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専門家「風景」をつくるガーデニング術

世界的ガーデンデザイナー・石原和幸氏監修の松江・由志園 『牡丹の館』

居場英則

皆さんは、ガーデンデザイナー、石原和幸氏をご存知でしょうか?

ガーデニング大国イギリス・ロンドンで毎年開催されているガーデニングショーの最高峰と呼ばれる、

「チェルシー・フラワーショー」でこれまでに何度もゴールドメダルを受賞されている、

世界的ガーデンデザイナーです。

実は、今から2年前の2018年、石原先生のチェルシーフラワーショーでの通算10個目のゴールドメダルを

目指しての庭づくりに、僕もサポートメンバーの一員として、チェルシーフラワーショーへ帯同させて

いただきました。

  ※このあたりのことは、こちらのディノスさんの連載記事のバックナンバーでもご覧いただけます

   詳しくは、こちらをご覧ください。 → 『石原和幸氏の「おもてなしの庭」ができるまで』

ロンドンで開催されるチェルシーフラワーショーに出発する前に、石原先生がデザインされた現場を

自分の目で確認しておきたいと思って出かけたのが、今回ご紹介する松江市の宍道湖に浮かぶ大根島にある

「由志園」という、山陰地方最大級池泉回遊式庭園。

この地では、約250年前から肥沃な地を活かして牡丹と高麗人参の栽培が行われてきたそうです。

由志園には、世界的ガーデナーの石原和幸氏をデザイナーに迎えて作られた「牡丹の館」という

インドアガーデンがあるのです。

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由志園を訪れたのは2年前の2018年の3月末。

早春間もない頃で落葉樹はまだ葉がありませんが、美しく整備された日本庭園だけでも十分見応えがあります。

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牡丹のハイシーズンは、4月後半~5月の上旬。

訪れた3月末はまだ少し牡丹の開花には早かったのですが、屋外でも美しく花を咲かせている品種もありました。

ワラで囲いをされた風景もなかなか風情があります。

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牡丹は木で、冬場も地上部がありますが、牡丹によく似た芍薬は宿根草で、冬場は地上部がなくなります。

この時期、ようやく芍薬の新芽が地上部へ伸びてきていました。

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そして、本命の施設、石原先生がデザインされた「牡丹の館」の入り口です。

エントランス周りに配された植物は、ナンテンやアオキ、などの陰樹のほか、シダ、ツワブキなどの宿根草、

庇を支える柱にはビカクシダ(コウモリラン)なども植栽されています。

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エントランスを入って正面に、石原先生の代名詞、苔で出来た壁が見えてきました。

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その壁面を斜めから見たところ。

チェルシーフラワーショーで創った『お・も・て・な・しの庭』でも多用された苔玉を張り付けた美しい壁です。

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苔玉のアップ。

ヤマゴケを丸く整形し、テンションをかけながら、くっつけていくことで、丸みをキープさせています。

チェルシーフラワーショーは、コンテストガーデンのため、フラワーショー開催期間中持てばよいという

割り切りの中で屋外で使用されていますが、ここ由志園の「牡丹の館」はインドアガーデンで、

温度や湿度が適切に管理されているので、長期間に亘ってこの美しい苔玉風景が維持されているのだと思います。

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苔玉の壁面には大きな穴が開けられ、奥に次のスペースを垣間見ることができます。

大きな空間を壁面で仕切って、ガーデンルームを作っていくという手法が活かされています。

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苔玉の壁面の手前には、艶やかな牡丹の花が美しく咲き誇っていました。

まだ牡丹のベストシーズンの前だったにも関わらず、この咲きっぷり。

高度な栽培技術が活かされているのだと思います。

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苔玉の壁面のすぐ左には、こんな仕掛けのある展示がされていました。

こちらには、牡丹の花が一切ない、グリーンだけのコーナー。

立体水路が作られ、奥には流水で回る水車も作られています。

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立体水路を正面から見たところ。

迷路のような面白い仕掛けで、どっちに水が流れているか分からない、エッシャーのだまし絵のような

不思議な空間です。

大きな空間をダイナミックに埋めるこの展示方法に、とても感銘を受けました。

石原先生の遊び心が活かされた空間だと思います。

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ここにも、石原先生の遊び心のひとつを発見しました。

石原先生の庭によく登場する狛犬です。

狛犬というより、沖縄のシーサーでしょうか?

