お盆休みが終わって、8月も終盤に差し掛かりました。
まだまだ暑い日が続いていますが、朝、庭の植物に水遣りする時には、少しひんやりする時があって、
暑さもピークアウトしたのではないかなと思う今日この頃です。
さて、今回は先日(8月上旬)に、僕のお気に入りの場所に久しぶりに行ってきたので、
その時の様子をレポートしようかと思います。
行ってきたのは、滋賀県近江八幡市にある「ラ コリーナ近江八幡」で、バームクーヘンや和菓子で有名な
「たねや」さんが運営する施設です。
建築史家で建築家でもある藤森照信さんが設計された商業施設ですが、「草屋根」の建物に加え、
その手前のランドスケープもとても美しい場所です。
この建物は、洋菓子製造の「たねや」さんの商品を販売したり、カフェがあったりする民間の商業施設なのですが、
なんと、年間400万人が訪れる本当にすごい施設なんですよ。
上野動物園の年間入場者数が、約450万人らしいので、それに匹敵する集客力を誇る施設です。
実は、この「ラ コリーナ近江八幡」へは、5年以上前、まだ建物が出来て間もない頃に行ったことがあります。
その時の写真がこちら↑。
このディノスさんのガーデンスタイリングでも、その時の様子を記事にしています。
※ バックナンバー記事(2020.11.4)は、こちら→「緑が美しいランドスケープ、近江八幡 ラ・コリーナ」
建物の屋根の緑は、竣工間もない頃から全面的に緑に覆われていましたが、駐車場からこの建物との間の
広場のようなスペースは、まだ植栽された植物が小さく、土も見えていました。
アングルを変えて、その当時の写真をもう一枚。
緩やかなカーブを描く園路も、まだ見えていました。
それが、今では手前の植栽が旺盛に茂って、園路(路面)はほぼ見えなくなりました。
わずかに、道らしき筋が見えているだけです。
建物手前の空間が一面の緑になって、草屋根の建物とその背後の山の緑(借景)とが一体となって、
草原の中に迷い込んだような錯覚に陥るような風景となっています。
建物の正面からのアングル。
こちら↑は現在の様子。
人が歩くところは、ちゃんと園路として整備されています。
園路の両側に植栽されている植物は、ササ(オカメザサ)らしいです。
人の腰の高さ(60~80cmくらい)くらいまで旺盛に成長していました。
5年くらい前は、こんな↑感じでした。
この時は、まさか手前の空間がこんなに緑に覆われるとは思ってもいませんでした。
せいぜい芝生敷きくいらいの感じになるのかなと思っていましたが、それを遥かに超えた美しい風景が
出来上がっていました。
この時、写真右奥にチラッと見えている銅板を貼り合わせた鉄仮面のような奇妙な建物はまだ建築中でした。
あとで出てきますが、「たねや」さんの新社屋の建設中だったのです。
こちら↑は、5年以上前に、ラ コリーナの建物に近寄って撮影した一枚です。
建物の1階部分には、草屋根の軒下に縁側のような通路空間があって、ベンチが置かれていたりして、
建物手前のランドスケープ広場を眺められるようになっていました。
それが、今はこんな↑感じになっています。
オカメザサが旺盛に茂って、草屋根の軒先に迫る勢いです。
周囲のランドスケープ(地面)にも、緩やかな凹凸(アンジュレーション)が作られているように見えますが、
5年前の写真を見ると、ほぼフラットなようです。
ピラミッドのような四角錘のフォルムの屋根が連なり、その軒先にランドスケープ側のオカメザサが
吸い付いていくように広がって、屋根と地面がほぼ一体の緑に見えています。
この建物の設計者やランドスケープアーキテクトは、最初からこの風景をイメージしたのでしょうね、
きっと思い描いていたように仕上がっているのではないでしょうか?
少し引いたアングルから見てみました。
まさに草原の中に盛り上がった丘のように見えます。
「ラ コリーナ」はイタリア語で「丘」を意味するらしいですが、まさに「緑の丘」のような風景が
目の前に広がっています。
今度は、建物(草屋根)と、ランドスケープ側のオカメザサのディテールを見てみましょう。
建物の草屋根の方は、「芝生」のような植生ですが、手前のランドスケープ(地面)側の植物はオカメザサ。
どちらも緑一色で、ほぼ同化しています。
この建物には、軒先にも雨どいも設けられていない(屋根の水は、そのまま垂れ流しにするという割り切り)ため、
より一体感が出て美しいと思います。
建物の軒先に入ってみました。
こちら↑が現在の様子。
建物ぎりぎりまで、ランドスケープ側の植栽のオカメザサが迫っています。
しかもその背丈が、1m以上はあるでしょうか?
ちょっとした子供の背丈と同じくらいに茂っています。
なかなかここまで旺盛に茂って、それでいて美しく見えるオカメザサは他に見たことがありません。
ちなみに、こちら↑が、5年以上前に来た時に撮影した、軒下から手前のガーデン(ランドスケープ)を見た
アングルの写真。
この時は、まだオカメザサが植えられて間もなかったのだと思いますが、10cmほどの高さしかありませんでした。
それが数年の間にここまで成長するとは。
こちら↑は、ラ コリーナの中に入って、天井を見上げたアングルです。
中央の一番大きな四角錘の屋根の下(内側)になります。
白い漆喰仕上げの天井一面に見える黒い点々は、炭の木片が天井に貼り付けてあるそうです。
外から見える四角い窓の内側には、布製のスクリーンが張っているのですが、
そこにも同じような黒い点々が描かれるこだわりようです。
設計者の藤森照信先生の発案らしく、アリの集団をイメージしてデザインされていて、
アリの優れた社会性を表現するとともに、多くの人が賑わう場となることを祈念したものだそうです。
こちらは、ラ コリーナの奥側の出入り口。こちら(裏側の屋根)も「草屋根」です。
5年前に来た時には、奥はまだ工事中で外に出られなかったように記憶しています。
それが現在は、外に出れて、さらに目の前に素晴らしい風景が広がっているのです。
それは、この次の【後編】でレポートしますので、乞うご期待を。
少し斜め後ろから、ラ コリーナを見たアングルです。
ちゃんと裏側にも屋根の緑化(草屋根)が施され、その周辺にも高木類が植栽されて、
建物と風景が一体的に見えるようにデザインされています。
いかがでしたでしょうか?、「ラ コリーナ近江八幡」。
前回来た時から格段にパワーアップして、特に建物手前のランドスケープが
本来あるべき風景に育って、本当に美しかったです。
さすが、年間400万人の人を集めるだけの魅力を感じました。
ここでひとつ、ランドスケープデザイン的に注目した箇所があります。
緩やかにカーブした園路に沿って、その園路を夜間(夕方以降)照らす
照明器具が配置されているのですが、その照明器具に、焼いた木製のカバーが
取り付けてありました。
最近の屋外照明機器もデザインされて美しいものが多いのですが、
それでもこの風景には馴染まないと判断されたんでしょうね。
工業デザインの照明器具を隠すように、自然素材でカバーしていることに
とても好感を持ちました。
こちらも、同様の配慮で、オカメザサのガーデン(ランドスケープ)前に
大きな駐車場が設けられているのですが、ここにも背の高い照明器具が設置されて
いて、そのポール(柱)部分にも、焼いた木材が四方から貼り付けてありました。
とことん人工物を見せないという配慮が行き届いていたことに感銘を受けました。
※【後編】に続きます。
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