他者と共有するために有効です。さらに、宿根草の成熟に

3年はかかり、来夏すぐにこうなるわけではないので、ここに、一年草のニゲラなどが参入予定。

IMG_2910のコピー.jpeg

庭の名前は、「Cloud garden」 クモニワ、雲庭です。

プランの段階で、ボランティアで参加を募るガーデニング仲間たちが、植物ベッドに踏み込まずにメンテナンスが

しやすい構造にしたかったのと、水捌けと風通し確保のために、このような形にしました。

ここ数年、土の水捌けや根張りに関して神経質になっているため、レイズドベッド(盛り土花壇)です。

15378048-4D60-44FC-B49B-DF98C41D4736 のコピー.jpeg

↑は、ほとんど最初の打ち合わせの時点で思いついていたスケッチ。即興で、ボールペンで描いた。

ファースト・インプレッションで沸いたイメージ。最初は、雲というよりも、アメーバでした。

当初は、樹木・灌木を植えることができないという規定を知らなかったので、樹木も入っていますが、

現在は、宿根草がメインで。

ロゴタイプはパソコンにあったフォントからの最初のインプレッションから。実は、庭のスケッチよりも先に、

誰がロゴタイプをデザインするのか。そんな話題になる前早々、私が勝手にいくつかの案を出していました。

私の元職の杵柄にて。ノーマルなゴシックやフーツラなどのフォントを使用したロゴも作りましたが

最初から手書き風のロゴで、と思っていて、その後、何日も時間をかけオリジナルを作りました。

草の生えてるロゴなど、あまり見かけないかな。と、思いまして。

オーガニック、生物多様性の意味も込めて、ナナホシテントウ虫のキャラクター付きです。

IMG_3033.jpeg

ロゴによって、若い子たちにも興味を持ってもらいたいので、popなイメージを目指しました。

勿論メインの内容は「アワード」。多くの方々にむけて募集、

ぜひとも、応募をしていただきたいガーデン・コンテストです。

しかし、一年に渡って、ロングライフなコンテスト。審査も数回に渡るので、なかなかの挑戦です。

なので、どんな内容で挑戦をするべきかのヒントになるようなことも明記しておきたく思います。

もちろん、それは募集要項に書いてありますが、ここでは私なりに思うところを。

そして、このたびのコンテストの募集要項に沿って、具体的にどんなイメージか。

IMG_1408.jpeg

20年以上前に、オランダやイギリスで台頭のはじまったニュー・ペレニアル・ムーブメントが

それに近いといえます。でも、オリジナルの考えで迫るアイデアも広く募集中ですので、この考えは一助と思ってください。

New perennial movement (新・宿根草主義)、またの名を、ナチュラリスティック・ガーデニング、あるいは

ナチュラリスティック・プランテング(自然主義的な植栽)の考え方を基本とした、ガーデン・デザインの庭です。

(↑ 今年の北海道銀河庭園 植えたばかりの宿根草、スタキス 'フメロ'  北国北海道なら、美しく夏を越せるはずと、選びました。

「フメロ」といえば、ピート・アウドルフさんの庭のある土地の名です。

でも、代々木には、どうか???実験済みではないので、今回は、選んでいません)

IMG_0016.jpg

さて、いままで、何度か講演会やこちらのブログでも話題にしていきましたが、

ナチュラリスティック・ガーデン、現在、私がベースにしている4つの考えとして

1 Pleasant experince
  快い体験(自然に親しむ)
2 Maintenance friendly
 メンテナンスが容易
3 Biodiversity
 生物多様性
4 Durable
 耐久性
 
1 Pleasant experince 心地よい体験とは? 
サスティナブルな=持続可能な庭作り。というだけ、でしたら、
リュウノヒゲや生長の遅い樹木などで、静かな緑の庭も好きです。良いのですが、今回は
四季折々に変化があり、心地よい、楽しい発見、自然界に見いだすことのできる美しい植物の色や形、
また、季節毎の変化だけでなく、変わりゆく時代。いえ細かくいえば、いっときも同じにならない時間や環境の変化に感受性を開いて、理想的な自然(ナチュラリスティック)の風景を、デザイナーの力量を総動員して、綿密な計算計画の上で再構築する。
結果的に、人の目を楽しませること。
これは、まあぁ!何年かかわっていても、簡単じゃありません。
簡単なようで、非常に難しい。
花が満開に咲いていれば、大多数の方々が満足してくださるでしょうけれども、それとも違う。
そして、オーナメンタルグラスを、雑草でしょう?なぜ? と思う方もいらっしゃる事実と向き合って、20年以上。
春・夏・秋・冬に見所のある品種選びがポイント。一瞬だけ美しく後の季節に問題の起こる品種はNG。植えない!
とはいえ、秋冬の枯れ色、ブラウン、枯れた色=汚いとの評価もあるので、この点も評価の変化に期待しつつ...。
IMG_0019.JPG
また、順序が逆になりますが、下記 2 を満たして、眺めの美しさ。楽しさ。単純ではなく、個人差あり。
2 Maintenance friendly のところでは、栽培環境に合った品種を選ぶ。
なるべく長生の宿根草。季節ごと、数年ごとに植え替えを必要としない。
環境に合った品種を選ぶと植物の倒伏も少ない。しかし、垂直に自立する種類を選ぶのも重要
花殻詰みやまめな剪定をしないとか(連続開花をさせたい時は、花殻摘みはマストですが)
雑草が生えないように、宿根草どうしの植物コミューンを形成し、雑草抜きを減らせる工夫と意識。
2〜3年で植物が成熟すると根っこ同士のコミュニティができて、ほかの雑草が生えない。そうしたことへの適合植物を選ぶこと。
ただし植え付け初年度からそうならないので最初の年の雑草取りは超重要。
基本的に無農薬、無化学肥料だが、たとえば、低潅水(植え付けから最初の半年はその限りではない)
ロウメンテナンスの庭づくりでは、植物に対し過保護にしないことも課題で、その匙加減はちょっと難しい。
いいだしたら、まだまだありますが、本日はこの辺で。
こうした考えは、個人だけでなく公共の庭にも期待できるスタイルといえます。
それで、ニューヨークのハイラインは超有名ですが、ロンドンオリンピック以降、イギリスの街の公共花壇にこのタイプが増えているのでした。


■おすすめ特集

吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


Instagram@keikoyoshiya 

Archives