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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

引き継がれる世界に...。そして、桂離宮「端厳さ」について

吉谷桂子

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「この庭、将来どうなってしまうのだろう!?」

20年以上ものあいだ気になっていた庭が2箇所。イギリスと京都、それぞれに1箇所づつ。ありました。

その庭に出会い感動して以来、音沙汰分からず、閉鎖された状態だったか?わからない。 

初代オーナーの手を離れ、その後、誰の手に渡って、どうなってしまうのか。

そのひとつ、イギリス版が年末に訪れた Newt in Somerset でしたが。もう1箇所が...

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京都、鷹ヶ峰のあたりの、この庭でした。(桂離宮の話は最後に)

その昔、ここを訪問し、配された巨石のひとつひとつに圧倒された。

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1990年代当時、私をここに連れて来てくれたのは、造園家の白砂伸夫さんでした。
このときの京都訪問のきっかけは、現在の細見美術館(その開館前)の琳派作品群にあり。
夫や京都の大学出身の友人たちと。すべては「美への憧れ」から突然の京都旅行。実は、最初から書くと話が長くなりすぎるので(...今回は省く)ですが、イギリスに住んでいた25年ほど前、奇遇に奇遇が折重なって、私は、ロンドンから一時帰国-京都へと、引っ張られるようにこの庭に来て、そして度肝を抜かれた。

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実はここ、私の叔母の家(のあった所)から歩いて15分ほどの鷹ヶ峰の 紙屋川縁にあり、叔父ともよく山登り探検をしたエリアでした。(この敷地には入っていません)記憶では川に落ちそうになる荒々しい獣道あり。そして、光悦寺に抜ける。山はちょっと荒れた印象で今もそれをちょっと感じる。

この庭、その昔は「紙屋川庭園」と呼ばれていたそうな。戦後50年ほどをかけて組まれた巨大石の庭で、私が大人になって初めてここを訪ねた1990年代当時は、織物商の名家 である A 家のプライベイト・ガーデンでした。オーナーのコレクションから織物関係の美術館を作る目的があったそうですが、それは見たかったです。

折しも20世紀には西陣織も難しい局面を迎えていたと想像します。

だから「あの庭、どうなってしまうのだろう!」ずっと思っていたのでした。

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ところが去年、イギリスのNewt と、ほぼ同時期に「再生して誕生」

知ってすぐ「絶対に両方行かなきゃ!」

とは、思ったものの、その実行には(時間と予算の問題で)ちょっとした勇気も必要でした。

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さて、また、節分、春節直後、しかし、ウイルス感染の件からか京都はまったくひと気なく。私も逡巡がありましたが、来た。....写真は、庭の頂上、天ヶ峰にて。チェック・インのあと、日暮れ前に至福の散歩。

自分入りの写真が何枚も登場するのはどうかと思いますが、登り詰めた先、やはり虚無の広がる空間でした。前もそんな感じだった。あえて起承転結を否定するような。

人のいない写真だと、この場所のスケール感が分かりにくいのと、非常に人の「気」が薄くて、なんだろう。空間だけの写真だとさらに理解しにくい空間に写ってしまうようで。とにかく自分しかいないのですから。

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そして相当にスピリチャルな雰囲気はあるけれども、目に見えて写真映えしないかもしれず。

でも明らかに、20数年前のほうが妖怪っぽかった。今は、そんな恐ろしさが消えていた。

土地のエネルギーも、大人しくオーダーされている!安心して眠れそう。その大きな理由は

掃除が細部まで行き届いている から。だったかもしれない。

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まさに庭は、建築に比べ、常日頃、天風雨に晒され自然界から一層の強い影響を受けるので、人間の力などすぐに及ばなくなる。その存在は脆弱です。人が手を入れなければ、あっという間、一年でに自然に還ってしまうでしょう。樹木が織りなす光や影も、これは人の手が、よきように調節している。

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もっとも、石の基本構造は、まるで遺跡のようにずっとあったはずだし、こうした苔も計算に入れられた設計、それまさに「サイト・スペシフィック・アート」です。

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庭内いたるところに小さな水の場所がある。地下水が豊富そうだが、ちょっと覗き込むと真っ黒暗で怖い。

環境、風向き、方角も含めて、それは、場所に(限定され)作られた芸術作品。当時のオーナーと同じ庭師さんチームがいらっしゃるそうでそれも安心な。それにしてもどこもかしこも見事な苔です。

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ここ、以前に(1990年代)見た時も、ただまっすぐに長い道が続いていて、これは庭とは言い難い参道のような景色が続く。

