ひとつ前の記事で、最近見に行った滋賀県近江八幡市にある、洋菓子製造の「たねや」さんの旗艦ショップ、
「ラ コリーナ近江八幡」を見に行った話を書きました。
数年前、まだ完成して間もない頃に見に行った時と比べて、格段に「緑量」が増して、
目の前いっぱいに広がる美しい風景に圧倒されました。
今回の【後編】では、5年前にはまだ出来ていなかった、「ラ コリーナ」の奥に広がる
二期エリアの様子をご紹介したいと思います。
こちらが、「ラ コリーナ」の裏側の出入口。
裏側の屋根もしっかりと「草屋根」でおおわれていました。
そして、その正面に広がっていたのがこちらの風景。
超広角レンズを持って行って撮影したのですが、全部入りきらないというワイドなビューです。
ラ コリーナの表側からも少し見えていた、謎の建物が斜め前にドーンと鎮座しています。
この日は青い空と白い雲が印象的で、まさに「絵に描いた」ような風景が目の前に広がっていました。
このラ コリーナの裏庭とも呼べる広大な空間の大部分を占めている、この緑の植物は、「イネ」です。
ここでは、コメ作りが行われていて、イネの緑をランドスケープデザインの一部として利用しているのです。
8月の今は、まさに緑の葉っぱ一色ですが、秋になると黄金色の穂を垂れた風景に変わるはずです。
そして、この何とも奇妙な、ジブリの漫画に出てきそうな建物は、「たねや」さんの社屋らしく、
残念ながら一般の人には公開されていません。
ただ、そのスケール感というか、存在感が半端なく破壊力があります。
そして、もうひとつ注目すべきは、稲作のランドスケープの中に、いくつか築山が設けられ、
その築山に様々なカタチの「景石」が設置されているのです。
日本庭園に置かれた景石とは違って、オブジェというか、もうアートのような存在に見えます。
カメラの画角に入りきらなかった、向かって左側の風景です。
少しわかりにくいかもしれませんが、中央の田んぼを囲むように、「草屋根」の回廊が奥の方にまで伸びています。
回廊のような建物にフォーカスしてみます。
木造の切妻屋根には草屋根が載り、緩やかにカーブを描きながら、何メールあるのか分からないほど奥の方まで
一体の建物としてつながっています。
こちらが、草屋根の回廊の入口です。
右手奥に、田んぼを挟んで「たねや」さんの社屋が見えています。
こちらが、回廊の内部です。
内部に入ると、緩やかにカーブを描いているのがよく分かります。
壁はなく、製材していない自然の木のまま柱としてデザインされていて、
所々に木製のベンチが置かれ、柱の間から、イネを植えている田んぼの全景を見渡せるようになっています。
回廊の際部分は、稲作ではなく「畑」として活用されていて、中央に見えているのはサトイモでしょうか?
大きな観葉植物のような葉が、いくつも見えています。
草屋根の回廊の際には、休憩施設やカフェなどの飲食を提供する建物が設けられています。
写真は、その2階建ての建物の2階屋上から、中央の稲作の田んぼ、さらにその奥に「たねや」さんの社屋を
見渡せることができました。
とても広い広場のような開けた空間となっています。
こちらは、その草屋根の回廊から、少し脇道にそれたところから、回廊方向を見たアングルです。
回廊の外側(この写真でいうと、手前側)には、雑木林のようなスペースがあって、
そちらにも小さな建物がありました。
これがその建物で、土壁と製材していない木を使った柱で構成された、とても質素な作りです。
細かいところまで配慮が行き届いていて、施設全体の世界観を壊さないようにデザインされています。
この建物は、トイレでした。
内部の壁面は、わずかにオレンジ色が入った独特の質感の壁面で、廊下の突き当りには
借景となる樹々が見えるように、額縁状に窓が切り取られていました。
再び草屋根の回廊に戻り、その草屋根の回廊の一番奥あたりで、外に出ました。
こちらにも面白いオブジェのようなものが置いてありました。
小さな山のような建物?があり、その稜線に沿って、小さな植木が植えてありました。
近寄って見ると、子供がようやく通り抜けられるような小さな木製のドア(扉)が設置されていました。
しかもちゃんと開くのです。
子供たちが嬉しそうに、その扉を開けて出入りするのが微笑ましかったです。
こちらは、塔状のオブジェ。
奥にも同じ設えで、小さな家のようなオブジェがありました。
