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専門家「風景」をつくるガーデニング術

ネットでオープンガーデン2025「京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)」(全景編)

居場英則

ひとつ前の記事で、僕がガーデンデザインをさせていただいた「京北・香りの里/六ヶ畔・花簾庭(京北バラ園)」の

今年2025年のオープンガーデンの様子を写真画像で紹介させていただきました。

今回は、オープンガーデン開催前(朝一番)に、まだ見学の方がお越しになる前の誰もいないタイミングで撮影した

写真をもとに、ここ数年恒例にしている「ネットでオープンガーデン」と称して、

京北バラ園の魅力をご説明したいと思います。

今年は、日程の関係で、5月中旬~6月中旬の4週間、週末の8日間、オープンガーデンを開催しました。

僕が京北バラ園に行ったのは、2週目の5月31日(土)。

ほぼ満開のいいタイミングでした。

今年は、オープンガーデン開催日のうち、半分ほどが曇りや雨のあいにくの状況でしたが、

5月31日は、快晴とまでは行きませんでしたが、まずまずの天候でした。

京北バラ園には、特に「見学コース」というものは決めていないのですが、一筆書きのように、園内の各見どころを

巡りながら、ネットで見てくださっている方にも、実際のバラ園を歩いているような感覚で見ていただこうと

思っています。

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こちらが、京北バラ園のメインエントランスを入って正面に見える風景です。

棚田の休耕田一枚をバラ園として活用しているのですが、田んぼ一枚分(約300坪)の敷地は、

フラットでバラ園全体を見渡せるようになっています。

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メインの園路は、バラ園の中央に緩やかなカーブを描きながら、奥へ奥へと見学者を誘うようなアプローチに

なっています。

一番エントランスに近いエリアは、色鮮やかなイングリッシュローズを集めたゾーンです。

緩やかなカーブの園路に沿って、バラの花を引き立てるブルーのサルビア(品種はブルーヒル)を植栽しています。

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そして、視線の奥、次の棚田との境目、段差部分に設けた「バラの滝」ゾーンが、視線の幅いっぱいに広がります。

その手前は、香り豊かなオールドローズゾーンとなっています。

山間いの谷筋に位置するこの京北バラ園では、山から里に吹き降ろす風にのって、バラの香りが園内に充満する、

そんな「香りのバラ園」をテーマにしています。

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手前のイングリッシュローズエリアで鮮やかなピンクで咲くバラは、プリンセス・アンです。

その左側から、つるバラのアーチによるトンネルのような空間が、バラ園の奥へと誘います。

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こちらが、つるバラをアーチに誘引したトンネル状の空間。

管理用通路として、奥の棚田へ軽トラックなどが入れるようにしているのですが、その上部につるバラを咲かせる

ために、八連のアーチを設けています。

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アーチを斜めから見たアングルです。

京北バラ園では、周囲の里山風景になじむよう、「和の趣き」のバラ園を、デザインコンセプトに据えています。

ですので、一般的なバラ園にあるような半円形のアーチではなく、ここでは切妻屋根を模した、不等辺三角形の

アーチを、オリジナルデザインで地元のアイアン作家さんに制作していただきました。

その八連のアーチの隙間から、香りのオールドローズゾーン、そして京北バラ園の最大の見せ場「バラの滝」

ゾーンが見えています。

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そして、こちらが、京北バラ園の名物、「バラの滝」です。

バラ園の近くを流れる上桂川(桂川の源流のひとつ)にある「六ヶ堰」という小さな堰(滝)から流れ落ちる水から

インスピレーションを得てデザインした風景です。

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4枚棚田の4枚目と3枚目の間の段差(約70㎝)を活用して、段差を強調し、そこに枝垂れて咲くつるバラ、

群星(白い花)・群舞(淡いピンクの花)という日本のつるバラをランダム配置して、滝を流れ落ちる水を

バラの花で表現しています。

高さ3mほどのところから、滝のように枝垂れて咲く「バラの滝」は、圧巻の風景をつくります。

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こちらは、八連のアーチを一番奥から、メインエントランス方向を見たアングルです。