何故、このようにまっすぐな道が連続するのだろう。その先に神殿があるわけではなく、ようやく行き着くと、その先は虚無のような世界が待ち受けている。昔の記憶を思い起こしてみても、建物の記憶がはっきりしない。あれは、まぼろしだったんだろうか。とも思ってました。

あと大量な石の記憶では、霰こぼしその他の石組みを見た覚えがあるけれども。

それが、今回の京都 鷹ケ峯に昨秋オープンしたホテル&ガーデンでした。

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晴れているのに雪の降った日。今回は吉谷家の春夏秋冬修学旅行も兼ね、本人からもずっと行きたいと拝まれていたこともあり、美大三年の家族が荷物持ち兼ねカメラマンで参加。生涯の思い出、私も父との大学時代の京都探訪旅行を思い出す。

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今は道程の経過にあるような感じで、いくつかの建築が点在します。

こちらは、レストランのある建物。(ケリー・ヒル・ガーデンから望む)高級豪奢なホテルのイメージに相反する点が「桂離宮」とも繋がる。そこにやられます。

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まさに、それは長い間夢見ていた、ほとんど自分の夢のトレースをしたみたいな。

まるで夢が叶ったみたいな気持ちだった。朝方はここ銀世界だったそうです。

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家族と赴くということは、違いの共通の美意識を磨き合うような、庭だけでない、新たな「美」の細部を発見し合うという楽しみもあった。

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二年前に開催の、台湾藝術ツアーで宿泊したホテルと同じ系列であること。参加された方はきっとわかりますよね。

設計は、このホテルの完成を見て、去年亡くなった故ケリー・ヒル氏です。

この庭を20年ほど前に見つけたのも、ケリー・ヒル氏だったそうです。しかし、事はそう簡単に進まず...。構想から完成まで、20年の歳月が流れたそうです。

京都は現在、建築規制がとても厳しいので、簡単ではなかった事、想像つきます。

でも早い話が「どなたか、美意識の高い方が、ここをホテルかレストランかそんなパブリックな場所として、いつか公開をしてくれたらどんなに良いだろうか」と思っていた。「それが願い通りに!」ということだったわけなのです。

ホテルに付随するスパやレストランも心や体を癒すための美意識が行き届いた世界でした。

私も目指したい、現地の風土や文化に溶け込むような、それでいて新しい世界を。

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次なる庭や空間の世界観、ずっと探していて、私は和でも英でも欧風和蘭でも北欧ない、なにかをずっと探していましたが、そのひとつのヒントになるのが、こうした世界。価値観の見直しが迫られる今。いっそう幅広い世界を見ておくことは重要だと思います。

そして、点在する簡素で漆黒の建物群。

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さて、この庭で私がハイライトのように感じた、この「しめ縄」のある巨大石のデザインはイサム・ノグチだと、私は聞いていました。
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でも、どこにも、そのような文献が見つからないので、今は謎です。
今回案内をしてくださった碧眼金髪の女性も、そのことは知らないようでした。
当時、カメラを持って歩いたりしないから、写真も、まったく撮ってないので、あるのは私の記憶だけ。
なので、怪しいです。でも、間違いなく、ここだった。

とにかく、その時(1996年頃)も、そして、今回(2020年)も圧倒的な巨石の配置に度肝を抜かれました。

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実はこの日、このホテルのチェックインの前に、念願の桂離宮を拝観しました。

それも実は大きな意図がありました。

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桂離宮 月波楼。

それとケリー・ヒルの建築群は実にすっきりと繋がってきたのでした。

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簡素な建築美。桂離宮の明快清純と言われる美に共通点を感じる。

建築家だった祖父と父が、私に授けてくれた名前、桂子は、桂離宮だと聞いていました。

「世界でもっとも美しい建築だから」とは子供時代から、でも、昔桂離宮は、子供の(高校生も)入場制限ありました。

そのまま大人になってしまったので

実はこの日が、桂離宮を訪ねる人生最初の日でした。これまで、想いはあったものの、子連れはダメ。往復ハガキで申し込み。とか、先の予定が決定できないから、本当に難しいと思ってましたが、今は、インターネットで簡単にできるのですね。これまたびっくりでした。子供も、成人したのでそんなチャンスがやっと来たといえます。

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桂離宮の事に関しては、後日じっくり書きたいのですが、桂離宮から鷹ヶ峰に直行したことで、美意識の究極。

「端厳さ」という言葉が、もっとも腑に落ちました。

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このアマン京都にも、「無駄な装飾を省く端厳さ」それを数々見出すことができて、そのことはまた後日に続けたいと思いますが、大きな課題を突きつけられたようでもありました。(つづく)


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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


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