こちらも稜線に沿って、小さな穴が開けられていて、そこにマツなどの植栽が植えられています。
ここは通り抜けではなく、子供なら辛うじて入れるような小さな空間が作ってありました。
喜んで子供たちが入っていました。
小さな窓のようなものも、既製品のガラスブロックではなく、ちゃん木製のサッシにガラスを嵌めこんだ窓でした。
まさにジブリ映画に出てくるような異空間でした。
子供たちには大人気でした。
(大人もはしゃいではいったりしていましたが:笑。)
そして、二期エリアの一番奥にあったのが、こちら↑の建屋。
1階は、建物の庇なのか、土で固めらた土破(斜面、土手)なのか、区別がつかないような構成で、
その上に、風景に馴染むように円形の建物がすっと挿入されているようなつくりです。
この建屋への出入口を兼ねた軒下部分のベンチから、中央の稲作の田んぼ方向を見てみました。
すると、この建物の軒先と、横に続いていく斜面、その奥に見える「たねや」さんの社屋建物と、
円を描くように線がつながっているように見えました。
写真ではなかなか上手く伝えられないのですが、この場所に行って、このアングルで見てもらうと
きっと言わんとしていることが分かっていただけると思うのですが、
本当によく練られたランドスケープデザインだと、とても感銘を受けたのが、この場所です。
建物の中では、「たねや」さんの主力商品でもある「CLUB HARIE(クラブ・ハリエ)」のバウム・クーヘンの
工場(ライン)があり、まさにそのバウム・クーヘンを作っている様子を見れるようになっています。
今、工場見学が流行していると言われていますが、まさにソレ。
屋外は一切近代的な要素を見せない、自然な風景で仕上げておいて、内部は近代的な工場の製造ラインを見せて
商品(バウム・クーヘン)への関心度を高めるという、素晴らしい手法だと思いました。
さすが、年間400万人を集めるだけの施設だと思いました。
いくつかある建物の1階、屋外の軒下空間です。
軒先を低くして、ベンチに座らせて、地面に近いところから、目の前に広がる稲作の田んぼを見せるという手法。
素晴らしい仕掛けです。
こちらは、「たねや」さんの社屋建物。
一般の人には公開されていなないので、内部がどんな風になっているのか、とても興味深いのですが、
斜面の上に建てられているため、内部も見えず、奇妙なカタチをした(潜水艦の艦橋のような)部分が
どうなっているのか、とても知りたいです。
仕上げは、以前の写真(前編に工事中の写真を掲載しています。)を見る限りでは、
銅板を貼っているように見えます。
その銅板が経年変化して、木のような味わい深い外壁となって風景を作っています。
こちらは、二期エリアの一番奥から、一期エリア(ラ コリーナ)方向を見たアングルの写真です。
正面中央に、四角錘の屋根が重なったラ コリーナの裏側が見えています。
この二期エリアへの出入口となる部分にも低い四角錘の屋根が掛かっていて、とても面白いフォルムをしています。
そして、二期エリアの大部分を占める稲作の田んぼには、謎の築山+景石がいくつか並べられています。
そのひとつの景石に近寄ってみました。
田んぼのイネの背丈より高く築山が盛られ、さらにその上にちょこんと景石が置かれています。
こちらは、また別の築山と景石。
景石の上(トップ)には、木が生えています。
勝手に生えたのではなく、おそらく意図的に生やしたものでしょう。
これまでの日本庭園にある景石では見たことがない、独特の感性に度肝を抜かれました。
こちらの景石は、背の高いフォルムをしています。
しかも日本庭園の景石の並べ方とは全く異なっていて、一直線状に並べたり、奇想天外です。
アングルを変えてもう一枚。
こちらの写真で見ると、景石というより、イースター島にあるモアイ像のように見えてしまいます。
建物も奇想天外ですが、ランドスケープも奇想天外です。
これが最後の写真。
「ラ コリーナ」の二期エリアのを象徴するような一枚です。
稲作と草屋根、そして奇想天外なランドスケープ、それに青い空と白い雲。
どこか、おとぎ話の世界に迷い込んだような不思議な空間体験ができました。
本当に素晴らしい場所です。
是非、皆さん、実物をご覧になってみて下さい。
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