難易度★

観賞用やグリーンカーテンやたわし、ヘチマ水など多くの利用方法がある植物として知られていますが、沖縄では昔からヘチマの果実をナーベラーと呼んで、若い実を食用として利用してきました。若い実の時期に繊維質になりすぎない食用に向いた品種もいくつか出回っていますので、食用のために育てる場合は、そのような品種を選ぶと良いでしょう。
他のウリ科植物同様、1つの株に雄花と雌花がつきます。日当たりの良い環境に植え、つる性なので、必ずフェンスやネット、パーゴラなど何か這わせる環境が必要です。鉢植え栽培も可能ですが、生育旺盛なので、１０号鉢（３０センチ）に１株か、もしくは６０センチ以上の大型角長鉢に１株植えます。連作障害が出るので、同じウリ科のきゅうりやゴーヤ、かぼちゃなども含め、連続して育てずに最低でも２年はあけます。
そして、今までゴーヤなどウリ科を育てていた土で育てると同じように連作障害が出るので、新しい土を使い、２年程ウリ科を育てていない場所を選んで植えます。

種から育てるか、苗を購入して栽培します。種から育てる場合は、黒のポリポットに培養土を入れて、そこへ種を２〜３粒播きます。本葉が２枚程になったら一番良く成長しているものを１本残して残りは抜きます。
本葉が３〜４枚程に成長したら、庭もしくは鉢に植えます。植える場所はあらかじめ、堆肥と腐葉土、苦土石灰を混ぜて環境を作っておきます。植え付ける時に合わせて緩効性肥料を施します。鉢植えの場合は、培養土を利用します。肥料は入っていないものであれば肥料を混ぜて植えます。
植え付けは深植えにならないように気をつけます。お日様が大好きなので、必ず日の当たる場所を選びましょう。つるが伸び出してくるので、ネットや支柱をあらかじめ用意しておき、つるを誘引します。ネットの網目は大きめで大丈夫です。

苗を植え付け後、本葉が５〜６枚程の大きさの時に摘心作業をします。摘心とは現在伸びている茎（本づる）の先端をカットすることで、より多くの子づるを出す作業です。それをする事で、より多くの子づるが出て、たくさんの葉が茂り、結果的に実付きも多くなります。
もしパーゴラなど高い部分に葉を茂らせたい場合は、その高さまで摘芯せずに伸ばし、天井部分に本づるが到達した時点で、摘心します。そこから子づるが多く分岐するので、良い具合に枝葉が茂ります。

水は土が乾いたらたっぷりあげるのが基本です。特に成長が進んでくると、根もたくさん張ってくるので、鉢植え栽培は水切れしないように注意します。鉢植えの場合、真夏は１日朝晩２回ほど水やりが必要になる場合もあります。水切れを頻繁に起こすと、うまく成長せずに実付きも悪くなるので気をつけます。肥料は植え付けてから１ヶ月後に１回、その１ヶ月後に再度追肥をします。

他のウリ科同様、白い粉をまぶしたようになるうどん粉病、そしてオレンジ色や黒の小さな甲虫が大量にきて食害する、ウリハムシの被害が多く見られます。うどん粉病はあっという間に広がるので、病気の葉を見つけたらすぐにカットして広がらないようにします。ウリハムシも数の少ないうちに補殺します。
葉に小さな黄色の斑点模様が出て、そのうち葉脈にに仕切られたエリアが茶色に変色するべと病も梅雨時期に出やすい病気です。その後、葉裏はカビのようなものが発生し、葉が黄色く変色、それが全体に広がり枯死します。水はけや風通しが悪いと発生しやすいので、風通しを良く育てる事が大事です。このような症状を、見たら広がらないうちに葉をカットして取り除きます。
連作をすると土壌バランスが崩れて病気にかかりやすくなるので、鉢植えでは必ず新しい土、畑ではウリ科を２年以上育てていない場所での栽培をします。

果実の太さが８〜１０センチ、長さは３０〜５０センチに成長する「太へちま」が一般的に多く育てられています。「大長へちま」は、太さが７〜８センチ、長さは７０〜８０センチにもなります。この果実が下がる姿はなかなか見応えがあります。これらは、果実をたわしやヘチマ水を作りたい人にはおすすめの品種です。
もちろん若い果実は食用としていただくこともできます。食用ヘチマとしてずんぐりとした小さなヘチマの「味枕」や、「沖縄短形へちま」など様々な品種が出回っています。食用を売りにした品種は、若い実の時に繊維質になりにくいのが特徴です。その他近縁種の１つに「十角ヘチマ（トカドヘチマ）」があります。
大きなオクラのように角張った形をしたヘチマで、インドやタイ、ベトナムなど東南アジアの国では食用として一般的に好まれて食べられています。皮の硬い部分をピーラーで剥いて、炒め物や煮物など様々な料理にアレンジできます。

ヘチマたわしを作る場合は、輪切りにしたヘチマを鍋で茹でます。竹串が通るくらいになったら火を止めて、そのまま放置します。冷めたら皮を剥き、種をとります。それを水できれいに洗って干せば完成です。ヘチマ水を作りたい場合は、根元で茎を切ってしまうので、果実などある程度楽しんだ後に行うのがおすすめです。地際５０〜６０センチのところで茎をカットし、煮沸した瓶やペットボトルに、その茎を入れ１日おきます。
虫やゴミなどが入らないよう、ビニールやラップなどで瓶の口元をカバーすると安心です。採れたヘチマ水を化粧品として使用する場合は、コーヒーのフィルターなどで濾過して、その後煮沸します。冷めたらスプレーなどの容器に入れて冷蔵庫で保存します。
ヘチマを食用にする場合は、開花してから２週間以内の若い実を収穫します。食用専用の品種でも大きくなりすぎると硬くなるので、収穫するタイミングを逃さないよう気をつけて。

名の由来は諸説ありますが、別名糸瓜とも呼ばれており、その「い」が抜けて「と瓜」になり、その「と」は、いろはにほへとちりぬるを、の中の「へ」と「ち」の間なので、「へちま」と呼ばれるようになったとも言われています。

昔から日本人に愛されてきたヘチマ。そのヘチマから出来たヘチマたわしは、昔から多く使われてきた商品でしたが、昨今あまり姿を見なくなりました。ですが、エコや天然素材への意識からまた注目されています。その他、食用にもなり、夏の強い日差しよけにもなる万能植物ヘチマ。栽培をするためには、ネットや支柱などの用意が必要ですが、色々な使い方を楽しめること、間違いなしです。