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専門家「風景」をつくるガーデニング術

僕のおススメのつるバラ

居場英則

今年は桜の開花に始まって、どの植物も軒並み開花が早く感じます。

例年GWに満開を迎える藤も、早々と見頃を迎えており、僕の庭でもGWを待たずして

バラが開き始めました。

皆さんの庭でも開花を迎え、バラ園や園芸店に行かれれば、来期はどのバラを入手しようかと

考える方も多いと思います。

前回は、「鉢バラ」で僕がお勧めしたい品種を紹介しましたが、

今回は、「つるバラ」でお勧めの品種を紹介したいと思います。


誘引し、構造物と合わせることによって風景を創り出せるつるバラは、

僕の庭においてとても重要な位置づけにあります。

「つるバラで風景を創り出せる」、このことは、街づくりを仕事としている僕が、

庭を作ろうと思い立った「原点」なのです。

花ひとつひとつに近寄って鑑賞する「鉢バラ」と違い、大きくなるつるバラは、

「引き」で眺めた時の樹全体の美しさを念頭においてチョイスするようにしています。


■ バロン・ジロー・ドゥ・ラン

好みのバラは沢山ありますが、「一番好きなバラは?」、と聞かれると、真っ先に

このバラを思い浮かべるかもしれない、そのくらい僕にとっては特別なバラです。

理由はひとつ。

非常にアーティスティックなバラなのです。

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このバラの特徴は花弁にあって、弁端にランダムに切り込みが入り、

さらに、花弁の縁に「ピコ」という白い糸覆輪が出現するのです。

ひらひらと波打つ花弁は、まるでドレスの裾のようなラッフル咲き。

花型は整ったカップで、咲き進んでも花型が崩れない。

これは僕がバラを選ぶ上で、大変重要なポイントです。

そして色の変化がどの段階でも美しい。

蕾が膨らむときはマットな深い赤、咲き進むと濁りがなく上品なロゼワインの

ような赤から、次第にブルーイングして青みを帯びた赤紫へと変化します。

花型が崩れない割に、透明感のある繊細な弁質で、綺麗に光を通し、

美しいガラス細工のようです。

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ステム(花茎)が短いため、花がダランと垂れさがったり暴れることなく、

咲かせたい位置にピンポイントで咲いてくれる。

この事も僕にとっては非常に重要です。

古いオールドローズなので、「うどん粉男爵」と呼ばれるほど、

うどん粉に罹りやすいバラと聞きますが、定期的な薬剤散布のおかげか、

僕の家では、さほどうどん粉病にも罹らず、いつも主役級の花を咲かせてくれます。

このバラは、植物というより芸術作品のようだといつも感じています。

このような花容のバラは他になく、いつも何枚も写真に撮ってしまう。

僕が愛して止まないバラです。



■ スーベニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン

僕の中では、先にご紹介したバロン・ジロー・ドゥ・ランと双璧のお気に入りの

つるバラ、スーベニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン。

バロンと同じく、オールドローズの中では、ハイブリッド・パーチュアルという

系統に分類されるバラです。

同じ赤薔薇ですが、こちらは黒みや紫を帯びたシックな赤。

花弁は少し起毛したビロード生地のようで、どちらかいうと、どこか身軽で

モダンな印象のバロンに比べ、重厚でクラシックなバラです。

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バロン同様、ステム(花茎)が短いので、誘引した壁に寄り添うように咲き、

樹形も暴れません。

枝には棘がほとんどなく、扱いやすいバラですが、日光をとても必要とするので、

陽当たりの良い場所に置いてやると順調に育つようです。

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実は今年、我が家の前庭の玄関アプローチ部分にある白壁に植えてあった大型のつるバラを抜いて、

