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専門家吉谷桂子のガーデンダイアリー ~花と緑と豊かに暮らすガーデニング手帖~

イングリッシュガーデンの旅 5 Knepp rewilding その後

吉谷桂子

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人は 本来 本能的に自然とのつながりをもとめている。

私はずっとそう思ってガーデニングを楽しんできました。

(写真はツアーで最後に訪ねた The Exchange ヘッドガーデナーのセリーナさんと)

こちらの庭は、昨年11月に『ガーデンズイラストレイテッド』誌に記事が掲載。
後日、また詳しくこの庭のことも書きたいと思います。すっごく好きでした。
デザイナーのサラ・プライスさんが「エルメス」のために作ったポップアップガーデンから持ち帰った植物を再利用して作ったという点も!

さて、そもそも30数年前に、私がイギリスでガーデニングに目覚めたとき、

自分の庭という、絶対的にプライベートなテリトリーで、

身近な自然に親しめることが嬉しくて、それでガーデニングに夢中になリました。

アーツ&カルチベーションに目覚めたのも、その後、すぐでしたが。

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(30年前の写真が最近、出てきました。ロンドン、ハムステッドの自宅庭で30代の私!?

これはポジフィルムを透過光で撮ってみた)

ただし、その後日本に戻って、経験してきた酷暑の夏は悩みの種です。

年々ひどくなっているように思えるし。

こんなに厳しい酷暑の中でガーデニングをすれば命の危険もありますし

様々な場面を想定すると、庭仕事をしないほうが良い時間帯や場所、シチュエーションがあると思います。

それでもこんな酷暑の折でも、今朝、7月31日の朝の5時過ぎは、時折機吹く風が気持ちよくて。

蚊取り線香をつけていれば、とりあえず薮蚊の心配もないし、小一時間でも庭の世話をする事は幸せ。

私はやっぱりこれが好きだ!と思う次第です。

今の時期は伸び過ぎてしまった枝を切る。それからやはり乾燥の厳しい植物をケアする。程度でちょこちょこっとしたことですが。

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1995年頃。38歳。とかそんな感じ!!?力任せに地面を掘り返すこともしょっちゅう。

しかし、そもそも私がイギリスでガーデニングに夢中になったのは、7月- 8月の真夏でも、カーディガンを羽織っていたいほどの気温。

あるいはちょっと暑い日にタンクトップと短パンで日が暮れるまでガーデニングに夢中になっていても、藪蚊に食われる事はなかった。

そこでふと思い出したのですが、モンシロ蝶とかも、庭に飛んでいなかった...。

ミツバチは時々見た。特に私はマルハナバチが大好きだったから、それが飛んでくるとじっと眺めたりして楽しんでいました。

実は、7度の夏を過ごした自分の庭では、およそ昆虫に刺されると言う体験をしたことがなかったのです。

今思い出すとわかるのですが、あんまり自然ではなく、環境は、まさにワイルドじゃなかったはず。

ずいぶんしっかりと抑え込まれた自然だったというか。「徹底的に除草したり農薬を散布した歴史はあったんだ」とも聞いてピンときませんでした。

もちろん、私自身は庭で化学肥料や農薬を使う事はありませんでした。

最初に出会った、私の庭の契約のプロのガーデナーが、オーガニックディナーだったこと。

既にオーガニック・ガーデニングは、1990年代のイギリスの大きな潮流となっていました。

それでも植木鉢のコンテナガーデニングにおいては、花をたくさん咲かせるために

ケミカル肥料をたっぷりと使う事はまだまだ主流の時代で、私も地面には使わなかったけれども植木鉢の花には使っていました。

優秀な化学肥料がありました。

完全な初心者だった時に私の指導者でもあったプロのガーデナー、ゴードンがそのように私に教えたからですが、

今は植木鉢へも肥料有機肥料使用。だって、なんといってもバイオゴールドが優秀なのでこれ以外は使わない。使わないで済む。ロミマミーの書斎だよロミーの音が聞こえたけどドア開けたとか食べようなった幻ありがとうじゃあちょっと待ってる感じではいキューちょっとちょっとね上がりますありがとはいありがとう

藪蚊が庭にいないのは、気温が低いせい。と思っていたら、その後スコットランドに行くとずいぶん蚊に刺され痒い思いを。

そこは自然がそのまま残る場所だったから。

日本に帰ってきてから、北海道で仕事をするチャンスが増えて、そこでも蚊に食われていたのです。

となると、やはり噂に聞いていた産業革命以降、また第二次世界大戦以降

圧倒的に自然を抑えていったと言うのは本当だったんでしょうか。

そんな事情を説明しながらRewildingの取り組みを説明していただきました。

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「『rewilding(リワイルディング)』とは、自然環境や生態系を元の野生の状態に戻す、またはそれに近づけるための取り組みや考え方を指します」

ガーデンの見学の前にこのような話から始まりました。

「...すでに私は、あなたとかなり多く話していますが、一部の人たちはこのことに少し偏見を持っていたり、その意味に少し混乱しているようです。

でも、私たちはそれが本当に大切な自然を理解する上で重要な要素・パズルの一部だと信じています」

Knepp Rewilding ガーデナーのジョシュさんによる講義..

