フォーカルポイント（focal point）とは「焦点」、つまり庭で視線を集める場所のことです。空間を引き締めるのはもちろん、配し方によっては動線を導き出したり、ゾーニングの役目を担うことも。ガーデンデザインの要になる大事な要素です。アーチ、ガゼボ、小屋、スタチューなどの構造物や装飾物のほか、目を引く植物もポイントとして機能しますが、ここでは季節感を気にせずアイテムを中心に紹介します。配置の前に気を付けたいのは、ご自宅の庭の広さをよく確認すること。不釣り合いな大きさのものを置いてしまっては、素敵になるどころか邪魔になるばかり。アイテムのデザインもとことん吟味し、目指す雰囲気にぴったりのテイストをセレクトしましょう。

背の高い鉢やスタチューなどのアイテムは植栽の中でインパクトを放ち、上手に取り入れればとても魅力的なコーナーが作り出せます。やわらかな草姿を合わせて、アイテムのかたい印象をやわらげると良い効果が生まれるでしょう。植栽は特に「手前」と「背景」を意識することが大事です。下の画像は、植込みの真ん中に少年のスタチューを配置した例です。手前は背丈の低い草花で足元を隠し、セントーレアやガウラなどの高さのある草花で背景をつくって、スタチューを植栽の中にほどよく馴染ませています。

下の2つのシーンは、ニワナナカマドを背景にしている例です。こんもりと茂ったジャーマンアイリスやアガパンサスも。アイテムを部分的に隠して、馴染ませるのに一役買っています。こういったふんわりとしたシルエットのものやボリュームのある植物は好相性なので、意識して取り入れてもいいですね。

大きな構造物は確かに目を引く存在ではありますが、ただポツンと置くだけでは美しい絵にはなりません。フォーカルポイントとしてきちんと機能させたいなら、「つながり」を意識することが重要です。例えばアーチやガゼボ、小屋を設置したいのなら、それを囲む背景や、そこへ続く道のことも考えましょう。配置場所からどんな景色が見えるかも、大切にしたいポイントです。それらを眺められる絶好の場所に、ベンチやテーブルセットを置くのがいいでしょう。そうすれば、引いた場所から庭を見たときに、ファニチャーも一体となってひとつのシーンを描き、素敵なフォーカルポイントになります。このように、動線や視線を考慮して庭全体につながりを持たせることで、おのずと効果的な配置場所が見え、立体的な庭づくりが実現します。

おすすめしたいのが、シンメトリーの配置。ふたつの同じアイテムを規則的に対称配置することで、重厚でフォーマルな印象をもたらしてくれます。対に配置するだけなので一見取り入れやすそうに思えますが、気を付けたいのはバランス。まわりの景色の邪魔をしていないか、高さや大きさ、色合いなどを吟味して配置しましょう。また、このシンメトリーの配置は、あまり多く取り入れすぎると「特別さ」が薄まるうえ、かたい印象になって、かえって庭の調和を崩してしまうので注意が必要です。例えば玄関やゲートの前など、ゲストが必ず通る素敵に見せたい場所に用いるとよいでしょう。エントランスなどの前では、建物やエクステリアのデザインとの兼ね合いも重要になってくるので、全体の雰囲気をよく見て、配置するアイテムを選んでください。

動物のオーナメントは、ナチュラルな景観をつくるのに適したアイテム。より映えるように、数は控えめにするのが鉄則です。植栽の陰や樹木の株元などにさりげなく置くと、魅力的なシーンが生まれます。私がこのアイテムを使うときは、実際の動物と同程度の大きさのものを選び、本当にそこに動物がいるかのように演出しています。もちろん、スペースに対して大きすぎるものを置いて調和を乱すようなことは禁物です。

出典：『飾り方の工夫と簡単DIYでもっと素敵にガーデニング』（Garden & Garden編集部 ）