知人の庭に移植しました。

かねがね、白い割肌調の大理石タイルの白壁に映える赤薔薇を這わせてみたいと考えていたのですが、

僕の好きなバロンと、このジャメインをこの白壁でコラボさせることにしてみました。

日陰の多い庭で、今まで鉢植えで移動し続けた二本の赤薔薇は、今年ようやくステージに上がったという感じで、

どんな風景を創ってくれるか、僕も心待ちにしているのです。


■ マダム・イサーク・ぺレール

3本目もオールドローズで、系統はブルボンのバラ、マダム・イサーク・ペレール。

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かなり早咲きのバラで、今年は、我が家の庭で毎年一番に咲く早咲きのスパニッシュ・ビューティーと同時期に

咲き出しました。

このバラの良さは、その樹形の美しさ。

真っ直ぐ素直に伸びるベーサルシュートが毎年出るので、扇型に開帳させて壁面に誘引すると、

羽を広げた孔雀のようで、惚れ惚れします。

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この花も、先に挙げた2品種同様ステムが短いので、咲かせたい場所にピタッと咲いてくれ、

誘引作業で思い描いた通り、春に花を咲かせてくれます。

ピンクに赤紫の混じる独特な色合いで花弁の裏はシルバーがかります。

ラズベリーの混じるダマスクの香りがするバラです。



■ アントニオ・ガウディ

4つ目に紹介するのは、少しマニアックなバラ、アントニオ・ガウディ。

バラの名前には、エクセレンツ・フォン・シューベルトやニコラ・パガニーニなど、音楽家のバラから、

ハイディ・クルムなど、現代に活躍するスーパーモデルの名前まで、様々な分野で活躍した人の名前を冠した

バラがあります。

このバラの名前「アントニオ・ガウディ」は、僕が建築を志したきっかけになった、

スペイン・バルセロナで活躍した、偉大なる建築家の名前を冠したバラです。

建築家やデザイン関係者の名前のバラは、僕の庭には他に、「チャールズ・レニー・マッキントッシュ」や

「ウィリアム・モリス」がいて、どのバラも華美ではないのですが、どこかモダンで、

洗練されてスマートな印象があります。

このバラは、「バラ大図鑑」(NHK出版)で見て一目惚れし、元々家にあったレオナルド・ダヴィンチの枝変わり

ということもあり、すぐに買い求めたかったのですが、購入当時流通量が極端に少ない「幻のバラ」と呼ばれて

おり、僕は探しに探し、やっと見つけた九州のナーセリーから送ってもらいました。

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このバラの特徴は「色」。

別名「シルバー・レオナルド・ダヴィンチ」と呼ばれるように、

花色は少しグレイッシュで、光沢のあるピンク。

庭を創り始めた当初、ヴィヴィッドなピンク色のバラが多かった僕の庭のでは、

この銀色がかるバラは異彩を放っており、バラに詳しい友人は

「初めて庭を見た時、決して目立つ派手色でないのに、この庭で最も目に付いたバラ」と

話していました。

葉っぱは独特の丸い形の照り葉。

本来強健で大きくなると言われるバラですが、僕の庭では他の大型つるバラに

押されていたことと、背景が白い壁面だと、その独特な色合いが十分に映えず、

今年は中庭のシェードガーデンにある茶色い木製フェンスに移植して

地植えしたところ、今まで鉢植えで殆どシュート更新できなかったバラが、

久々にベーサルシュートを上げ、順調に成育しています。

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写真は、初めてこのアントニオ・ガウディの実物を見た、横浜イングリッシュ