オリジナルデザインの不等辺三角形の頭頂部の様子が分かると思います。

ここが円弧状のアーチだと、周囲の里山風景とは馴染まない感じがします。

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八連アーチを斜めから見たアングルです。

アーチの隙間から、香りのオールドローズゾーンが見えています。

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八連アーチの側面を外側(香りのオールドローズゾーン)から見たアングルです。

アーチの側面をつるバラが駆け上がって、立体的な風景をつくっています。

もともと田んぼだった場所なので、フラットな敷地で、そのまま木立性のバラだけを植えると圃場のように

なってしまうため、様々な構造物を設け、より立体的な風景となるよう、苦心しました。

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再度、「バラの滝」ゾーンの全景です。

田んぼの横幅いっぱい、約25mほどの雄大な滝の風景を形成しています。

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反対側から見たアングルです。

淡いピンクと白い花をランダムに配置することで、川の水が滝を滑り落ちる際、光があたってキラキラ光る感じを

表現しました。

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こちら側からも引いて、「バラの滝」のほぼ全景が見えるように撮影しました。

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中央の園路からの見え掛かりです。

後方奥に、茅葺き屋根の古民家が見えています。

この借景も、里山風景に馴染む「和の趣き」のバラ園、という風景を形づくる重要なアイテムになっています。

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ここで反対側(南方向)に振り返ってみます。

メインの園路が緩やかにカーブを描きながら、バラ園のメインエントランス方向(右端)へと誘います。

その途中に、家形をした建築物が見えますが、これは建築物ではなく、つるバラを壁面や屋根に誘引するための

パーゴラです。

これも、一般的なフジ棚のようなものではなく、「和の趣き」を表現するために、切妻屋根の形にデザインしています。

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このパーゴラ建屋の東面には、白い花を咲かせる大型のつるバラ、ランブリング・レクターを誘引しています。

木製の壁面には、こげ茶色の防腐塗料を塗っていますが、そのこげ茶色と白い花のコントラストを意識して

品種選定しています。

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家形パーゴラに西面の小さな壁面には、隣のイングリッシュローズエリアに

呼応するように、イングリッシュローズのつるバラ、コンスタン・スプライと

ファンタン・ラトゥールを誘引しています。

ともに淡いピンクの上品な花を咲かせます。

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こちらは、家形パーゴラの屋根を支える柱脚部分から屋根に持ち上げて

誘引しているつるバラで、メイクィーン。

今年は、屋根の塗料の塗り替えのため、冬季に一旦誘引を外し、

かなり切り詰めたため、例年よりボリュームは減っていますが。

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家形パーゴラから、バラ園南西角のメインエントランスに向けて、緩やかなカーブを描きながら園路が続きます。

その園路の両側には、色鮮やかな花を咲かせるイングリッシュローズエリアが広がっています。

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メインの園路の両側には、色鮮やかなバラの花を引き立てる、バラにはない青い花を咲かせるブルーサルビア

(品種はブルーヒル)を植栽しています。

毎年、酷暑を乗り切れず枯れてしまうため、なかなか大きく育っていないのですが、今年はまずまずの感じで

咲いてくれました。

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こちらは、当バラ園の中央部分、かなりの面積を占める「香りのオールドローズ」ゾーンです。

オールドローズのつるバラやシュラブタイプを、自然樹形をイメージしながら、誘引しています。

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後方の「バラの滝」ゾーンが、滝を流れ落ちる水を表現しているのと同様に、

「香りのオールドローズ」ゾーンでは、ツル樹形のオールドローズの手前に、岩を置いて、

その後ろから、オールドローズを岩を乗り越えて咲くように誘引しています。

これも、川の水が岩にぶつかって、水しぶきを上げながら流れていく様子を、バラの花で表現しています。

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こちらは、バラ園東側の低めの木製フェンスに誘引するつるバラエリアです。