苔庭にさりげなく置かれていて、違和感もなく、むしろ情緒ある風景になっていると思います。

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館内にいくつかある壁面のひとつ。

ここにも丸い開口部が穿たれ、奥に広がる風景を垣間見れるようになっています。

次の間はどうなっているのだろうという期待感を抱かせる演出です。

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開口部の向こうにも艶やかな牡丹の花が見えています。

陰樹の濃い緑色の葉があることで、牡丹の艶やかさ、華やかさが

一層際立って見えます。

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壁面の裏側です。

ここにも石原先生の庭を象徴するデザインモチーフがあります。

白い壁面に作られた渦巻き模様です。

左官仕上げで作られたこの渦巻き模様は、石原先生が作られる庭には

必ずどこかにマーキングされるアイコンのようなものなのです。

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そして、この「牡丹の館」の一番の見せ場。

岩が組まれた一番上の頂に、金箔で囲われた部屋があり、そこに牡丹を活けた花車が置かれています。

まさにフォーカルポイントです。

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斜めから見てみるとこんな感じ。

艶やかな牡丹の花をこれだけ重ねても嫌味を感じない、むしろ美しい花の流れを感じます。

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折り重なるように咲く、牡丹の花が本当に美しいです。

短命な牡丹の花を、フレッシュな状態で維持・展示しているのは、由志園さんのスタッフの方々の

素晴らしいメンテナンスのなせるワザなのだろうと思います。

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一番奥の壁面の前の牡丹の花の連なり。

色の組み合わせが素晴らしいです。

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牡丹と合わせている下草も風情があります。

牡丹の名所と呼ばれる寺院を訪れたことがありますが、同じ高さで見本市のように咲かせていることが

多く、牡丹を使ってこれほど美しい風景、ランドスケープを作っている施設はなかなかないのではないでしょうか?

それほど感動的な空間でした。

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展示されていた牡丹の中で特に気に入ったのがこちらのコーラルピンクの牡丹。

由志園の牡丹品種紹介の写真と照合してみると、「七福神」と名付けられた品種ではないかと思います。

本当に美しい花色です。

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こちらの花弁が縮れた八重咲品種は、「春彩」ではないかと思います。

このボタンもその花色といい、花形といい、思わずため息をつきたくなる美しさです。

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最後に、石原先生の苔玉のある風景をもう一枚。

流木を使って、苔玉をさりげなく張り付けた風景がこれまた素晴らしい。

石原先生の庭というと、「苔とモミジを多用した、緑のグラデーションが特徴的な日本庭園」という

イメージですが、艶やかな牡丹の花を見事に演出しきった素晴らしい空間が、ここにはありました。

是非、牡丹のベストシーズンに松江市にある由志園、「牡丹の館」を訪れていただきたいと思います。


【由志園・牡丹の館】

   ベストシーズン:4月29日~5月6日

   時間:午前9時~午後5時(受付は午後4時半まで)

   入園料(ベストシーズン):大人1200円、少・中学生600円

   住所:島根県松江市八束町波入1260‐2

     ※ 詳しくは、由志園のホームページ↓をご覧ください。

      https://www.yuushien.com/


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居場英則

『進化する庭、変わる庭』がテーマ。本業は街づくりコンサルタント、一級建築士、一級造園施工管理技士、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。土面の殆どない庭で、現在約120種類のバラと、紫陽花、クレマチス、クリスマスローズ、チューリップ、芍薬等を育成中。僕が自身の庭を創り変える過程で気づいたこと。それは、植物の持つデザイン性と無限の可能。そして、都市部の限定的な庭でも、立体的な空間使用、多彩な色遣い、四季の植栽の工夫で、『風景をデザインできる』ということ。個々の庭を変えることで、街の風景も変えられるはず…。『庭を変え、街の風景を変えること』が僕の人生の目標、ライフワーク。ーー庭を変えていくことで人生も変えていくchange my garden/change my lifeーー

個人ブログChange My Garden

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