ガーデンで大きく育っている様子です。

以前に比べて流通量も増え、販売店で見かけることも多くなりました。

バラには人名だけでなく、皇室や王室にちなんだ名前、風景や名所にちなんだ

名前など、多くのユニークな命名がなされているので、自分の好きなテーマに

沿って命名されたバラを収集するのも面白いかもしれませんね。


テス・オブ・ザ・ダーバーヴィルズ

最後に紹介するつるバラは、僕の好きなイングリッシュローズからの一本。

テス・オブ・ザ・ダーバーヴィルズ。

このバラは名前こそ知っていたものの、バラ園等で見かける機会が今までなく、

ノーマークだったバラです。

引っ越す友人の庭から掘り上げられ、僕の庭に連れてこ来られました。

友人の庭では地植え2年目、新しいシュート何本かが上がり、枝が更新され

綺麗な樹形の状態でやって来たため、期待を込め玄関脇の特等席に

ウェルカムローズとして置いてみたら、昨年僕の庭では一番美しい状態で咲いて、

僕を魅了したバラです。

このバラの魅力は、フレッシュで濁りのない赤色。

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そして、咲き進んでも崩れない花型です。

咲いた時は綺麗でも、すぐにパカーンと開いたり、花弁がチリチリになったり、

だらしなく開くバラがあって、ガッカリさせられるのですが、

このバラは花持ちもよく、咲き始めの整ったディープカップから

次第に反り返った大輪のロゼットへと咲き進み、非常に華やか。

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また、ステムが短く誘引した枝にピタッと沿うように咲くので、

頭に思い描いた通りの風景で咲いてくれるのも、このバラの素晴らしいところです。


実は、僕が庭を創る時にバラを用いようと思ったきっかけ、その原点にあるのは

昔見た一枚の古い写真です。

あるデザイン事務所の白壁に這わせた一本の赤いつるバラの風景でした。

当時は仕事に追われバラに縁はなく、庭を自分で創ろうと思い立つこともなかった

のですが、何年も前に見たその風景が頭の片隅から離れずにいたのです。

初心者の頃は、早く庭を完成させたいこともあり、一般的に流通し、成長が早く

手堅いバラを中心に選んで植えたのですが、昨年「セカンド・シーズン」と称して、

庭のバラを入れ替え、新しい庭を創ろうと思い立った時、ずっと頭の片隅にあった

「白壁を背景にした赤いつるバラの風景」を、僕の庭でも創ってみたい、と

思うようになりました。

今回おススメとして挙げた赤バラ以外にも、新しく様々な色や樹形のバラを導入

しましたので、これからバラが成育してどんな風景を創り出してくれるか、

楽しみで仕方がありません。

「人の記憶に残る風景」、僕もそんな庭を創り出していきたいと、思っています。


今回は、僕のおススメのつるバラを紹介してみました。

今年は早々とバラが咲き出しました。

ローズガーデンに出掛けられる方も多いと思います。

是非、あなたの記憶に残る一本のバラを探してみてください。


僕のおススメのつるバラについてのご紹介は、以上になります。


続いて、少しディノスさんが取り扱っておられる商品について、

少しご紹介させていただきたいと思います。

今回は、『アイアングリーンカーテントレリス』を使ってみてのレポートです。

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こちらが、そのアイアングリーンカーテントレリス

我が家の中庭の奥、建物と隣地境界フェンスの間の狭い通路空間で使ってみました。

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組み立ては至って簡単!

三分割のパーツを単に組み立てるだけ。

ものの1分で組み立て完了します。

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組み立てたものを、一旦、前庭の壁際に立てかけてみました。

なかなかの大きさがあって、つるバラやクレマチスを誘引するのに

ピッタリのサイズです。

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設置場所に立てかけてみました。

コンパクトなので、狭い通路状の空間でも邪魔にならず、

とても使い勝手が良いです。

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このカーテントレリスを固定するのに、付属の紐を使います。

今回は、雨樋に括り付けて固定してみました。

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設置したカーテントレリスに、つるバラを誘引してみました。

メッシュも細かく、誘引にはとても便利です。

デザインもシンプルで、どんな庭にも調和しそうです。

壁に持たせかけるように設置でき、つるバラを立体的に演出出来る点も

とても良いと思いました。

おススメの商品です。

是非一度、使ってみられては如何でしょうか?


■おすすめ特集

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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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