手前の鮮やかなピンクのバラは、オールドローズのマダム・イサーク・ペレール。

ステム(花茎)が短く、木製フェンスに沿って、誘引したとおりに咲いてくれるので、とても風景がつくりやすい

つるバラです。

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同じ部分を反対側から見たところです。

手前の赤いバラは、バロン・ジロー・ドゥ・ラン。

このバラもステムが短く、誘引した通りに咲くため、この低い木製フェンスでも、十分美しく配置できました。

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こちらも、先ほど紹介したのと同じで、川面に突き出た岩を乗り越える水のように、オールドローズのつるバラを

岩の後方に配置し、岩を乗り越えて咲くように仕立てています。

他ではなかなか見られない仕立て方だと思います。

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こちらも、低い木製フェンスゾーンで、このあたりは一重咲きのバラで、和の趣きを持った品種を選んでいます。

手前のドーム型に誘引されたつるバラは、安曇野。

小輪のピンクの花がとても可愛らしいバラですが、まだ満開少し手前でした。

この安曇野の球体誘引は、当バラ園のヘッドガーデナーのRさん渾身の作品です。

この安曇野の奥にちらっと見えているのが、海老茶色(紫色)の一重の花が咲くつるバラで、パルフェ・タムール。

このバラも、花色といい、花姿といい、かなり和の雰囲気を持ったバラです。

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こちらは、バラ園南側の国道に面した駐車場沿いの高めの木製フェンスにつるバラを誘引したエリアです。

京北は、山間から鹿が出て、バラ園のバラを食い荒らす獣害が頻繁に起こるため、バラ園の周囲を高い木製の塀で

囲っています。

その内側に、つるバラを誘引しています。

木製フェンスも格子状として、トップ部分には平瓦を載せて、ここにも「和の趣き」をデザインしています。

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ここに誘引しているのは、ダフネという淡いピンクの花を咲かせるつるバラです。

名前からは、和のイメージはないのですが、咲かせる花は、少しウェーブの掛かった花びらがとても美しい、

和をイメージさせるような花色と花姿をしています。

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このあたりは、バラ園のメインエントランス付近の様子です。

手前にはブルーサルビアと鮮やかなピンクのイングリッシュローズ(品種は、プリンセス・アン)。

その奥に見えている木製のフェンスにも、イングリッシュローズを中心に、色鮮やかな花を咲かせるつるバラを

誘引しています。

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その部分のアップです。

右側にちらっと見えている赤いつるバラは、イングリッシュローズで、テス・オブ・ダーバービルズ。

その隣のシャーベットオレンジのつるバラは、イングリッシュローズではないのですが、サンセット・グロウという

つるバラで、青りんごのような香りと、その美しい花色で、見学者にとても人気のあるつるバラです。

その奥の黄色いつるバラは、イングリッシュローズのモーヴァン・ヒルと、ゴールデン・セレブレーションです。

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こちらが、そのアップ。

右側のシャーベットオレンジ色の花が、サンセット・グロウ。

左側の淡い黄色がモーヴァン・ヒル、その下で咲いている鮮やかな黄色が、ゴールデン・セレブレーションです。

花色としては、少し和風感に掛けますが、背景となる木格子塀と平瓦があることで、和の雰囲気を感じてもらえたら

と思います。

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その部分を、少し引いた位置から撮影してみました。

木格子塀の向こうに、京北の美しい山並みが見えています。

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この日も、午前中は薄曇りでしたが、次第に晴れ間も見えるようになってきました。

最後の一枚は、京北バラ園の代名詞、「バラの滝」とその借景の茅葺き屋根の古民家です。


いかがでしたでしょうか?

今年2025年の京北バラ園も、オープンガーデン開催まで、様々な試練がありましたが、

関係者の不断の努力で、ここまで仕上がりました。

また来年もこの時期にオープンガーデンを開催させていただく予定です。

是非一度、「京都の奥座敷、京北」を訪れてみてはいかがでしょうか?


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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