これがほんとに面白かった!動画で録画しておき英語の部分でわからないところは後から何度も聞いて翻訳し直しました。

各地で開催の講演会では直接、その講義をなるべく日本語に訳したものをご紹介していますが、オンライン上に載せるのは若干はばかられます。

Knepp や、ジョシュ君の許しももらっていないので。故に雰囲気だけでも。

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また、 Knepp rewilding そしてこの度の、6月のガーデンツアーの報告、7月は講演会を4回も開催させていただきましたが、より一層、皆さんの理解を深めるため、様々な資料を調べていたのですが

意外な言葉に出会いました

(↑ この眺めは、私がこのネップ城のウォールドガーデンに入って、最初に目にした最初に撮った1枚です。ワイルドですよね)

私はこの瞬間「おおーかっこいい!」と勝手に思っていましたが、ツアーの皆様はそれぞれにどう感じられたでしょうか。

しかし、さすがのトムスチュワートスミスデザイン。パッと見ための印象はワイルドですが、植物のフォルムの組み合わせなど巧妙です。

ちょっとわかりにくいですよね。

かなりこぼれ種で増えたワイルドな植物たちが微妙にワイルドな感じで許されて生えています。

それを抜き取るのか残すのかその感覚もガーデナーが野生動物になった気持ちで

以下の2項目をベースにメンテナンス

STRESS=成長に必要な自然資源をあえて不足させたり、過剰になる状態を作る:粉砕コンクリートや砂、トップソイルと呼ばれる肥沃な土を元の土壌に混ぜ、植物にストレスを与えコントロールすることで、発育旺盛で、他を駆逐してしまうような植物を抑え、より成長バランスの取れた生態系を形成できる。

DISTURBANCE=妨害:バラが生い茂るのをエクスムーアポニーが抑えるように、これもまた、自然界が支配する生態系の力を平準化し、コントロールする非常に大切な手段。

野生動物が食べた箇所のように鋏を入れる。(実際にトムスチュアートスミスさんが常緑のトピアリーかなりランダムな感じで刈り取っているのはちょっと笑ってしまいましたが)

そして次の一枚が ↓2枚目に私がネップで撮った写真。実はまだきっと何をどうやって撮影していいかわかっていないから、なんとなく撮っています。

後からだんだんフォーカスが絞れてきました。

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ネップに関する記事を日本語訳してみました。

「英国は世界で最も自然が枯渇した国の一つですが、イングランド南部のKnepp が、それを変えようとしています。

Kneppの回復する生態系は、私たちが自然に任せれば、どれほど自然が回復できるかという希望の物語です。

過去 20 年間、彼らは農園を、荒廃した農場から野生動物が繁栄する生息地へと変えるために、再野生化に取り組んできました」

Kneppを理解する上で様々な資料読み漁っていましたけれども、中でも「英国は世界で最も自然が枯渇した国の一つ」

これは真に受ける前に、日本の私たちの状況との比較も必要だと思いました。

どう考えても私が通っている群馬県の中之条や、現在プロジェクトの始まっている八ヶ岳は、自然が豊かで最初からワイルド。

Rewilding の必要もないようで....。

だからこそ、ワイルドなナチュラリスティックガーデンは、いまいちウケが悪い(汗!)と言う印象がこの10年ずっと続いてきました。

そして私自身は東京豊島区の住宅密集地で育っているのでナチュラルな世界に憧れています。自然に憧れるからこそ

オーナメンタルグラスを植えるとすぐに雑草を植えているなど言われますし。

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(ネップのキッチンガーデンには、オーガニックに育つバラも。珍しいようにも感じましたが、美しいと思いました)

自然の豊かなところ...、また、日本独特の里山というか。

穏やかな感じで人間と自然が共存してるように見えてなりません。

それでいてやはり熊や猪の出没、中之条では、ニホンザルを、また、日本カモシカの群れをガーデンズの横の道で見ました。

はままつフラワーパークでも、ウサギに春の新芽をいろいろ食べられてしまったりとか。

いろんなことが起きていますが、自然は確かに、そこで育っています。

それに比べると、やはり従来のイングリッシュガーデンは自然風に見えて実は非常に整然としていたというか。

そういえばロンドンの私の家には、灰色リスそれから狐が時々。野鳥はいろいろ来ていました。今思うと彼らが食べる芋虫たちってあまり見たことがなかったけれども実際はいたのかな。

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そのことも、じっくり考えながら、次回、9月は、再度北イングランドへ、ウェルビーイングガーデンのツアーをいたします。

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新たな21世紀の、私たちが幸せになれる庭の、あるべき理想の姿について考える考察は、まだまだ続きます。


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吉谷桂子

英国園芸研究家、ガーデン&プロダクトデザイナー。7年間英国に在住した経験を生かしたガーデンライフを提案。さまざまなイベントや雑誌などに出演するほか講師を務め、著書も多数。また国際バラとガーデニングショウやレストランなどの植栽デザインを担当。2013年春にファッションブランド「Shade」を立ち上げた。


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